ゴミの様な場所 -3日目-
「ついてねえ・・・」
汗がふきだして、シャツが体に張り付いて気持ち悪い。
俺の脳みそが良い具合にゆだっている。
空は何も考えて無いような快晴、いわし雲。
日よけにもなっていない茅葺き屋根の隙間から刺すような日差し。
右手に握ったビールもにがよもぎ汁みたいな味になっている。
氷があればぶち込みたいがそんな高級品はありそうもない。
いかん、このまま、野ざらしの髑髏になりそうだ。
「チャウチャウ!」
どよんと髑髏になりかけの俺のシャツを引っ張ってるヤツがいる。
首をその方向に倒すと、浅黒い幼女が微笑んでいた。
髪は伸ばし放題、腰まで伸び、服は着ないよりマシなレベルの丸首シャツを着ている。
「チャウチャウ!」
幼女が汚い笑顔で汚い細い棒状の塊を差し出した。
で、チャウチャウって何だっけ?
もしもし的な挨拶か
茶色い細い棒状は臭いからどうもタバコらしい。
とりあえず10本つかんで指を3本たてた。
幼女は首をふり、生意気にも両手をひらいて7本たてた。
彼女の左手を握って5本に減らしてやった。
幼女はわざとらしい演技で悩んだふりをして、しょうがなさそうにOKを出した。
金を受け取って喜んで去って行ったのを見るとこのゴミタバコ、ここの時価は2かもしれないな。
吹かすと粗悪品独特の強烈な臭いが鼻まで抜けた。
これでしばらくは虫に刺されずにすみそうだ。
ココは言葉も通じない南国のチイキート刑務所
俺は移送されて三日目になる。
この刑務所には、塀もなければ鉄格子もない
まして自分の部屋もない、横に寝るのにはどうやら空き部屋を探すか、自分で掘っ立て小屋を建てるかの二択らしい。
空き部屋を運良く見付けたとしても腕っ節の強いチンピラがどけと言ってくれば、退去しなければいけない、これはまだ良心的な方だ。
同じ日に移送されたヤツは空き部屋に転がり込んで寝てる間に首と胴が別れてた。
ココのルールが分からない間は、茶屋に居座って住人の動向見てる方がいいはずだ。
「ついてないのは仕方ねえ・・・さて、どうしましょうかねえ」
背伸びをしたら、汗とタバコの安い煙とこの土地の赤土の乾いた臭いで目眩がした。