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1:そして天使は召喚されるⅤ

 いざこざはあったものの、俺たちは順調にダンジョンを攻略していく。天井にぶら下がる蝙蝠かと思いきや、翼を広げるとその大きさからも翼竜のようなモンスターが大量に襲ってくることもあった。

 さすが火口付近だけあって、モンスターは火属性のものが多い。マグマの塊みたいなものや、青い炎を纏った黒い番犬。火を吹く原住民みたいな奴。隠しダンジョンだけあって色んな障害に阻まれるが、俺たちに掛かれば何のことはない。三時間もすれば、最奥にまで辿り着くことが出来た。


「さぁてと、何か出そうな雰囲気だな」


 バズが呟く。溶岩のすぐ側を通ってきた俺たちの前には、べったりと赤く塗りたくられたような大きな扉が存在していた。他のダンジョンの流れからしても、この先にいるのは恐らくボスだろう。今回は特にストーリーイベントはなかったが、やはりボスとの対戦を控えるとなるとテンションが上がるというものだ。


「どう考えてもボスだね。事前に皆の回復をするよ」


 テレサの周りが緑色のオーラに包まれる。体力と魔力を全回復する超上級魔法だ。あっという間に全員の体力と魔力が満タンになる。ボロボロだったミルキもこれで大丈夫だろう。問題は、今までの雑魚敵ですら中々レベルは高かったのに、この先には何が潜んでいるのかってことだ。


「多分ドラゴンだな。間違いない」


 と、ミルキが予測する。何処か嬉しそうだが。


「まぁ、そんな気はするな」


 火口のダンジョンというなかで火属性の敵が多かった。それに思い返してみれば、蜥蜴や恐竜やらをモチーフにした敵が多かったのだ。ドラゴンが待ち受けていてもおかしくはないだろう。


「なら好都合じゃねぇか。エヴァルなら相性良いな」

「あぁ」


 バズの言う通りだ。このゲームで選択できる職業という奴は、ステータスの長短だけでなく、相性というものも存在する。


 竜騎士である俺は名前の通りだ。ドラゴンを相手ならステータスが少し上昇して戦いやすくはなる。確か十パーセントくらい上がったかな。


「それでも油断は禁物だよ。ここは隠しダンジョンなんだ。ボスだけ異常に強いってこともあるんだから」


 テレサの言うことは尤もだ。俺だけでなく、バズもミルキも同意して身を引き締める。


「開けるぞ」


 何が潜んでいるのかは開けて見なければ分からない。ギギィと、嫌な音を立てながら開けた扉の奥は溶岩の池があるだけだった。


 上にも何もいない。一瞬拍子抜けかと思わせると、全員が中に入ったタイミングで扉が閉まって消え失せる。そして音楽が変わった。重く力強い音からのアップテンポ調だ。妙にテンションを上げさせる。どう考えてもボス戦だった。


「来るか」


 真ん中に位置する溶岩の池。ゴポゴポと荒ぶり始めると、何かが飛び出る。


「うっ」


 ミルキが拒否反応を示す。分からなくはない。ドラゴンでも出てくると予想していただけに、こいつはある意味予想外だ。


「ゲコ」


 どう考えても馬鹿でかい蛙である。それが頭だけを覗かせる。そしてヨタヨタと溶岩から出てきた。赤黒い肌でボコボコとイボみたいなものがある。ビジュアル的には確かに、拒否反応を示すのも分かる気がする。


「あぁん? 何が出るかと思ったら蛙とは。舐められたもんだ。余裕で突破出来そうだぜ」


 戦闘が開始される。蛙は長い舌を伸ばしてバズを狙った。


「っと、危ねぇ。なかなか速いじゃねぇか」

「油断は禁物って言ったよ」


 テレサはすぐさま透視眼の魔法を使う。敵のステータスを見抜く魔法だ。これでパーティ全員に、蛙の強さが表示される。


「はぁ!?」


 俺も含めて、全員が驚愕した。この糞蛙。何でレベルこんな高いんだよ。俺たちのレベル全部合わせても届かないぞ。しかも体力が一番高い。


「ゲコ」


 そして、そんな俺たちをあざ笑うかのように、蛙は背中にあるイボみたいなものから何かを射出した。


「ちょ、マジかよ」


 射出されたのは小さな、と言っても俺たちよりは大きい子蛙。まさに軍団のように襲ってきた。背中のあれ、全部卵か。オタマジャクシの流れすっ飛ばすなよ。


「運営は何考えてんだ。ボスだけインフレじゃねぇか」

「さすがに蛙には負けたくないぞ」


 それは間違いない。敵全員に対する迎撃魔法で子蛙を一掃したあと、全員でフルボッコにしてやった。




 撃破所用時間、多分一時間近くは掛かったな。ある意味強敵だった。回復魔法使ってきた時は心が折れかけたが良しとしよう。というか眠い。まさかボスにこれだけ時間を費やすとは思ってなかっただけにもう朝方だ。


「悪い。寝るわ」

「私も眠いから落ちる」


 バズもテレサもそれだけ送ってきて落ちてしまう。


「ミルキ。俺も眠いから寝るぞ」


 残ったミルキにメッセージを送るのだが、全く向こうの反応がない。こいつ絶対寝落ちしてやがるな。まぁもうダンジョンは出てきたから問題ないけど。

ゲームの起動を落とそうとした時、バチっと何か嫌な音がパソコンからした気がした。


「え?」


 何だ。眠いとはいえ、俺は慌ててパソコンの様子を調べた。画面は大丈夫。フリーズもしてない。ちゃんと動いてる。何も起きてなさそうだが。その時、セレナちゃんからのお知らせが届く。


「大変です!」

「何だろ」


 眠気を噛み締めながら何だろうと表示させる。


「何だこれ?」


『冥界の王ハデスが動き始めました。狙われています。助けてください』


 今までと少し違う感じのお知らせだった。あまりにも抽象的過ぎる。でもハデスが動き始めるというのは少しワクワクするな。今は眠いけど。

 その後にはイエスかノーで選択が表示されていた。もちろんイエスだ。選んだ後、いよいよ限界だった俺は布団にダイブした。パソコン消せてないけどもう限界。下手したら学校遅刻するな。俺の意識は睡魔という混濁にあっさり呑まれてしまった。





『ありがとうございます。エヴァル様』

モンスター紹介

ガルバン

ダンジョンに生息するモンスター。闇属性。

普段は蝙蝠のように天井にぶら下がっている。獲物を見つけると集団で襲い掛かり、鉤爪のような爪で敵を切り裂く。翼を広げた姿は翼竜に近い。

獰猛な性格で、また執念深い為執拗に追い掛けてくる。


マッグ

一見スライムのようなマグマの軟体モンスター。

火属性。

物理攻撃は殆ど意味がないので、魔法で倒す必要がある。


ヘルバウンド

黒い犬を模したモンスター。

火属性。

足が速く、青い炎を纏って襲い掛かる。攻撃力が非常に高い。

頭が良く、一筋縄ではいかない強力なモンスター。

地獄の番犬の異名を持つ。

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