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プロトタイプ  作者: ぱっと見アラサーの高校生
第1章 永遠の国
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第十一話「仲間」

「シン、頼むこの国の王を…ファグナを止めてくれ。」



元の世界とは切り離された美しい世界。夕日が昇り夕焼けに身を焦がす二人の間にはただ静まり帰った空気だけが流れていた。



「…自分でやらないのか。」

「あいにく昔結んだ契約によりそれはできないことになっている。」

「そろそろ聞いていいよな、なんで口調変わってるんだ?

 キャラ変?」

「きゃらへん?はわからないがこれが本来の私だ。

 あの口調は少しでも威厳を出すためのものだ。」



あれキャラ作りでやってたのかよ⁉

だとしたらかなり面白いぞこいつ…

にしても契約でファグナと戦えないもしくは干渉できないのか。



「元よりファグナは止める気だけど頼みとして受けるならフェアじゃなくないか?」

「もちろんこちらからも支援はすると約束する。

 まずお前をここの生徒として扱うが生徒登録はしないものとしファグナには秘匿しよう。」



なるほどそれはかなりいい条件ではある。

元々学園に在籍すること自体がデメリットとなっていた、これを無くせるのはかなり動きやすくなる

だがまだ命を賭ける側としては不十分だ。



「どこまでいっても結局は戦闘になると思ってる。

そこでの支援が欲しい…今の俺じゃファグナに勝てるとは到底思えない。」

「まあ確かに今のお前では戦えても五分で負けるだろう。」

「そうか…なら俺は、どうすれば勝てる。」



シンの眼差しにエリミアは驚いた様子で目を見開き少し微笑んでからシンを見て言う。



「私がファグナの魔法、そして奴の側近7人の魔法を教えよう。」

「そこまでわかるのか。

 さすがだな学園理事長。」

「受けてくれるかこの頼みを。」

「ある程度のメリット、デメリットはつり合いが取れても最終的には努力になりそうだな。」

「戦闘の指導は私が行おうどれほど成長できるかはお前を信じている。」



それでも負けるかもしれないとエリミアは己が言葉に確信を示せず力及ばないことを悔やむような顔をし少し伏せる。

そしてを強く握り顔を上げた。

その目はたしかにどれほどの時が流れても当時の少女のままの光をもってシンを見つめていた。



「この依頼、受けてくれるか。」

「ああ。

 今ここに冒険者シンの名においてその依頼確かに拝命した。」

「感謝する若き勇者よ。」



二人は互いの覚悟を信じ握手をする。

エリミアの話したいことは終わったのだろう。徐々に結界にひびが入りビキビキと音を立てながら壊れ始めている。

徐々に広がる日々がやがて地平に落ちていく夕陽に触れた瞬間、まぶしい光がシンとエリミアを包み込んだ。

瞼越しに感じる光の眩しさを感じなくなり目を開けるともうそこに無数の銅像の巨大な神殿もなく、自分たちの帰りを待っていた仲間だけがいた。



「お帰りシン。」

「中々にいいもん見れたぜジオ。」

「どうだったのシン?」

「いやすっげえ某漫画の領域〇開。」

「ええそれは見たかった!」

「豊が見てもすげえの一言で終わるだろ。」



結界内と今との温度差に何もなかったことを演じつつもシンの心境は今後のことについて考えを巡らせていた。


隠したままでいるのも限界だろうな、今日の夜にでも話さないといけないのかもしれない。

この話をしたらこいつらは必然的に命を賭けなきゃならなくなる。

それを了承してくれるだろうか。



「真面目な顔なんかしちゃって考え事かい?」

「いつも真面目だろうがよ。」

「さて小僧ども学園への入学は明日からじゃが、寮に入るのは今日からじゃ。

 休憩室にいる仲間を起こして宿から荷物持ってくるがよい。」

「俺お腹空いたー!」

「じゃあ先に朝ごはんかな?」



それから俺たちは休憩室にいる莉亜達を起こした後、荷物を寮に運ぶ前に朝ごはんを食べにギルド近くにある店に行った。



「あのー距離…空きすぎじゃない?」

「その馬鹿がすべて悪い。」

「庇いはしないけどやりすぎじゃないか?」

「庇えよシン!」



現在俺たちはギルド近くの店でご飯を食べている一つのテーブルに7人、そしてもう一人のテーブルに豊を置いて。

こうなった経緯は簡単だ。

俺たちはエリミアと別れた後すぐに女子組を起こしに行った。体力的にも連戦で疲弊していた俺たちを置いて豊が真っ先に休憩室につき、ドアを開け、吹っ飛んだ。

説明が足りなかったかもしれない。簡単に言うと、着替えをしている女子の部屋にノックなしで入った故驚いた女子の攻撃をもらい、豊は吹き飛ばされ、今である。



「まあそろそろいいんじゃないか?」

「そうだよ豊も悪気があったわけじゃないんだし。」

「そうだぞただ何も考えてなかっただけだ。

 正直あんなに楽しくなさそうにご飯を食べるあいつは面白いけど許してやってくれ」



