とある旅人と星の歌
今日が七夕だったことを朝思い出し、何か書かねばと三時間くらいで完成させました。織姫と彦星の巡り合い。夜空に煌く満点の星々。静かな星夜の雰囲気が、出せれていれば幸いです。
深けたばかりの夜空の中で、小さな星々が瞬いている。
背の低い草が一面に広がり、彼方まで続く草原の最中。
一人の旅人が、それを見上げていた。
歌が聞こえる。
清々と響き、夜風に舞う。
それは静かな、祈りの歌。
瞬いて煌き、永久に輝く。
美しき歌声を奏でるのは、夜空を見上げる旅人だった。
煌くものよ 汝は導
悠久を知る 夜の精
闇に生まれ 光にとけ
されど出 巡逢の君
我今ひとたび 汝に祈る
消え行く道を 空の上に
逢うべき命へ 導きたまえ
迷い人が紡ぐ歌。
夜空に輝き、永久に瞬く。
それは古き、星の歌。
旅人は、迷っているわけではなかった。
ただ、見上げた夜空があまりにも、美しいと感じから。
夜と星に捧げる歌を、無性に歌いたくなっただけ。
「――」
ふと、彼が言葉をこぼした。
歌の終わりにて訪れた、夜の静寂がそっと退く。
かわりに紡がれたその言葉は、一冊の本から取り出したもの。
「【――星を見つめ、道を探そう。地に無き地図も、星々は描く。導きの瞬きをただ信じ。私はそっと、歩み出す――】」
月と星々の明かりだけの夜。
旅人が、純白のマントで包み込む、白皙の痩身をひるがえす。
淡い水色にも見える、白銀の長髪を風に乗せ、澄んだ深い蒼瞳は、まだ見ぬ先の彼方へと。
穏やかな雰囲気を身にまとい、柔らかな微笑みを美貌に浮かべ。
美しい旅人の青年は、そっと旅路を再会した。
彼の名前はエストレア。
其は遥か古き言語にて、〝流星〟を意味する言葉である。