初めての迷宮探索
「皆さん静粛に願います。間もなく第五百三回迷宮攻略が開始致します」
「開始に先立ちましてボーナスルーレットを行わせて頂きます。……ではルーレットスタート」
「…………今回の特殊装備を獲得したのは、内山咲、佐々木康介、田島綾香、堀江光輝、渡辺哲也の五名となりました」
「以上をもちまして今回の放送を終了させて頂きます。次回の放送までごゆるりとお楽しみ下さい」
◆
一通り準備を整えた一樹は迷宮探索をしていた。ファイアートーチの明かりを頼りに歩くこと約二十分、漸くモンスターを発見したところである。
一樹が見たのは大型犬程の大きさで茶色の毛を生やしたモンスターの後ろ姿だった。
気付かれないために明かりを弱くして静かに近づき先制攻撃を仕掛けた。
「……《ファイアーボール》」
そう唱えるとロッドの先から出た火の玉が犬型モンスターに向かっていった。突然の不意打ちに対処できなかったようで直撃したようだ。
犬型モンスターが襲ってくることを警戒していた一樹だが、予想に反して反撃してこなかった。不思議に思ったが理由はすぐ解った。
「えっ、弱っ……ファイアーボール一発で倒せるのかよ」
簡単に倒せることが判明したので見つかることを恐れずに転移装置を探すことにした。拠点に戻る唯一の方法なので余裕のある間に場所を特定する必要があるのだ。
◇
三時間後
あれから十体の犬型モンスターと八体の蝙蝠型モンスターを倒していた。最初の頃はぎこちなかった動きだが漸くロッドの扱いにも慣れ始めていた。モンスターが一体ずつ出て来ているため、一樹は未だに怪我することなく余裕を持って対処できていた。
蝙蝠型モンスターは動作が遅くファイアーボール一発で倒せるため、気が付きさえすれば余裕で対処できる相手である。
しかしながら、現在はとある問題が一樹を悩ませている。
「……ノドが渇いたなぁ。何か飲み物が欲しい」
準備していた時にはそこまで気付かなかったが、長時間迷宮の探索を行うのであれば体調にも注意しておく必要があるのだ。
軽い脱水症状と極度の緊張により一樹の身体は限界ギリギリの状態だった。それに加えて転移装置も未だに発見出来ていなかった。一樹は精神的に追い詰められていた。
気の向くまま歩いていたのが転移装置を発見出来ない最大の要因なのだが一樹の知る由の無いことである。
そのため背後から静かに近づいてくるモンスターの存在に気付かなかったのも仕方ない事だろう。
「転移装置なんて本当にあるのか……いてっ」
突然の衝撃でよろけた一樹だが素早く後ろを確認したところ、兎型モンスターの脱兎の如く逃げていく後ろ姿が見えた。ただ不意打ちを受けてもロッドを二本共手放さなかった点は評価すべきだろう。ロッドが無ければ一樹はただの弱者なのだから。
今更攻撃しても仕方ないと思い直し、攻撃を受けた部分を確認する。
「……ふぅ、特に怪我したところはないようだ。攻撃されたところも少し痛むぐらいで問題無いな」
気を取り直して探索を再開した。
◇
更に三十分後。
あれからモンスターに遭遇することなく迷宮探索をした結果、漸く転移装置を発見出来た。
一樹は拠点に戻ってから食事や風呂等を済ませて人心地がつくと装備品の補充を行った。今回失念していた食料品もその中に含まれている。
今回得られたアイテムの合計金額は4400円だった。しかし火の石を五個消費したため利益は1900円となった。
その中で食料や生活用品を購入しつつ、装備品の質を向上するための資金を調達しないといけないというのは中々大変なことだと痛感した。
「あっ……。また地下三階から探索するのだから簡単な地図を用意した方が時間節約になるんじゃ……」
漸く地図という考えに至った一樹は筆記用具と用紙も購入して、覚えている限り迷宮の構造を書き記していった。迷宮内では両手が塞がっているし、地図を書いている間に攻撃される心配があるので拠点でしか書けなかったりするのだ。
一通り書き終えると疲れが一気に押し寄せてきた。迷宮探索一日目ということで疲れていたのであろう、一樹は横になった途端間もなく意識を手放した。
〔モンスター紹介〕
・スモールドッグ(犬型モンスター):攻撃魔法一発で倒せる。攻撃力は強い。一体200円。
・ビッグバット(蝙蝠型モンスター):攻撃魔法一発で倒せる。動きが鈍い。一体300円。
・エスケープラビット(兎型モンスター):攻撃魔法一発で倒せる。動きが速く背後からのヒット&アワェイを攻撃パターンとしているが攻撃力は弱い。一体500円。




