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4話:夜空の約束

その日の夜は、満月が煌々と輝き、まるで昼間のように明るかった。


結衣は、村の子供たちに日本の文化を教えていた。和紙を作り、色鮮やかな折り紙で鶴や花を折る。子供たちは、彼女の魔法のような技術に目を輝かせ、夢中になっていた。


「お姉さん、すごい! 魔法使いみたいだね!」


子供たちの言葉に、結衣は微笑む。彼女にとって、この穏やかな日々こそが、何よりも尊い魔法だった。


その様子を、ハクロは少し離れた場所から静かに見つめていた。彼の表情は、以前のような険しいものではなく、どこか柔らかい光を帯びていた。


子供たちが帰り、結衣が一人になったとき、ハクロは彼女の元へと歩み寄った。


「…感謝する」


彼の言葉に、結衣は驚いた。ハクロが、言葉を交わすようになったのは、この数週間で初めてのことだった。


「どうして?」


「お前は、この村に、笑顔をくれた」


ハクロは、そう言って、結衣に一つの花を差し出した。それは、夜にしか咲かない、月明かりを浴びて淡く光る、美しい花だった。


結衣は、その花を受け取り、ハクロに微笑んだ。


「私は、大切なものを守れなかった。だから、もう、誰も失いたくないの」


結衣は、もう一度、彼の瞳を見て、そう言った。彼女の言葉は、ハクロの心を深く揺さぶった。彼は、結衣の優しさが、彼女が経験してきた悲しみから生まれていることを知った。


「…俺が、お前を守る」


ハクロは、そう言って、結衣の手をそっと握った。その手は、狩人として荒々しかったが、温かく、結衣の心を安心させた。


結衣は、彼の言葉に、静かに、しかし力強く頷いた。


これは、二つの世界の悲しみを背負った、二人の人間が、互いに寄り添い、共に生きていくことを誓った、小さな約束だった。

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