夜峰原 復路
秋野 亜希:2分52秒787【100位】(スタッフ :2分49秒879)
沖城 希夢:2分44秒967【1位】
姉崎 美季:2分48秒999【2位】
自分の得意コースを知った亜希は、猛特訓を始めた。
壁に当たるのを覚悟で走り込み、限界速度を測っていく。
ブレーキングを微妙に調整していき、何キロで曲がれるかを検証。
そうしていくうちに、何となく感覚をつかんだ。
……だが、そう甘くはなかった。
次第に疲労が腕に溜まっていき、集中力も疎かになる。
「ずっと続けてやるものじゃないよ? ゲームは」
猛特訓している亜希の横に、千紗が座る。
「ゆっち……」
汗だくで、目が充血している亜希を見て、見ても居られなくて声を掛けたようだ。
「私もちょっと特訓しようと思うんだ。得意なとこ」
亜希に触発されたからか、結原までも特訓を始めた。
「ゆっちはドコを?」
「鳶尾峰 下り」
そう言い、亜希にタイムを見せる。
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結原 千紗 : 2分39秒718【87位】
沖城 希夢 : 2分34秒609【1位】
スタッフ : 2分39秒771
秋野 亜希 : 2分40秒522【圏外】
姉崎 美季 : 2分38秒961【2位】
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「……すっげ! 1回でスタッフを越えた!?」
その結果に、あんぐりと口を開けて驚く亜希。
千紗が持つ天性の才能は、それを可能にした。
「意外と難しかったよ…。スタッフ速すぎ」
スタッフゴーストの鬼畜さを体感し、千紗は驚いた。
そうして驚いたからなのか、少しずつタイムを縮めたくなったようで、特訓をし始めた。
「……これは負けてられないな! 私も、もっともっと…!」
亜希は、夜峰原 復路を極め続けた。
時々休憩をはさみ、水分補給をし、そして続けた。
1つ1つのコーナーを徹底的に調べ、
①どういうペダルワークが一番速いか
②ハンドルをどのくらい切れば曲がれるのか
③そのコーナーを曲がれる限界速度
を、一気に極めていった。
……亜希の才能が開花した瞬間だった。
そうして全部のコーナーを極め、タイムアタックへ移る。
すると、驚くべき結果が…
第1セクション :-0分00秒861
第2セクション :-0分01秒010
第3セクション :-0分01秒656
最終セクション :-0分00秒238
全セクション合計:-0分03秒765
そして、出たタイムは……
2分49秒022
なんと、特訓を重ねてから、たった1回でスタッフを抜いたのだ。
「うそ…!?」
自分でも驚きを隠せず、とても喜んだ。
そして、今度は順位に目を配る。
すると………
【3位】
「うっそぉぉぉぉ!!?」
なんと、第3位にまで繰り上がったのである!
「うそ…!? 亜希、凄すぎ…」
さすがの千紗も、その成長には目が点になるくらい驚いた。
一夜漬けで特訓に励んだだけで、そんな速くなるのは、あまりにも成長が速い。
きっと亜希にも、千紗と同じような“才能”が眠っていたのだろう。
「……その特訓方法、効果覿面よね!」
そして千紗も、亜希と一緒に特訓を始めた。
次回:結原 千紗の、鳶尾峰 下り