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徒然短編集

今日も今日とて僕は行く

作者: RYO

今月は短編2本立て。第1弾!

今日もいい日だ。天気は快晴、湿気もちょうどいい。・・・・そうだこんな日には散歩に行こう。

そう思った僕は自分の部屋から出て散歩に行くことにした。・・・人気の全くない洞窟を飛び出して・・・・。


今日も町は活気にあふれている。こちらを見ておびえている巫女服を着たお姉さん、長老を呼べと叫びながら走る獣耳のお姉さん、斧を構えてこちらに駆けて来る筋肉質のお兄さん、杖を構えてこちらに敵意を向けているおっさん、そして・・・・・逃げ惑う一般ピーポー。僕がこうやってたまに町に散歩の途中でくるだけでこの騒ぎだ。僕はただ風景を楽しみながら散歩したいだけなのに・・・・・orz。

「fだgfぅhbヴぁいうおヴぇyhぶあいlyhfヴぁv!あvぐいはbん;ヴぁひお;gはい;おvばいうあ!!」

杖を構えてこちらに向けておっさんが火の玉を放ってきたけどキニシナーイ。

筋肉質のお兄さんが僕のすねに斧を打ち込んできたけどキニシナーイ。

獣耳のお姉さんが僕の顔に向けて矢を放ってきたけどこれはちょっと気にする。だから、ちょっと叫んでみた。

「VAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

そうしたらみんな耳を押さえてうずくまった。遠くの方におじいさんが痙攣ながら倒れちゃってるけど大丈夫かな?ちょっと気になるから見に行こう。

僕は翼を広げて飛び上がった。

僕が飛び去った後には気絶している人や痙攣している人、虚空を見つめて動かなくなってしまった人がたくさんいた。あれ多分心折れてるよね。だけど僕が直接何かしたわけじゃないからキニシナーイ。そりゃ、けがするのは気にするよ!けがしたら暇しか待ってないじゃん!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

おじいさんのところに着陸~~。どうもおじいさん、僕の叫びでびっくりして心臓が止まっちゃったみたい。これは申し訳ないことをしたな~。責任をとるために僕の生命力を分けてあげよう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


よし、僕の生命力を半分くらいあげたらおじいさんの顔色が良くなってきた。これでもう命の危機は脱したかな?遠くからちらほらと人が見てるみたいだし僕はここから散歩の続きをしようかな。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


暫く飛んで王都って呼ばれるところの上空までたどり着いた。このままお城の塔に着陸しても別にいいんだけど、前に来た時に翼を傷つけられて飛べなくなって、暫らく部屋に引きこもることになったんだよな~。ご飯は知り合いが持ってきてくれたからよかったけど、部屋から出られないのはホント暇だった・・。遊んでくれる友達もいなかったし、あいつはご飯持って来たらすぐに帰っちゃうし・・・。

そうだ!この間のお礼をしてあげよう。この高さからなら僕の翼を傷つけた新型兵器?ってやつがある塔を安全に壊すこともできるもんね。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

結局、魔法で塔を壊したら兵士がたくさん下の広場に出てきたからあわてて逃げた。久しぶりに自分の命が危ないと思った。だから僕は一気に空に翔け上がって逃げ出した。

・・・あれ?なんか頭が重いと思ったら兵士がしがみついてる。僕が一度地面に引きずり落とされて地上で大立ち回りしてる間に、近くの高いところから僕の頭の上に乗っかったのかな?別に小さい子供に頭の上に乗られるのはいいけど兵士に乗られるのは絶対嫌だ。

小さい子供は僕の頭の上で遊んでても僕に危害を与えようとしない。むしろ僕が魔力で作った僕の分身と一緒に遊んでくれたりするからすごく楽しい。だから僕の頭の上で遊んでても別にいい。

だけど兵士は別だ。こいつらは自分の手柄欲しさに僕の頭の上で遊んでいる子供たちを武力で脅して追い出した上に、僕を殺そうとしてきた。さすがに頭にくるよね。だから僕は飛び起きてその時住んでた洞窟を突き破って崩落させてそれに巻き込んでやった。たぶん全滅したんじゃないかな?僕は他の奴らと違って人の死体を見たり、漁ったりする趣味なんてないからすぐにその場を離れて近所にあるもう一個の洞窟に移動したけど。・・・え?子供たちはどうしたって?巻き込まれたんじゃないのかって?ええっと~、子どもたちは兵士がちゃんと洞窟の外に追いやってたのは遠見の魔法で確認したから全員けがもしてないし、元気だよ。そりゃ僕が洞窟から駆け上がるのを見たときに少し驚いた様子だったけど。それに僕、その後で子どもたちと一緒に空の散歩したし。子どもたちも楽しんでたし僕も散歩ができたから両方Win-Winだと思う。

そんな事があったのは今から10年前。あの時の子供たちはみんなもう成人している頃だろう。みんな元気だといいな。

そんなことを思い出しながら僕は頭の上にいる兵士を振り落とそうとした。さっきから兵士が頭の上でうるさい。けど、こないだ頭に乗ってきた兵士と違って何故か敵意は感じないし、懐かしい気がする。何でだろう?

