1/1
プロローグ
目に見えるもの、さわれるもの、この世のすべてのものは「原子」でできている。それでは我々の「心」とも呼ぶべきものもアトムで構成されているのであろうか。答えは否である。人間の死体をいくらほじくりかえしたって「心」は出てこない。「心」とは一体何であるのか。物体を動かすためにはエネルギーが必要である。それと同様に、「心」を動かす、つまり考えるためにも何かエネルギーが必要なのではないか、そう考えた一人の人物がいた。彼の名はアダム。心理学の権威であった彼は、「心」を動かすためにはエネルギーが必要である、という仮説を立証するために人生の大半を研究に費やした。そしてついにそのエネルギーの存在を発見し、さらには我々の生活するこの物理世界へそのエネルギーを応用する術を確立した。我々がエネルギーを消費し自らの手でものを動かすように、アダムの発見したエネルギーを消費することによって「アトム」を動かせることがわかったのだった。手を動かさずに「アトム」、つまりものを動かすその所作から、彼はそのエネルギー体系のことを「魔法」と名付けた。