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1:そし天使は召喚されるⅢ

「大変です」


 起動してデータをロードすると、可愛い女の子キャラが慌てた様子で現れる。NPC(ノンプレイヤーキャラクター)のセレナちゃんである。薄い紫色の髪を後ろで束ねており、時折動く背中の白い羽が可愛い。なかなかお転婆な天使見習いという設定のサポートキャラだ。

 メールの受信を教えてくれたり、新しいイベントや依頼書が届いてると逐一知らせてくれる。また、新しいスキルを取得するときにも必要不可欠な存在となる。

 そんなキャラが、大変ですと初っ端から出てきたということは、何かしらのイベントが発生したということに他ならない。


「おぉ」


 詳細を確認すると、既に何度か攻略したバラスト山に新しいダンジョンが発見されたようだ。推奨レベルが500以上となっている辺り、中々攻略しがいのあるダンジョンのようだ。

 さっそく所属するギルドの仲間たちにメールを送り、誰か一緒にダンジョンに行かないか誘ってみる。恐らくバズとミルキは一緒に行くだろうな。テレサは時間が合うかってとこだが。

 このゲームの特徴として、ミッションやイベント、ダンジョンにおいては一人でプレイすることも勿論可能ではある。が、複数で行ったほうが良いことづくめである。人数が多いほど敵がうじゃうじゃと出てきてしまうので、攻略が楽になるということはない。けどそのほうが、レアアイテムをモンスターが落としやすくなったり、一人だと進めない箇所があったりするのだ。


 返事があるまで、適当に更新されたギルドの依頼をこなしておこうか。それが一番資金を集めるのに捗るし、運が良ければたまにアイテムもくれるから、暇なときなんかにはコツコツこなすのが定石である。

 サポートキャラのセレナにお願いして、届いてる依頼書一覧を見せてもらう。


「むぐっ……」


 何とろくなものがない。普通はモンスターの討伐だったり、アイテムの取得だったりするのだが、このゲームは何故か妙に多様的である。受験の替え玉になってほしいという依頼でクイズゲームをクリアしたり、逃げ出したペット(害のないモンスター)の捕獲だったり、村長さんの浮気調査だったりだ。そして、今選択肢にあるのがそういうのしかない。


 あんまりやる気になれなかったので、錬金術師のところにでも行って新しい武器の合成でもお願いするか。魔術師のところに行って薬の調合でもお願いするか。


そう考えて、まずは行きつけの武器屋に行くことにした。


武器屋では合成は行えない。あくまで売買だけだ。なら何故錬金術師のところではなく、武器屋に直行したかというと、合成のための素材を買うためだ。ダンジョンに落ちていることもあるが、武器屋で買った武器同士を合成して、さらに強い武器にすることもできる。薬屋で買ってから、魔術師に調合をお願いするのと同様である。


「よーエヴァルか。新しいのが入ってるぞ」


武器屋のおっちゃんが声を掛けてくる。何回か購入すること。またそれ以外に条件を満たせば、プレイヤーはその店での常連になることができる。値引きもそうだし、武器屋から情報を得ることもあるので、できるだけ多くの店で常連になっておくことが大切である。


「安くしとくぜ」


禿げ上がった頭と、白い歯をキラリと光らせ、おっちゃんは満面なスマイルを見せる。ついつい無駄な買い物をしてるからか、この辺のグラフィックも細かく変化していた。


購入できる武器のリストが表示される。どれどれと見てみると、確かに新商品が入荷されていた。「キリバチの槍」、「エルドラの双剣」、「ホウモンの盾」、「ロイドマームの杖」と名前だけでは全く強さが分からない。


まあ所持金はたっぷりあるし、持ってないやつは全部買いだ。何かと合成できる可能性もある。


「まいどあり!」


使った金はしめて12万G(ゴールド)。安い買い物だ。

先に薬屋に行っても良かったが、まずは錬金術師のところに行くことにした。


「何の用じゃ。帰れ」


腕は確かなんだが武器屋と違って、俺が贔屓にしてる錬金術師はいつも歓迎してくれない。人嫌いという設定で山のほうに籠ってしまっているのだ。

まぁそれも条件があって、お土産に「マンゴーカステイラ」を持っていくと大丈夫なんだが。


「ま、まぁ。少しくらいならいてもよいぞ」


凄い変わり様だ。赤い髪を揺らし、ついでに顔を赤くさせてデレる錬金術師。じじい言葉だがれっきとした女の子である。ついでに巨乳だ。ツンデレっぽいが、その実ただのチョロインって奴である。


さっそく買った武器が合成できるか見てもらう。元々持っている武器と合成出来たのもあったので、カスタマイズしてみる。ステータスにも少し変化が現れた。


俺のアバターとも呼べるエヴァルが大きく表示される。少し跳ねた黒髪に紫色の眼。まさに冒険者らしい服装。盾代わりのガントレットとスピード補正の皮ブーツ。何となくカッコいいかと思って装備した赤いマフラー。それに、先程合成してもらった「バルドラの剣」を装備する。風属性を有した竜殺しの剣だ。竜騎士の称号にはぴったりと言える。良い買い物をした。

アバターの隣には、攻撃力、防御力、スピード、体力、魔力、スキルと大きく六角形を描くステータスが表示される。攻撃とスキルが上昇していた。


そんな時、セレナちゃんがメールの受信を知らせてくれる。


「メールが来ましたよ!」


送信者はミルキだった。

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