表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そして布は幼女を護る  作者: モッチー
第1章「受け継がれちゃう伝説」
24/209

最後は合体だー

 続いて、一気にレベルアップしたことで手に入れたSP35という今までにない数値の使い道について楽しく悩みたいところだが、残念ながら、あまり暢気にしてもいられない。


「魔石はこれで全部ですよね?」

「バッチリだよー!」

「回収したらさっさと上に行くぞ」

「なるべく、早く」


 すぐ先に3階層への階段があるとはいえ、ここはまだ4階層である。いつ新手のモンスターが現れるかもわからない状況だ。

 いや、最悪……3階層へ上がったとしても、同様に深層のモンスターが現れる可能性だってある。

 この状況は明らかに異常だ、とノットが呟いていたのを耳にした。それなら、この先どんな異常があっても不思議ではないだろう。もはや安全な階層など存在しないと見たほうがいい。


 仮に3階層、2階層、果ては1階層でもさっきの黒骸骨たちが襲って来ると想定しよう。

 奴らにミラちゃん、というか俺が勝てたのは『結界による防御で一方的に攻撃する』という半分ごり押しみたいなものだ。俺のMPが切れたら瞬時に瓦解して持ち堪えられなくなる。そうなれば後衛のレインにまで攻撃が及び、次はディアナ、ノットと順番に撃破されてしまうだろう。もっとも、ミラちゃんがやられた時点で俺としてはゲームオーバーなのだが。

 ボーナスで更に最大MPが伸びたと言っても先に使った分は回復していない。恐らく次の戦闘くらいは持ってくれるが、時間の問題だ。

 MPが尽きたら俺はただの喋る布になってしまう。まあ性能自体は高いからディアナ辺りに装備して貰えばどうにか突破して生還できるだろうとは思う。その場合、他の3人を見捨てることに他ならないので『仮想戦闘』での検証はしたくない。


 はっきり言えば、俺たちは依然として危機から脱していなかった。


 あの時、目の前の敵を倒すことだけに集中していたから気が回らなかったけど、先のことを考慮してもうちょっとMPを温存する方法を考えるべきだったかもしれないな。時間はあったのだから『仮想戦闘』なら可能なはずだ。

 ただ、俺がその点に気が付いて自ら模索しなければ『仮想戦闘』は正しい答えを返してくれない。

 いきなり最適解を出してくれないのが、この擬似的なスキルのもどかしい部分ではあるけど、そもそもこんなにも高度な計算能力を扱えることが破格なので文句は言えない。一重に俺がもっと頭を働かせていればいい話だしな。

 しかし反省点を探すとキリがないので、これ以上はやめておこう。

 とにかく必要なのは現状を打破するための力であり、求めるはチートである。


 幼女神様~!  なんかチート出してよ~!


 しょうがないなぁ、クロシュくんはー。


 結局、神様頼りになるのは情けない限りだが、まだまだ俺は生まれたばかりのヒヨっ子だ。ぴよぴよのヒヨコちゃんだ。こうして甘えられるのも今のうちだと割り切り、おんぶにだっこと甘え尽くしてしまおう。


 じゃあねー、けっかいとー、ぞくせいふよ、ひかり、かなー。


 【防護結界】と【属性付与】のスキルか。

 そういえば結界のほうは新しく出たんだったか。どういう効果だったかな?



【防護結界・大盾】(4)

 指定した方面に結界の盾を展開する。使用中はMPを消費する。


【属性付与】(2)

 装備者の武器に属性を付与する。付与を可能にする属性を選択。

   【属性付与・炎】 【属性付与・水】 【属性付与・光】



 付与に関してはともかく、結界は【防護結界・被膜】を既に取得してある。

 これは名の通り装備者であるミラちゃんの肌を覆うようにして結界を展開するものだ。対して【防護結界・大盾】は、一方面だけに限れば護れる範囲が広くなるメリットはあるが、全方位をカバーできるわけではない。むしろ隙ができてしまうデメリットがあるようだが……わざわざこれを勧めるのには、なにか理由があるのかな?


