43/120
9話:遠い世界の足音
結衣の魔法によって、村は日々豊かになっていった。
魔法で育てられた野菜は、隣村でも評判になり、村には活気が満ちていた。ハクロは、狩りの腕前だけでなく、結衣の魔法を理解し、その力を最大限に引き出す手伝いをするようになっていた。
ある日、二人が森で薬草を摘んでいると、遠くから、聞き慣れない金属音が聞こえてきた。それは、結衣が日本で見た、戦車の走行音に似ていた。
「…何だろう?」
結衣は、不安そうにハクロを見つめた。ハクロもまた、眉をひそめ、警戒の表情を浮かべていた。
「この森に、あれほど大きな音を立てる者はいない」
二人は、音のする方へと、静かに進んでいった。
森を抜けると、そこには、信じられない光景が広がっていた。
結衣がかつて悪の親玉を打ち倒した場所に、巨大な鉄の建造物が立っていた。それは、彼女が日本で見た、軍事基地にそっくりだった。そして、その周りには、見たこともない武器を持った兵士たちが、忙しそうに動き回っていた。
彼らのヘルメットには、結衣が日本で見た、あの戦車に描かれていたのと同じ、見慣れない紋章が描かれていた。
「まさか…」
結衣の心に、一つの可能性が浮かび上がる。
この世界は、再び、戦火に包まれようとしているのではないか?
結衣とハクロは、互いに顔を見合わせ、言葉を失った。