シンが豊を見るとそこには死んだ目をした豊がちょびちょびと干しブドウを口に運んでいた。


こういうのは豊に悪い気がするが普段との差もあってなんか面白い。

ずーんと聞こえてきそうなほどにしょんぼりとする様子はさすがに我慢できない。



「ま、まあ本人に悪気はないのはわかったわけですし、もういいんじゃないですか?」

「はあ、瀬良に免じて許してやる。」

「ありがとうございます。」



さてこれで全員席についたな。

今ここで少しだけ空気を作っておくか。


そう決意を決めシンはフォークを皿にかけ全員に話があると切り出した。



「少しいいか」

「まじめな話か?」

「そんなとこだ。

 今日の夜、寮にの持つをすべて置いた後に今後のこの国での動きで大事な話がある。」

「ここでは話せないということでいいんだね。」



俺は黙ったまま首を縦に落とす。

少しの沈黙後に豊がしゃべりだした。



「なんかそんな真剣な顔するシン初めて見たかも」

「昨日のクエストでもそこまでじゃなかったもんな」



少し重たい空気を豊の明るさが元に戻してくれた。

やっぱりこういう時に豊がいると便利だとよく感じる。



「そうだシン達のクエストはどんな感じだったの?」

「かなり危なかったんじゃないか?」

「僕以外の全員気絶させられたしね」

「俺は起きたけどな」

「そんなに危ない戦いだったんですか?」

「シンが起きてくれなきゃ全滅だったかもね」



それから俺たちのクエストの土産話を聞かせながら全員で食卓を囲みながら学校について気になることを話した。

色々危なっかしいことして怒られたけど学校の話では年相応の盛り上がりを見せていた。




夜、学園内寮。                  

夜ごはんも食べ荷物を運び終えた俺たちは今、疲れ切ったからだを休ませるためベットの上に座りながら学内のことを話している。



「すごいねこの部屋ベットと机が四つあるのにまだスペースが余ってる」

「エリミアはあまり期待するなとか言ってたけどかなりいい部屋だよな気がする」



俺たちの部屋にはそれぞれベットと机が置いており他にも洗面所、風呂、クローゼット、武器用の倉庫がある。

一応キッチンもあるのだがこの学園では学食がでるので使用することはあまりないだろう。

そしてそろそろ俺が女子たちに伝えておいた時間になるはずだ。

全員が荷物を運び終え夜ごはんと風呂を終えてから30分後に男子部屋に集まること。

女子の方が色々時間がかかるので男子は1時間半ほど待っているがそれそれだろう。


そう思っていると部屋の扉が開いた。



「お待たせしました…」

「お待たせー」

「お待たせ」

「お疲れ様ベットでも椅子にでも座ってくれ」



男子をベットから立たせて椅子に座り、女子との底面になっている状態になった。

部屋の中は静まりかえり一同の視線はシンへと向けられる。

シンの胸中は責任と信頼が大きく渦巻きながらシンの鼓動を速めていた。


これを言ったらこいつらはどんな顔をするんだろうか。

それでも、一緒に進んでくれるだろうか。

俺は、こいつらに命を賭けさせられるほどの何かを持っているのだろうか。

場所まで作って悩むんじゃないシン。言え。


「まず昨日の朝、ギルドで配られた手配書の指名手配犯。

 あれは俺だ」

「王国騎士を殺したってやつか。

 何で殺した?」

「本当のことをいうならあいつらから仕掛けてきたんだ。

 ファナドスに来た日に俺は図書館でファナドスの歴史を調べてたんだ。

 でも俺の知りたい情報はいくら調べても出てこなかった。

 その時よくわかんねえローブかぶった人が俺にこの本を渡した」



そうして俺はあの時見知らぬ女性から受け取った本をバッグから取り出し机に置く。



「その中にはこの国の建国前から建国してから少しの間のことが書いてあった。

 そこで見たのは国王が禁術を使用して何度も肉体を入れ替え魂を繋いでいるという記述だった」

「それって入れ替え先の人は…」

「莉亜の思っているままだ、術者じゃない入れ替え先の人間は死ぬ」

「それを2500年間…なんでそこまでして」

「それは、俺にもわからない。

 何か生きなきゃならない理由があるのか、ただ自分が生きたいだけなのか、どちらにせよ…」

「自分のために人の命を奪うのは人のすることじゃない。」

「そうだ。」



ファグナと一緒に夢に出てきたあの子については不確定な情報が多い。

言ったところで大してわからないだろうしややこしくしない方がいいだろう。



「そしてその本の内容を知った俺を殺しに来たのがその王国騎士で俺はどうにか勝ったけど、なんかの魔法が発動してそいつは殺されて濡れ具ぬが俺に来たってのが一連の流れ」

「それはもうなんか、すべてにおいてご愁傷さまだな」

「でも指名手配の話を聞いてエリミアがジオにコンタクトを取ってくれたから今俺たちはここにいる」

「エリミアさんも知ってるの?」

「なんでかは俺もわからない。

 でもエリミアに頼まれたんだファグナを止めてくれって」