 すぐに、わかるよー。


 この言葉を翻訳すると、すぐに使う機会が訪れる、といった感じか。

 むしろ現状でこの二つを選ばせるのは、すなわち取得しておかないと危険であることを示しているのではないか?

 なんとなく予想していたことが現実のものとなりそうな予感がする。

 まあ、どう転んでも幼女神様のアドバイスを無碍にするつもりは毛頭ないので早速スキルを取得しよう。


 【スキル、防護結界・大盾を取得しました。】

 【スキル、属性付与・光を取得しました。】


 これでいいんですよね幼女神様。


 いちおう、だねー。


 おっと、まだ他にもあるなら教えてくださいよ。


 でもなー。


 いつになく渋りますな。なにか問題でも?


 クロシュくんは、それで、いいのー?


 はて、アドバイスを貰うのに良いも悪いもあるのだろうか。


 じぶんで、きめないと、たのしく、ないけど、いいのー?


 なるほど。なるほど。言いたいことはわかったよ。


 たしかに俺はゲーム好きだし、こういうスキルを取得していくのは面白いと思うさ。ステータスの振り分けとかできるシステムだって好きだしな。

 それを攻略情報に記されているお手本に従って無難なキャラ育成をしたり、数多くいるプレイヤーと似たり寄ったりの没個性になるのは俺としては避けたい。

 なにより最初のプレイくらいは自由に遊んで、上手く行った喜びと失敗した悲しみ、どちらも併せて楽しみたいってのが俺のスタイルだからな。ネタばれに対する配慮はありがたい。

 でも、これはゲームじゃねえんだよな。


 幼女神様の心遣いはとても嬉しく思います。ありがとう。


 いえいえ、そんなー。


 でも俺の楽しみなんかよりも、彼女たちの安全を優先したい。だから……。


 わかったー。


 カッコつけてるんだから最後まで言わせてくださいよ。


 じゅうぶん、かっこ、よかったよー。


 ……照れますな。


 それじゃあ、しょうひMPさくげんとー、しはい、じゅばく、だねー。



【消費MP削減】(3)

 装備者が消費するMPを少なくする。削減効果は4分の1程度。


【支配】(3)

 一定の条件下でのみ装備者を操る。支配中はMPを消費する。


【呪縛】(3)

 装備を外せなくする。解呪を受けた場合、MPを消費して抵抗可能。



 【消費MP削減】はミラちゃんが魔法を使う助けになるけど、他の二つは正直に言ってあまりいいイメージがないな。

 だが、あそこまで言って幼女神様がくれた情報だし、なにより俺はもう、この神様の信者と呼んでいいほどに信仰している。躊躇う要素なんて微塵もなかった。


 【スキル、消費MP削減を取得しました。】

 【スキル、支配を取得しました。】

 【スキル、呪縛を取得しました。】


 一気に呪いの装備感が増したけど、これがどう繋がるのか。


 つぎは、しょうひMPはんげん、だよー。


 なに?



【消費MP半減】(6)

 装備者が消費するMPを少なくする。削減効果は2分の1程度。



 どうやら【消費MP削減】を取得したことで新しく出たようだ。

 効果は4分1から2分の1。つまり一気に半分か。

 単純計算でミラちゃんはこれまでの2倍、魔法を使えることになるな。

 欠点は本人がそれほど強い魔法を覚えていないってところか。


 【スキル、消費MP半減を取得しました。】


 これも上位互換だからか、取得した瞬間に【消費MP削減】を上書きしてしまった。特に問題はないだろう。

 これで終わりかと思いきや……。


 つぎは、MPせつやく、だよー。


 まだあるのか?



【MP節約】(3)

 消費するMPを少なくする。削減効果は3分の1程度。



 あれ、これって効果が弱くなってる……じゃない!

