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プロトタイプ  作者: ぱっと見アラサーの高校生
第1章 永遠の国
10/23

第九話「ファナドス最強の魔術師」

翌朝のファナドス。

朝陽が窓から部屋に流れ込み宿の部屋を照らす。

シンたちが拠点として利用している宿で今なお残された四人は荷物を整理しながら帰りを待っていた。



「四人、まだってきませんね」



シン達がクエストに出発してからかなりの時間がたち、学園に向かうまでのタイムリミットはすぐそこにまで来てしまっていた。



「やっぱり、なにかあったんじゃないかなあ…」

「豊や朝陽ならありえるがシンがいてそれはないだろう安心しろ」



莉亜の危惧がこの状況では場の空気を悪くすると察してのか芽衣は冗談を言いながらなだめに入る。



「普段おちゃらけてはいるがやるときはやる。

 私たちも前回のクエストでは助けられただろう?」

「うん、そうだね大丈夫だよね!」



なんとか場の空気は保てたがもともとマイナス寄りだったため何も変化はしていない。

そんな空気の中三人の様子を涼しい顔で傍観するジオはかなり焦っていた。



「ま、まあシンたちにはあとから合流してもらうことにして僕たちは先に行こう。

 彼たちも心配ではあるけど訪問に遅れでもした方が問題だからね」

「そう、ですねいい方向に考えるようにします」



ひとまず重たい空気を緩和できたことに胸をなでおろし学園に向かうことにした。

                 

すっかりと日が昇り砂漠を抜けても疾走を続ける四人は今森の中をシンの魔法による粒子のサーフィンをしていた。



「ほんとに間に合うのかよこれー!」



無数の粒子の波に揺られる奇妙な光景ではあるものの走るより体力の効率を込みにしても速いため魔法を行使してはいるがこれはちょっと自然破壊がすぎるか?



「間に合うはずなんだけどな。

 ファナドスに入った時この移動法使えないからそっからはダッシュだぞ」

「それより俺たちが考えるべきは学園についた後じゃないのか」

「だよな~学園で何すんのか聞いても変にはぐらかされたもんな」



んなことあったなたしか俺も聞いたとき…



「えっ学園言ってなにやるかって?あーソンナタイシタコトハシナインジャナイカナ。」



他のやつに聞かれた時もこれだったのかあいつ。

ジオの嘘を吐く下手さに呆れていると長かった森を抜け平原にでた。



「やっと見えたぞファナドスー!」



森に遮られることがなくなったファナドスが姿を現した。


約束の時間までのこり30分ほどファナドス南城門まではさほどないが目的地は北東方面にある学園、国に入ったとしてもまだ距離はある。



「時間は迫ってきてる追いつくためにもさらに飛ばすぞお前ら!」

「「「おう!」」」

                    


俺たちは街中を半刻走り続けやっとの思いで到着した。

何とかぎりぎりで目的地にはついたが思ったより距離があったため四人の体力は完全に切れかかっていた。



「ここが学園であってるんだよな?」

「ああここで間違いない。にしてもでかいな」



目の前に広がる学園は想像のはるか上を行くスケールをしていた。

城を基調とした造りに中を歩く人々の気品の高さ。

ぱっと見でも某夢の国くらいはある。

これが全部学園の設備ならファナドスはかなりの力をこの学園に注いでるのではないだろうか。

まあ当然だよな。

ここはいわば器の選別場。

力あるものは王に見初められ命を侵され器とされる。



「胸糞わりいな。」

「シン学園見て何かあったのか?

 目つきが悪くなったけど」



くだらないことを考えてしまったからか無意識に眉間にしわが寄っていることにシンは気づいていなかった。


あんなにたのしそうにしててもここは利用される場所なのかもしれないんだよな…

改めてこの国の裏を知った実感が沸いてくるな。



「ああなんでもねえよ。

 それより俺たちの服装ってこれで大丈夫なのか?」

「問題ないよシン。

 ずいぶん待たせてくれたね。

 クエストはどうだったんだい?」



シンの疑問に学園の大きな門の中から現れたジオが答える。



「ジオ!出迎えのために待っててくれたのか。

 めちゃくちゃ大変だったぞ死にかけたしなでも…」

「強くなったねシン」

「やっぱわかるか」



シンの言葉より早く何かを感じたのかジオがシンの成長に称賛の言葉を送る。



「朝陽も魔法の扱いがうまくなってるね。

 さっここの理事長も待たせてるし早く行こうか」



もう約束の時間にはなっているがジオが迎えに来れてるということはある程度の猶予はくてれているのがろう。



「待ってくれ服装、このままでいいのか?」

「もちろんじゃ。

 どうせすぐに戦りあうのじゃから着替える必要はないぞ」



玲央の問いにジオではなく門から出てきた一人の女性に応えられた。

小さめの身長、腰まであるエメラルドグリーンの長い髪、碧の瞳、幼げあふれる顔だち…

子供かこいつ…こんな子でも学園に通えるのか年齢層幅広いなさすがだ。



「子供じゃないわ小僧!」



子供扱いがよほど気に障ったのか少女は手に持つ荘厳な見た目の杖で躊躇なくシンの顔面を弾き叩いた。



「ぐほっいってえ!」

「うわ痛そ」

「モロに入ったな」

「いいかよく聞け小僧!

