白霧湖 左周り
沖城:1分59秒486
(スタッフ:2分00秒312)
亜希:2分04秒083
姉崎:1分59秒983
今度は、初級コースの『白霧湖』
実は、タイムアタックを詰めるのは、初級コースの方が本当に細かくてシビアなのだ。レースゲーム経験者なら体験したことがあるだろう…。峠コースと違って“周回コース”は、詰めることが出来るのが0.01秒以内になることが本当に多い。しかも、たった0.01秒で順位がかなり変動することもある…本当に詰めにくいのは、初級コースなのだ。
そんな初級コースに挑戦する亜希。
「簡単なコースほど詰めるの難しいからな…。っしゃ、頑張ろ!!」
気合いを入れて、初級コース『白霧湖』に向き合う。
1回目:2分03秒901
「んー…もっと寄せないと…」
(“寄せ”とは、その名の通り壁への寄せ具合。コーナー曲がってる最中、どれだけイン側の壁に近づけられるか)
そして、2回目。
2分03秒477
「…本当に初級は難しいな、詰めるの…」
そう言うのも無理は無い。なぜなら、
①イン側の壁への寄せの上手さで差が出る
②ハイスピードを維持しながら曲がり、なおかつ立ち上がり速度を高くしないとストレートで差が出る
③壁に少しでも当たるとタイムロス
という、どのコースでも共通している事が一番難しく、どれだけ繊細なハンドルワークやペダルワークを駆使できるか。それに懸かるからである。
「…でも、誰も勝てないと言われてるプレイヤーに勝ちたい…」
そしてまた猛特訓が始まる。
3回目:2分03秒468
4回目:2分03秒532
5回目:2分03秒455
このタイムを出した時だった。
なんと、1周目で[-0秒835]を叩き出した。
しかし、それに動揺して2周目は事故ってしまい、タイムは更新したものの、ほとんど縮まず。
「あそこ、あんなスピードで曲がれるんだ…?」
そのコツを掴むために数回練習し、そして………
「…少しずつ突っ込みのスピードを上げてみよう」
と言った頃には、
2分01秒894
[-1秒561]
と、なんと大幅に更新していた。
結原「凄い…! まさか、こんなスピードで曲がれるとは思わなかった!」
と、隣で観戦していた結原が感嘆。
亜希「でも、まだだよ。スタッフに追いつけない…」
…そう。初級コースのスタッフが少し鬼畜なのだ。
始めの方に書いた①②③の項目全てを極めたタイムなのだろう。
2分00秒312
が、スタッフのタイムなのだ。
「まずはスタッフに追いつかないと…」
こうして亜希は、思い切って詰め始める。
2分01秒903
2分01秒804
2分01秒793
2分01秒800
微妙にしか詰められず、とどまっている。
「っく…! どうして…」
その時だった。その様子を見ていたのか、見知らぬ生徒が、後ろからコメントする。
この高校では学園バッジがあるのだが、今年その色は、
1年生は水色
2年生は薄紫
3年生は黄緑
という風に色分けされている。
そのバッジの色が薄紫だったので、2年生なのは分かった。
「インには寄ってるけど、コーナー入る前のアウトに寄せ切れてない。それじゃタイムは出ないわ…そしてスタッフも抜けない」
いきなり語られたため、少し動揺した亜希。
「えっ…!? …えっと、どちら様?」
続いて結原も、
「あなたは?」
と、いきなり現れた人に敵意むき出しで聞いた。
すると、その生徒は正体を明かす。
「私は“姉崎 美希”。学園第2位の私を知らないなんて思わなかったけど?」
姉崎だった。
「あ、姉崎先輩!? これは飛んだ失礼を…すみません」
真っ先に謝ったのは結原だった。
「ごめんなさい…」と、続いて亜希も謝罪した。
「あぁ、いいわよ? …そういえば、鳶尾峰下りは流石だったわよ、結原さん」
実は、2人の練習風景を陰ながら見守っていたのだ。
「そして秋野さんもね。夜峰原復路、最後のコーナーだけ私には真似できなかった。私が曲がってるスピードより速いんだけど、それでいてスムーズに曲がってた…私には無理」
2人のことを大絶賛。とても気に入ってくれている。
「「あ、ありがとうございます!」」
2人の礼がハモる。
「いいわよ。…私も沖城に勝ちたい1人だから」
同士として協力してくれるようだ。
「ちなみにね、白霧湖に関しては中盤の左がキモよ? あのコーナーの立ち上がり速度で全てが変わるわ」
と(この他にも少し指摘があったが省略)、1回走るごとに詰め方のコツを亜希へ教えていく。
そして亜希は、ついにスタッフに追いついた。
しかし、まだ抜けていない…
記録:2分00秒545
亜希「あとコンマ3秒縮まれば、ついにスタッフを…!」
姉原「そろそろね! …あとは本当に寄せを極めるしかないわ」
寄せに集中し、何回も何回も走る亜希。
…しかし、ぶっ続けでやっていたため、流石に休憩を取る。
亜希「ふー…でも、姉原先輩のお陰で沖城先輩に追いつけそうな予感がしてきました!」
結原「私もです! まさか、あんな縮むなんて思いませんでした…」
姉原「センス抜群な子は好きだからね、だから声かけてみたのよ!」
そう雑談している時、ある提案をする。
亜希「…あとは姉原先輩の走りを見て、違いを見極めるしかないと思う…。お願いしていいですか?」
と、他人の走りを見て学習する案を姉原に。
姉原「そうね、その方が早いね」
承諾してくれた。
…そして、姉原は本気で走った。
結果:2分00秒149
「…今日は調子悪いかも、ごめん。これで参考になったかな?」
いつもの私なら…と悔しがる姉原。しかし、亜希にとっては大収穫だった。
「なりました! 私が速いと思ってた走り方とまた違って、そうすれば速い速度で抜けるんだなって分かりましたから!」
そして、それを実践しながら詰めた結果…
2分00秒290
遂に、スタッフを抜くことが出来た。
「きたぁー!!」
嬉しくて跳ね上がる亜希、それにつられて自分のことのように嬉しがる結原、それを見て満面の笑みな姉原。
あとは、沖城を狙うだけとなった。
「…よし、全コース極めるぞー!」
次回。結原の 白霧 上り