薩摩人活動記録書:第十五日目
教員たちの反乱と薩摩寮への「介入」
記録日時: 聖暦2525年4月15日、午前中
記録者: 薩摩人活動記録係 筆頭調査官 エルヴァード・フォン・グロリアス
今朝、私は薩摩寮の温州みかん畑の隅に、見慣れない「薩摩藩」と書かれた木札が立てられているのを発見した。
彼らはもはや、この地を故郷の領土の一部と認識しているのかもしれない。
私の胃は、もはや痛みを感じることもなく、ただ虚無感が支配していた。
国王陛下への謁見が終わり、薩摩人たちが学園に戻ってきてから、教師たちの間で不穏な空気が流れ始めた。
国王陛下が彼らの行動を「面白い」と評価したことで、学園長は彼らへの対応をさらに躊躇するようになったのだ。
しかし、多くの教師たちは限界に達していた。
午前中、学園長室で開かれた緊急会議は、怒号が飛び交う場となった。
病欠から戻ったエアル先生とミネルヴァ先生も参加しており、彼らは薩摩人による被害の甚大さを切々と訴えた。
「学園の教育理念が崩壊しています! 彼らは私の魔法教室を剣術道場に変え、私の授業は全く成り立ちませんでした!」とエアル先生は震える声で叫んだ。
ミネルヴァ先生も涙ながらに訴えた。
「図書館の蔵書が破壊され、私の心は引き裂かれました! 彼らは本を『魂』と呼び、暴力的に読み込むのです!」
ロドリゴ先生は「このままでは、他の生徒たちが彼らの過激な価値観に染まってしまいます!」と声を荒らげ、ガストン先生も「彼らは制御不能です! 訓練施設もこれ以上持ちません!」と続いた。
教師たちの怒りは頂点に達し、学園長に詰め寄った。
「学園長! 薩摩人たちを追放するか、せめて隔離していただかなければ、我々は教育を放棄せざるを得ません!」
学園長は、教師たちの猛反発に直面し、苦渋の決断を迫られた。
彼は深いため息をつくと、重い口を開いた。
「わかった……。これ以上、彼らを野放しにはできない。薩摩寮への『介入』を許可する。ただし、決して彼らを傷つけぬよう、慎重に行動するように」
「介入」という言葉に、教師たちの顔に安堵と決意の色が浮かんだ。
しかし、私はこの介入が、新たな混乱の火種にしかならないことを予感していた。
記録日時: 聖暦2525年4月15日、午後3時
記録者: 薩摩人活動記録係 筆頭調査官 エルヴァード・フォン・グロリアス
午後の時間、学園長の下した「介入」の命令が実行に移された。
ロドリゴ先生を筆頭に、数名の教師と警備隊員が、薩摩寮へと向かった。
彼らの目的は、薩摩人たちの武装解除と、学園の規則を遵守させるための「説得」である。
私は、この一部始終を記録するため、薩摩寮から距離を置いた場所から監視していた。
薩摩寮の入り口に到着したロドリゴ先生たちは、緊張した面持ちで寮の扉を叩いた。
しばらくすると、薩摩人たちが扉を開けて出てきた。
彼らは、手に刀を携えており、表情は警戒に満ちていた。
「何じゃ? 何の用じゃ?」
ロドリゴ先生は、一歩前に進み出て、毅然とした態度で告げた。
「君たちの行動は、既に学園の秩序を大きく乱している。これ以上の無許可行動は許されない。その刀を預け、学園の規則に従うことを誓いなさい!」
薩摩人たちは、ロドリゴ先生の言葉を聞くと、一瞬にして表情を険しくした。
「刀を預けろだと? 刀は武士の命じゃ! それを預けるなど、死を意味する!」
「学園の規則だと? おいたちのチェストの精神を抑えろと言うのか!」
彼らは一歩も引かず、むしろ刀を強く握りしめ、臨戦態勢に入った。
ロドリゴ先生と警備隊員も、彼らの気迫に圧倒され、一瞬後ずさった。
「これは命令だ! 抵抗するならば、我々も強硬手段を取らざるを得ないぞ!」
ロドリゴ先生がそう警告した瞬間、薩摩人たちが一斉に叫び始めた。
「チェストォォォォォォォォ!!」
彼らは雄叫びを上げながら、刀を構え、教師たちと警備隊員に向かって突進してきたのだ。
教師たちは慌てて防御の構えを取るが、薩摩人たちの動きは素早く、そして力強かった。
結果として、この「介入」は完全に失敗に終わった。
教師たちは、薩摩人たちの圧倒的な戦闘力と、命を恐れぬ突進の前に、ほとんど抵抗することができなかった。
ロドリゴ先生は腕を捻挫し、警備隊員数名が軽傷を負った。
薩摩人たちは、誰一人として怪我をすることなく、寮へと引きこもってしまった。
この日、学園は薩摩人たちの「自治」を認めざるを得ない状況へと追い込まれた。
彼らは、もはや学園の「生徒」という枠を超え、学園内に独自の治外法権を確立したのである。
私の精神は、もはや回復不能な領域にまで達した。
この記録は、私の最後の抵抗なのかもしれない。




