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そして布は幼女を護る  作者: モッチー
第3章「スーパー幼女大戦」
148/209

さすがに考えすぎですね

遅くなりました。

今回も閑話ですが、かなり短いです。

 聖女の村。

 クロシュとルーゲイン、ゲンブらによって保護されたインテリジェンス・アイテムたちと、異世界の子供たちが暮らす村……その通称である。

 現在、この村の住民は四つに分類できた。

 その内訳は以下の通り。


 子供……二十名。

 騎士……十五名。

 元襲撃者……二十名。

 インテリジェンス・アイテム……三十名。


 ここにルーゲインとゲンブが加わり、計八十七名が村の総人口となる。

 ただし新たな住民となった元襲撃者たちに関しては、正確には村の内側で暮らしているとは言い難い。

 というのも村を覆う防護柵の外周、約百メートルの範囲にゲンブが堅牢な巨壁を生やしたため、その狭間にある土地で暮らしているからだ。

 つまり村の子供たちと接触しないよう、完全に引き離されていた。


 これについて村長役であるゲンブは必要ないと考えているのだが、クロシュを初めとして村を守るのが仕事の騎士たちからすれば、いきなり元襲撃者を村内に招き入れるのは抵抗があったのである。

 その後、なんやかんやで彼らは受け入れられるのだが、そうなるまでに多少の時間は要したのだった。


 そんな元襲撃者たちについてルーゲインは、こう分析する。

 年齢は十代中盤から後半までが多く、身体的特徴、性格や経歴には召喚されたという一部を除き、特異な点は見られない。

 また、すでに更生しており、仮に反乱を企てていたとしてもルーゲインの金陽属性魔法『テスタメント』もあるため、裏切る可能性はないだろう。

 住居はゲンブの魔法により建築された、割と本格的で住みやすい小屋がきっちり人数分あり、本人たちもスキルを使えるため生活環境は悪くない。

 村からは食材が配給されるため、食事についても不足はないという。

 普段はマジメに畑仕事をしており、今は積極的に自給自足を目指している。


 つまるところ彼らは、村を襲撃した頃から性格が大きく変化していたのだ。

 より具体的には他者を蹴落としてでも自分の利益を求めるような性格が、謙虚で大人しいという正反対なものに変わっている。

 単純に改心したにしても、ルーゲインはその急激な変化が不自然に思えた。

 そして、その答えはクロシュからの情報によって明かされる。


「この心変わりは、すべて【傲慢】の影響だったということですか……」


 召喚された者は【傲慢】の魔王の力によって呼び出されたことにより、精神汚染とも呼ぶべき影響があるのではないかと考えられたのだ。

 だが、同じく召喚された村の子供たちには【傲慢】の影響が見られない。

 影響を受ける者と受けない者。

 その違いはなにか?

 これに対してルーゲインは、ひとつの仮説を立てた。


 すなわち【傲慢】の精神汚染は、その名の通り『傲慢な心』に共振するものだ。

 だからこそスキルという異能力を手にした元襲撃者たちは、傲慢なる心に支配されて商家連合国に与する道を選んだのである。

 一方で子供たちは素直な心を持っていた。清い心を持つことで精神汚染から免れたとすれば、ルーゲインとしても納得できる解釈であった。


 同時にルーゲインは気付く。

 それは以前クロシュが考えていた、スキル習得のきっかけは強い望み、あるいは強い欲が関わるという話だ。

 ルーゲインは転生したインテリジェンス・アイテムたちの救済という使命感にも似た強い望みを持った。リヴァイアは強い出世欲に執着していた。

 そして二人は、どちらも暴走するに至っている。


 すなわちインテリジェンス・アイテムに転生した者には、同じ大罪のひとつに数えられる【強欲】による精神汚染があるのだ。

 強くなにかを求めれば求めるほど、その思想が歪められてしまう。

 やがて本来の意図から大きく外れた、誤った望みを持つに至り、最終的には願っていたはずの大切なモノを失い、己の身すら滅ぼしてしまう。

 魔王と呼ばれる存在からの干渉であれば、これほど相応しい悪辣さはない。

 もし知らぬまま突き進めば、周囲を巻き込んでの自滅もあり得ただろう。




「というわけですので、今後も注意が必要だと僕は考えています」

「興味深いですね」


 ここまでの仮説をルーゲインはクロシュに報告した。

 付け加えるならば村の子供たちのように純粋な心を保ち、身に余るほど強い望みさえ持たなければ【強欲】の影響を受けないかも知れないことか。

 現にルーゲインは、ほとんどのインテリジェンス・アイテムたちが暴走する気配すら見せていないことを知っている。

 あるいは、知られていないだけなのかもしれないが……そこまで行き着いたルーゲインは目の前にいる聖女に視線を向けた。


「クロシュさんは、そういった経験はないでしょうか?」

「さて、私はたしかに強い望みを持っていますけど、特にこれといったおかしな思想に染まっているとは思いませんね……自覚がないとしても、ルーゲインから見て私はどうですか?」

「とても影響を受けているとは思えません」


 考えるまでもなくルーゲインから見たクロシュは、これ以上ないほどに正常であり、良識を持った人物であった。

 結局、その場は仮説を報告するだけに留まり、深くは考えずに解散となる。


 だがルーゲインは、ひょっとしたらと考える。

 正常に思える今のクロシュこそが、すでに【強欲】の影響を受けており、本来の姿とは変わってしまった状態である可能性を……。


「まあ……さすがに考えすぎですね」

もう1話、さらに短い閑話を投稿します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ルーゲインさん、知り過ぎです(笑) 真面目の話にすると、かつてミリアさんの敵に対してクロシュさんは黒い感情が有りましたね。当時に幼女神様が居なかったら拙いかも。幼女神サマサマです!
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