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そして布は幼女を護る  作者: モッチー
第4章「アーマード・布」
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がいがーん、きどー

 フォルティナちゃんの護衛で勇王国行きが決まった。

 表向きは聖女として、皇女の付き添いという話になっているので、俺も正式な使節団の一員だ。

 期間は三週間ほど。行きと帰りは船になるから、かなり前後するそうなので長くとも一か月と考えておこう。


 その間、ミリアちゃんとは会えなくなってしまうワケだが、俺には転移の魔法陣というチート級の便利アイテムがある。

 例え世界の端からでも瞬時に戻れるのだから、会いたくなったらいつでも会えるので心配ない……はずだった。


「クロシュちゃん、あの魔法陣はなるべく使わないようにね」

「な、なぜですかノブナーガ?」


 勇王国行きの件をノブナーガに話したら、残酷な言葉が返ってきた。

 あれの便利さをよく知っているはずなのに。使ってはいけないなんて無慈悲にもほどがあるだろう。


「いつもみたいにお忍びだったら構わないんだ。だが今回クロシュちゃんは皇帝国の代表として……つまり公式記録に残る形で行くことになる。そうなると下手に戻って目撃されては矛盾してしまうだろう」

「それはそうですが……」

「あまりクロシュちゃんは意識していないだろうけど、周囲はクロシュちゃんの動向に注目しているんだ。もし転移の魔法陣が露見したら……いや、そんな噂が立ってしまうだけでも、色々と疑われるようになる」


 ノブナーガが懸念しているのは、いつでもどこにでも移動できる事実が広まってしまうと、まったく身に覚えのない事件への関与を疑われる点だった。

 例えば遠く離れた都市で、聖女を名乗る者が詐欺を働いたとする。

 通常ならば俺は関係ないと判断されて真犯人が捜索されるが、転移が知られてしまうと本物かも知れないという疑いは晴れなくなってしまう。

 それだけならまだマシで、もし聖女を陥れようと悪意を持つ者がいれば、いくらでも嫌がらせができる。付け入る隙を与えるワケだ。

 すると最終的に自衛の意味も含め、俺の動きは常に帝国の管理下に置かれるようになってしまう。行動範囲もかなり限定されるようだ。


「そ、そこまで大事になるのですか?」

「あり得ないとは言い切れないな。これが国内だけなら、まだいくらでも言い訳ができるが、今回のように国外も関わってしまうと誤魔化すのも難しい」

「ですが屋敷内から出なければ……」

「それなら問題はないが、護衛が護衛対象から長時間離れるのは悪手だ。それに勇王国側の監視も警戒したほうがいい」


 たしかにフォルティナちゃんを放って俺だけミリアちゃんに会いに戻るのは無責任にもほどがある。

 かといってフォルティナちゃんと一緒に戻っては、勇王国から急に面会を求められたら対応できなくなってしまうか。

 もし遠くから気配を探知するスキルや魔道具で監視されているとしたら、俺だけ転移した時点でいなくなったのがバレて怪しまれる。

 ううむ……考えれば考えるほど八方塞がりだ。


「もちろん最終的な判断はクロシュちゃんに任せるさ。必要だと感じたら遠慮せずに使って欲しい。私たちエルドハート家は全力で支援するからね」

「……感謝しますノブナーガ」


 考えてみれば、これは俺だけの問題じゃない。

 エルドハート家……つまり当主であるノブナーガにも多大な迷惑をかける。

 上手く隙を見つけられたら戻りたいところだが、それが難しければ俺も魔法陣の使用を制限しよう。堂々と転移するのは緊急事態だけとかね。

 襲撃されてフォルティナちゃんを逃がすためとかだったら、誰も文句は言えないだろう。






 さて、本気で安易に戻れなくなったので、帝国から出立する前にやっておくべきことは先に片付けておきたい。

 すぐに思い付くのはカード関係と、あと孤児院への寄付か。

 だが前者はヴァイスのスケジュール管理に任せてあるので問題ない。

 そして後者に関しては、多額の寄付は慎重にとノブナーガからストップをかけられていたりする。

 どうやら例の聖女教の息がかかっている施設だと、聖女からの援助金を受けたとして聖女公認だと吹聴して回る恐れがあるらしい。

 どこまでも面倒くさい団体だ。

 なので寄付するのはノブナーガの部下の調査待ちというのが現状だった。

 そろそろ終わる頃合だと思うけど、出立までに間に合うだろうか。


 まあ、そっちは心配しても仕方ない。

 もうひとつ確認したいことがあるので、今はそちらを優先しよう。


 というワケで幼女神様ー?


 なにー?


 前に頂いた不穏な神託の件ですけど……。


 よに、へいおんの、あらんことをー。


 そうそう、それです。

 遺跡旅行ではプラチナと出会い、プレイスなる転生者が現れ、そして【魔導機鋼士レギンレイヴ】をゲットした。

 となると次は世界の存亡に関わるような戦いが起きて、その勝利にはミリアちゃんが不可欠であるはずだ。

 もし俺が勇王国に行っている間にそんな事件が発生してしまったら、その時は転移の魔法陣を使ってでも駆け付ける所存だが……。


 実際のところ、一か月以内になにかが起きてしまうんですかね?


 うたげが、はじまるー。


 宴なんですか?


 おまつりの、ばしょは、どこだー?


 まだ定まっていないと……。


 あおき、せいじょうなる、せかいのためにー。


 過激な団体が関わってる感じでしょうか?


 このよに、あくが、あるとすればー。


 なに、それは……!?


 これで、さいごだー。


 そんな……そんなバカなー!


 そして、すうひゃくねんの、つきひが、ながれたー。


 過去や未来を旅しそうですね。


 がいがーん、きどー。


 ふむふむ。

 なんとなく見えてきたような、なにも見えないような。

 結局のところ、俺は勇王国へ行っていいのだろうか。

 ……やはり帝国に残ったほうがいいのでは?


 わたしとしては、クロシュくんの、ていあんに、はんたいかなー。


 おや、ずいぶんとはっきり反対しましたね。


 だって、のこっても、おもし……いみがないよー。


 残っても面白くないって言いませんでした?


 わるいかー。


 開き直られた……いえ、まあ悪くはありませんけど。

 前にもそんな話をした気がしますからね。

 退屈してる幼女神様を楽しませるのが信者である俺の役目ですし。


 やったー。


 ただお願いなので、ミリアちゃんたちに危険がない範囲にしてくださいね。


 まかされよー。


 劇場版くらい頼りになりそうな返事なので安心だ。

 なんだかんだで幼女神様の言葉に従っていれば万事上手く回ってしまうから、むしろ頼り過ぎないようにするほうが難しいけどね。

 まあ面白いから、ついつい聞いちゃってるんだけど。


 ともあれミリアちゃんたちに危険がないなら、俺も護衛に集中できる。

 あとは、実際にその時が訪れるのを覚悟して待ち構えよう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者さん、最近の更新はお疲れ様です! 孤児院に寄付するクロシュさんは優しいです! 確かに残ったミリアさんの安全を気になりますね。 幼女神様、可愛いですけど、なんか色々な名セリフを言ってみた…
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