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そして布は幼女を護る  作者: モッチー
第3章「スーパー幼女大戦」
149/209

必ず成功させてみせる!

今回も閑話です。

短いので前話とまとめて投稿する事も考えましたが

視点が完全に別なのでわかりやすく分けました。

 皇帝国にリヴァイアの身柄が引き渡され、一カ月が経とうとしていた。

 精神汚染により身を焦がすような出世欲から解放されたリヴァイアは、当初こそ急な展開に戸惑っていたが、今ではさっぱりとした顔で与えられた仕事に対して積極的に勤めている。

 そこにはもちろん罪を償う意志もあり、その機会と場所を与えてくれたルーゲインやクロシュ、そして皇帝国には心から感謝していた。

 また、いちからやり直そうと本気で思えるほどに。


 そんなリヴァイアの仕事は、大まかに言えば海の地図作りである。

 商家連合国を介さずに勇王国との貿易を行うには、安全かつ速やかに行き来できる道が必要不可欠だ。

 これがリヴァイア自身の操る船だけであればスキルの関係上、海図などなくとも苦労はしなかったが、貿易船がたった一隻ではまるで数が足りない。

 他の船乗りたちでも安定した航海が成功して、初めて貿易は成るのだ。

 だが今回、いつもと違った仕事をリヴァイアは任されることになる。


「では私が使節団の船を護衛する……ということですか?」

「うむ、より正確には海上における護衛の任に着くようにとのお達しだ」


 リヴァイアは上司である船団長から手渡された書状を手に、信じられないと言わんばかりに確認する。

 その書状には皇帝国から勇王国へ向けて使節団の派遣に際し、リヴァイアへ同行するようにとの指令が記されていたのだ。

 他国への使節団の護衛を任されるなどと、よほど信頼されていなければ叶わない大役だろう。

 まさに今までの働きが認められた証であり、リヴァイアは声が震えた。


「わかりましたっ……謹んでお受けします」

「詳しくは、また報せが後日やって来るだろう。それまで準備を整えておくんだ」

「はっ!」





 二つ返事で了承したリヴァイアだが『使節団』とはなにか?

 そのことについて、確認する必要があるだろう。


 現在、貿易に先立って使者が両国間を往来しており、交渉を開始している。

 商家連合国が関与しない貿易は勇王国側からしても魅力的な話であり、非常に乗り気であったのは言うまでもない。

 とんとん拍子で交渉は進み、残るは細かい打ち合わせだけになった頃、勇王国側からひとつの提案が寄せられた。


 それは勇王国において、皇帝国との友好を周辺国へアピールする祭典を取り行いたいというものだ。

 この祭典には両国の繋がりを周知するのと同時に、大々的に盟約を結ぶことで反故にさせない保険の意味合いがある。

 交渉が大詰めになったからこそ慎重に進めたい勇王国の意志に、皇帝国は理解を示す形でこれを受け入れた。

 実のところ、皇帝国側からしても土壇場で裏切られない保険となるため、渡りに船であったのは公然の秘密だ。


 すでに祭典の開催地は、勇王国の首都に定まっている。

 もちろん勇王国の王族は参加が決まっており、そうなれば皇帝国も相応の者を参加させなければ示しが付かないだろう。

 そうして派遣される運びとなったのが『使節団』である。


 だが、ここで問題なのは誰が参加するのかだった。

 皇帝ウォルドレイク当人が赴くには距離が遠い上に、あまり軽々しく動いては侮られるという体面もあって難しい。

 もっとも良案だと思われたのは皇子ジノグラフであったが、彼は諸事情あって謹慎中の身である。

 独断で色々と動いていたことを皇帝は知っているため、そう安々と他国へ送れない状態だった。

 残るは妹の皇女フォルティナだが、まだ九歳と幼い。

 礼儀作法や身分だけを見るならば彼女も適格であったが、その幼さ故に騒動を起こした経緯があり、体力面でも長旅に耐えられるか不安視された。

 実質的に皇子とどっこいどっこいである。


 結局のところ誰もがなにかしらの問題を抱えているため、この祭典への参加は皇帝国にとって、なかなか頭の痛い悩みとなっていたのだ。

 するとリヴァイアはいったい、誰を護衛することになるのか?

 本人はもちろんのこと皇帝ですら、まだ知らない未来の話である。


「これほどまで信頼されているのだ……必ず成功させてみせる!」


 そんな護衛対象すら定まっていない、あやふやな指令であるとは露知らず、リヴァイアはひとり燃えていた。

 彼にとっては贖罪の機会であり、海上という自身に有利な環境ということもあって、自然と受け入れてしまったのだ。

 ある意味で牙を抜かれた彼では無理もないだろう。

 もし以前のようにハングリー精神が旺盛なままであれば、あるいは事前に情報を集めておくなどして対策を立てられたかもしれない。

 もっとも、彼ひとりにそこまで求めるのはさすがに酷というものである。


 なにせ……この使節団の派遣が、やがて国家を揺るがす大騒動に繋がるなど、誰にも予想できなかったのだから。

次回から4章になります。

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