「戦わなきゃいけないのか?」

「最終的にはやっぱりそうなる。」

「エリミアさんは手伝ってきれないのか?」

「昔結んだ契約でできないんだとよ。

 でも、学園に時々来るファグナに俺らのことを隠してくれるのと、戦闘を教えてくれるらしい。」

「それで私たちに国王へ武力で立ち向かえと」

「この話に乗ったらみんなが命を賭けんきゃいなくなるのもわかってる。

 でも俺一人じゃ力が足りないんだ。

 だから、頼む」



俺は椅子を立って一歩下がる。

全員と視線を一度かわし頭を下げる。

そして


傲慢な考えと正義感で仲間を危険の中に連れて行くのははたから見れば自己中なのだろう。

頭を下げたままでみんなの顔は見れない。頭を上げるのが怖い。


そんな俺の不安をくだらないものだとでもいうように一人の手が肩に置かれる。

そして一人また一人と俺の肩に手が置かれる。



「顔上げろよシン」



玲央の声が聞こえて俺は顔を上げる。



「みんなお前に一回は救われてんだ。

 少しくらいの無茶ならついてくどうってことねえよ」

「僕は昨日実際に命救われたしね」

「俺も気失って動けなかったからな~」

「私もシンにはテスト勉強でお世話になったしね。」

「私もシンには助けられてますから。」

「元々最初の狼で死んでいたかもだ今更惜しむ気はない。」



全員が口々に言葉をかけていく。

見捨てられるのではないかとも考えていたシンは安堵と同時に仲間に恵まれたことにうれしくなり少し、口角が上がった。



「にしても軽くないか?」

「英雄になるならこのくらいの苦難たくさんあるでしょ」

「ははっ、莉亜の方が覚悟決まってるんじゃないかシン?」

「うっせ真面目な空気壊しやがって」



いつの間にか重かった空気がなくなりやる気に満ちた空気がシンたちの間には流れていた。

今後について話し合う玲央たちを見渡しているとシンの口は無意識に言葉を発していた。



「ありがとうな」



その言葉にシンさへも少し驚いた表情をする。

玲央達は顔を見合わせて少し笑った後シンに向かって笑顔で言い放つ。



「おう!」



そこからは翌日は戦闘演習で早いのですぐに解散して女子たちを部屋に返した後、エリミアの方へ向かった。

理事長室の前につき3回ノックをし、名を名乗り、声が返ってくるのを待つ。



「入れ」



エリミアの声が返ってきたので扉を開け部屋に入る。


部屋の中には数々の魔導書と思われる本が入っている本棚、エリミアの杖にローブ、そして幕をかけられた…あれは絵画だろうか。


そして奥に置かれている机には未だ職務を続けるエリミアがいた。



「もういい時間だろ切り上げたらどうなんだ?」

「何の用だ」



話しかけても手を止めず仕事を続けたまま要件を聞き出してくるエリミアにシンは若干呆れながらも要件を伝える。



「明日の戦闘演習、あんたに俺の相手をしてほしい」

「何故だ教師たちで十分だろう」

「十分じゃ足りないんだよ。

 これからの旅にだって力が必要になる。

 俺じゃあいつらのために誰よりも早く強くならなきゃいけないんだ」



旅はここで終わるわけじゃない。俺たちの終点に行きつくまでどこまでもいつまでも続く。

その中でどんなモンスターに人間に出会うかわからないだから…



「シン、お前は何を焦っている」

「焦るのは当然だろ。

 俺は英雄になるって決めたんだ」



俺の言葉を聞いたエリミアは驚いた様子で目を大きく開き少しの間顔を下げ黙ってしまった。

顔を上げたエリミアは少し鋭い目つきで俺に問い出した。



「お前はその言葉の重さを分かっているのか」

「…正直この言葉がこの世界でどんな意味でどれ程の重さをもつのか俺にはまだわからない。

 でも覚悟はしてる。

 俺は何があっても進むことはやめない」



答えを聞いたエリミアはもう鋭い目はしておらずただ黙っていた。

そして引き出しから何かを取り出してから立ち上がりこちらに近づいてきた。



「渡しておく」



なんだこれ手紙か?

かなり古そうな手紙…ここまでの状態になるまで残すってことは大事な人のものってことだよな。


俺に手紙を渡したエリミアは踵を返し机に戻り再び仕事に戻ろうとする。



「俺に預けていいのかよ」

「お守り代わりだもっておけ」

「明日の件はどうなったんだよ」

「今日と同じ場所で待っていろ」



色々聞こうと思ったけどなんか聞きづらい空気にしちゃったな~

今回は一回帰るか。



「失礼しました」



部屋の外に出て扉を軽くはじく。

扉が閉まり切る瞬間に部屋からこぼれるような声が少しだけ聞こえた。



「…す」



シンはその悲しさをまとった声に振り向いたが今言ったところで邪魔になるだろうと察し自分の部屋へ足を進めた。

部屋についた後は寝ていなかった分の疲労が一気に押し寄せたのかどっと力が抜けたことですぐに意識が落ちていった。

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