 よく見たら対象が違った。かなり些細な変化で判り辛いけど、さっきまでのは装備者に効果があるスキルで、これは俺自身に対するスキルじゃないか。

 というか、もうちょっとスキル名と説明文はどうかにならなかったのかな。似たような効果だから仕方ないのか?

 前に、この世界は幼女神様を含めた複数の何者かが運営しているようなことを仄めかしていたから、たぶんこれを作ったのは幼女神様ではない別の神様なんだろうけど、そいつはあまり頭が良くないのかもしれないな。

 あまり悪口を言って恨みを買うのもバカらしいので程々にしておこう。


 【スキル、MP節約を取得しました。】


 これで結界のコストも下がって若干だが使い勝手が良くなったな。

 しかし、このスキルを普通に取得しようとしたらなかなか難しい気がする。

 敢えてゲーム的に言えば、物語の終盤になってようやく気付いたかもしれないし、ここで得られた恩恵は大きいと思う。俺の物語はまだまだ序盤だ。


 これも幼女神様のおかげですな。


 まだ、おわって、ないよー。


 ……え?


 さいごは、がったい、だー。



【合体】(10)

 装備者と一体化する。合体中はステータスが大幅に上昇し、MPを消費する。



 【スキル、合体を取得しました。】



 な、なんだこれは!?

 まさに俺の理想を形にしたかのようなスキルではないか!


 しゅとく、するの、はやかったねー。


 いやあ、無意識に動きましたね。


 でもこれは、じりきで、みつけて、ほしかったなー。


 そっか……これがあったから出し惜しみしていたのか。

 もし俺が自分でこのスキルを発見していたら、その時の喜びはどれほどのものだっただろうか。きっと泣くぞ。すぐ泣くぞ。絶対泣くぞ。

 でも、こうして手に入ったんだし嬉しいことに変わりはないぞ。だから安心して欲しいな。


 ところで、この【合体】は使ったらどうなるんですかね。


 きほんてきには、さっき、クロシュくんが、やったのと、おなじかなー。


 あの【変形】を利用した『ピッチリスーツモード』か。

 ということはミラちゃんの身体を操作できるのかな?


 しはいも、はいってる、からねー。


 そういえば先に【支配】のスキルを取っていたんだったっけ。


 よりはやく、よりつよく、うごけるよー。


 このスキルは真の切り札になりそうだな。細かい性能は実際に使ってみないことには判断できないが、取得するのにSP10も消費したのだから、それに見合うだけの価値はあると信じたい。なによりも【合体】だからな。【合体】は強いに決まっているだろう。



 さて、色々とスキルを取得したから残りのSPは1になってしまった。これでもう打つ手なしだ。

 ちなみに現在の取得済みスキルはこんな感じになっている。



○スキル

【念話】【神託】【進化】【ステータス閲覧】【採寸】【鑑定】

【自動修復】【HP譲渡】【防護結界・被膜・大盾】【察知】【剥奪】

【透視】【変形】【色彩】【暗視】【異常耐性・痺】【異常付加・痺】

【自動洗浄】【属性付与・光】【消費MP半減】【MP節約】

【支配】【呪縛】【合体】



 現状を打破する為にと幼女神様にお願いして、言われるがままに取得したわけだが、これでどうすればいいのだろうか。

 根本的な問題であるMP残量だが、【MP節約】があるとはいえ焼け石に水だろう。戦闘可能な回数が1回から2回に増えた程度だ。

 まったく足りないのではないだろうか。


 それだけ、あれば、だいじょうぶ、だよー。


 幼女神様が言うならそうなんだろう。

 うーむ……しかし、もしかしたら一番のチートって幼女神様じゃないか?

 とりあえずアドバイスに従っておけば万事解決しそうな気配がするぞ。

 あまり頼り切ってしまうと俺の幼女を護るという使命とは反してしまうし、いずれは自立しないといけないけどな。

 感謝しつつ今は、今だけは甘えておこう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