 我こそは、この学園ソクラプラトスの理事長にしてファナドス最強の魔術師。

 アンチエタニタスの名を持つものエリミア・ミネルヴァじゃ!」



少女の声が響き渡りシンは唖然としたまま殴られた頬を抑えている。

あまりの事実に理解が追い付かない。

何度もジオと顔を見合わせる。



「…まじ?」

「まじ」



これが?

いやこの人が…?

まじか…ええなんか想像してたのと違ってなんか、ショック。



「悪かったの想像と違って!」

「待ってくれ別に馬鹿にしてるわけじゃないんだって!」



待てよ今俺口に出したか?

思えばさっきも俺はこいつを子供だなんて言ってないぞ。



「あんた、まさか心が読めるのか?」



心の中で思ったことが包み隠さず伝わってるような感覚。

これはまさか、こいつの魔法か?


シンの問いにエリミアは誇らしげに手を腰に当て無い胸を張りながら答える。



「当然じゃ。

 我に隠し事はできん。

 どうじゃすごかろう」

「シン彼女の言っていることは全部本当だよ。

 嘘はついていない」



考えてること丸聞こえって面白いな。

戦闘ではかなり優位に立てる。

今考えてるのも全部聞こえてんのかな?

そんなことを考えていたらエリミアは少し驚いた顔をしたあと俺を指さした。



「貴様面白いな小僧。

 気に入った!

 下らん面接とかはなしじゃ実力だけを見る良いなジオ」

「ま、まあ君がいいならいいんじゃないかな」



エリミアが当初の予定を破棄したことに少し困り顔をしながら彼女のわがままな性格を理解しているジオはYES以外言えなかった。



「なら我は先に向かっておるぞ準備を万全にしてくるがいい。」



そういうとエリミアは杖で地面を小突いたと思えばすぐに姿を消した。



「これって!」

「転移魔法だな。

 ジオこれを使える人は少ないって言ってたよな」

「言ったよ。

 これで分かっただろう。 

 彼女がどれほどのレベルの魔術師なのか。

 さ、歩きながら話そうか」



彼女のレベルを知ったことで先ほどの紹介にとてつもない重みが生まれた気がする。

未だに信じ切れない心境を抱えながら彼女のことについてはジオについていきながら話すことにした。

周りとの服装の違いから視線が集まる。

…きつい。

それよりさっき見せられた転移魔法だ。

転移魔法の仕様はどれだけ才能があるとしても最低五年は取得に時間がかかる魔法。

熟練の魔術師、それも単独でLvⅥ指定のモンスターを討伐できる実力を持つものが使えると言われている。



「それをんなあっさりと…」

「彼女は呪いのせいで年を取らないんだよ。」

「呪い?

 でも呪力を感じる気配はなかったぞ?」



呪い、一般的には呪力を使い発動させる特殊なデバフ付与のことだが生まれつきや武器のデメリットとしても現れる可能性のあるもの…



「先天的なものなら呪いの気配は感じないはずだ。」

「その通り。

 彼女は生まれながら生跡魔法をもっていてそれが暴走した結果年を取る速度がとてつもなく遅くなってしまったんだ」



生跡魔法の暴走。 

つまり魔力の扱い方の知識が浅い時期での使用により操作が彼女の手を離れ暴走した結果、呪いをうけたと。



「その経緯なら呪いって言い方は間違いなんじゃないか?

