第5話:二つの世界の結衣
結衣は、手のひらに乗った小さな魔法少女のフィギュアを見つめていた。その笑顔は、あまりにも無邪気で、グランデールの惨劇を経験した自分には場違いなものに感じられた。
「…なんで、こんなに…」
彼女は、フィギュアを握りしめ、胸に抱く。
このフィギュアは、グランデールの絶望から生まれた自分の「想像」なのか?
それとも、この世界の「結衣」が、希望を込めて生み出したものなのか?
彼女の頭の中に、二つの世界での自分が混在し、混乱していた。
グランデールの結衣:家族を殺され、何もできなかった無力な自分。
日本の結衣:アニメを愛し、創作活動に熱中する、平和な少女。
二つの結衣が、一つの体の中にいる。
彼女は、自分がなぜこの世界にいるのか、そしてあの異世界は夢だったのか、現実だったのか、その答えを探し始める。
そして、ある日の放課後、結衣は学校の図書館で一冊の本を見つける。それは、異世界の魔法について書かれた古文書だった。
『想像は、世界の創造を司る。しかし、それを具現化するには、強大な代償が必要となる』
その本には、現代では失われたはずの「創造魔法」の秘密が記されていた。そして、その魔法は、この荒廃した世界を創り出したものだと示唆されていた。
結衣は、自身の「最弱」の魔法が、この世界の真実を解き明かす鍵であることに気づく。
しかし、この本を読んだことで、結衣の周りで奇妙な出来事が起こり始める。
それは、彼女の記憶を消そうとする、何者かの仕業だった。
結衣は、この平和な日常を守るため、そして失われた家族と仲間のために、この世界の謎に立ち向かうことを決意する。