「俺だ、俺だって。ケニーだよ。俺の事忘れたのかよジーク!」

何を言っているのか。どうせ今この瞬間が最後になるんだから聞いてやろうと思ったら懐かしい名前が出てきた。ちなみにジークは僕が分身を作って一緒に遊んでいた時に名乗っていた名前だ。

ケニー、コリー、ミーシャ、マーニー。その時僕が住んでいた洞窟の近くの村に住んでいたこの4人と、僕の分身を含めた5人でいつも僕の頭の上で遊んでいた。かくれんぼしたり、鬼ごっこしたり、いろいろとね。彼らには僕の正体も伝えていたし、みんなそれをわかったうえで一緒に遊んでいたから僕を恐れることはなかった。頭の上に乗せて一緒に空を飛んだこともある。久しぶりだし、世間話ぐらいはしようかな。幸いまだ魔力はたくさんある。念話で意思疎通ぐらいはできるだろう。

『久しぶりだね~。上に乗ってるのがケニーじゃないんだったら振り落すところだったけど、ケニーだったのなら振り落とさずにそのまま地上に降りるよ~。そういえばみんな元気にしてる~?』

「お前は相変わらず怖いなぁ。えぇっと、みんな元気だ。コリーとミーシャは結婚して子供ができたって。マーニーは魔術大学に行って、博士号を取るって息巻いてた。まだ全然ダメダメらしいけど。」

『そうか~。ケニーは?』

「俺か?俺はあのことがあったから兵士になることは避けてたんだが2年前に村から徴兵されてな。だから今は渋々兵士やってる。親父の跡をついで始めた事業がやっと軌道に乗り始めたところだったのにな。」

『ははは、ケニーらしいね~。みんなも幸せそうでよかった。そろそろ着陸するよ~。』

「おいおい、俺はお前に食われるのか?」

『そんな事はしないよ~。人を食うのはごく一部の馬鹿な奴らだけ。僕とかみたいに年を取って程よく知恵もあるのは、周囲の魔力だけで生きていけるから~。たまに、人が作った料理を食べる奴もいるけど~。(僕みたいにネ。)なんでそう思ったの?』

「なるほど~。いやな・・。この間お前の同類さんが来てな、王都の住民のうちの半分を食っていったんだ。俺はお前ぐらいしか知らなかったから、まさか人喰うなんて思ってなくてな、驚きだったぜ。」

『それは、今度長老に言っておくよ~。そいつは逃げたんでしょ、多分そろそろ殺されてる頃なんじゃないかな~?』

「何でだ?」

「僕らの掟で人食いをしたら仲間から狙われることになるんだ~。だからさっき言ったでしょ。そんなことをするのは一部の馬鹿な奴らだけだって。』

「そういうもんなのか。」

『そうだよ~。』

そうこう話している内に着陸~。

『それじゃぁ、じゃあね~。』

「また今度会えたらいいな。今度来るときは分身で来いよ。王都案内してやるから。」

王都の近くにケニーを下ろして僕は飛び立つ。

久しぶりの友人との再会と別れは僕に人肌の恋しさを覚えさせた。今度ケニーの言うとおり分身作って送り込んでみようかな~。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ここまで来たからついでに親の顔でも見に行こうか。って言ってももうずいぶん昔に死んでるけど。僕は親が眠っているお墓がある谷に向けて飛び始めた。結構ここから近い位置にあるんだけど、あんまりいい雰囲気の場所じゃないから行きたくないっていうのが本音。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


久しぶりに見た親の墓は荒れ果てていた。まぁ、僕以外にここに来る人が居ない上に、僕自身が全然ここに来なかったのが原因だけど。

水魔法で墓を綺麗にして祈りを込める。久しぶりに親のにおいを感じた気がした。

もう日は暮れ始めている。今日はもう散歩をやめて帰るのがいいだろう。もしくはここで寝て明日も散歩の続きをするのもいいかな・・・・・。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

結局、今日の内に帰ることにした。もう空は真っ暗。下にある村も部屋の中のろうそくの灯が外に漏れている以外の光はない。空気が澄んでいるから月が綺麗だ。星々の明かりもきらめいている。・・・・・綺麗だ。

僕の部屋まではまだ距離がある。今のうちに魔力の回復をするのもいいだろう。

空を見ながら飛んでいると、下が騒がしい。どうやら僕はだんだん高度を下げていたようだ。危ない危ない。ここで墜落するわけにはいかない。他人ひとに迷惑かけちゃう。僕は気を取り直して再び空へと翼を広げた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


やっと部屋がある洞窟にたどり着いた。今日はいろんなことがあってもう疲れた。散歩に出たらやっぱり襲われたし、おじいさんの命を救った。きっとあのおじいさんは倒れる前より元気になっているはずだ。その後王都で大暴れしたら昔の友達と会えたし、皆の消息も聞けた。親の墓参りをして久々に親と向かい合えた気がした。帰りの空は綺麗だった。

僕は体を丸めて寝ることにした。


・・・・・僕はドラゴン。大人に嫌われながらも子供と遊び、心を通わせた子どもと龍の契約を結ぶ。そして誰も来なくなってしまった今は昼寝したり、分身を作って村に忍ばせるて時間をつぶしてる。そして空を飛んで散歩をする。

・・・・・今日も明日も僕は生きていく。いつかあの時のように子どもたちと一緒に楽しく遊ぶ夢を見ながら・・・・・。

今日も今日とて僕は行く・・・・・。



END



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