 そこまで悪く言うものでもないだろうに」



他者が他者にもたらす呪いとは違い彼女のは魔法の暴走によって自分が被害を受けただけだ。

ましてや魔法の暴走なんてレベルは違ったとしても珍しいものじゃない。



「彼女の家はね貴族だったんだけどある時国を追い出されることになったんだ。

 でも彼女だけは、エリミアだけはこの国に残された永遠の国から追い出された一族の子がたとえ望んで手にしていなくとも永遠に近い命を持っているときた。

 民衆がそれをミネルヴァ家が残したこの国への皮肉と受けった結果呪いなんて言われるようになったのさ」



なるほどそんなことが…呪いを持つ子、そんな扱いを受けながら生きつづけここまでの地位と実力を気づいた彼女には敬意を抱かなければならないのかもしれない。



「じゃあその魔法って一体?」

「すぐにわかるよ身をもって、ね。

 さ、ここだよみんな装備を整えて!」



ジオのの言葉の意味が理解できないまま目的地に着いた四人は部屋の中をみてこれからすることを察してのか全員顔をひきつらせた。



「まさかこれからやることって…」

「実践演習?」

「正解。

 ちなみに女子グループは先にやってぼこぼこにされてるからね」



いますごい嫌なことを聞いたかもしれない。



「つまり、当たって砕けて来いってのか?」

「そうだよ。

 でもシンならそうやすやすとは負けないよね。」



ジオはシン本人よりも自信をもって顔で少しの笑みを浮かべながら言う。



「君たちが彼女に一泡吹かせるのを僕は見たい。

 だからまずは彼女の魔法を暴いてみてよ」



ジオの挑発ともとれる期待に準備を整えた四人は扉の前に立ち顔を後ろのジオに向け自信に満ちた声で言い放つ。



「やってやるよ。」



扉をあけ演習場に入る。木々が生え所々で岩が露出しているなど実戦に限りなく近い地形や環境、単純な戦闘能力ではなく周りの環境をどう使うかも重要なると見える。

そしてそのステージの中央には一人の少女がたっている。



「やっと来たか小僧どもそれでは実戦円中の試験を始める。

 勝利条件は我に一撃入れることじゃ!

 準備は良いか?」



環境も相まってか実戦の緊張感が戻ってくる。

深呼吸をし感覚を研ぎ澄ます。

ジオが審判としてステージの中央に立ち双方を一瞥する。


あとは俺の返事だけ。



「当然!」

「それでは、実戦演習開始!」

試験が始まったが全くエリミアが攻撃してくる動きはない。

ましてや挑発するように指を立てて動かしている。



「こっちから来いってことかよ」

「どうするシン?

 下手に突っ込んでも実力差考えたら相手にならないぞ」



玲央の言う通りだ策を練らなきゃ純粋な戦闘力でつぶされる。

ジオとの条件、エリミアの魔法を暴くためにはまずある程度戦闘を長引かせなくてはならない。


「それならまずはこれだろ!」



地面を抉り土を空中に投げ飛ばし走り出す。



再構築(リクリエイション)!」



シンは飛び出し空に浮く土と地面に魔法を使用し刃へと変換した。

空と陸の刃でエリミアを襲う。



「遠距離を二段構えで繰り出すのは初手の動きとしてはかなりいいけど」



朝陽が言い終えかけたときにシンの刃がエリミアに迫ったがそれをエリミアは難なく魔法で生成した水晶で覆った杖で受け魔法攻撃を基本魔法で相殺した。



「魔法職相手に単純な魔法での接近は弱い7点。

 甘いな小僧見込み違いじゃったか?」



がっかりしたような声と見下した目でシンの一連の行動をしたエリミアは少し悲しげな表情を浮かべたまま杖を持たない右手で反撃のための魔法を構えた。


嫌まだ読み通りの行動だ。



「すぐ油断とは甘いのはそっちなんじゃねえのかっ!」

「っこれは⁉」



シンの周りに相殺されたん魔法の粒子が集まりシンが顔を上げた瞬間一気に周囲が吹き飛んだ。



「まさかあれって⁉」



朝陽は記憶に鮮明に残っている技。

シフナスの骸の竜巻の再現に驚きを隠せない。

驚きの中爆発の中からシンが戻ってくる。



「牽制程度の一撃だけどどうだ?」



至近距離の一撃だったとしても攻撃が通っているとは決して想像しない。

シンは魔力探知を解かず警戒したまま後退する。



「手応えあったかシン」

「んにゃ全く。

 まずちゃんと当たったかすら疑わしいな」

「そもそもあの人自分で防ごうとしてた?」



全員で情報やらを整理する暇はない。

そう告げるが如く煙の中から槍がシンと朝陽の間を取り抜けた。



「「ひぇっ」」

「なになになに?すっごい速さで飛んできたけど?」

「あの女…まさかのゴリラタイプだったか」

「まじめな顔して何言ってだ」



今飛んできたのは、槍か?

それも銅で創られたものだ。

かなりの速度で飛んできたな筋力の増強、それとも金属系統の創生かどちらにせよ今の威力的にモロに当たればアウトだな。


顔面すれすれに槍がかすっても冗談を言うシンは飛んできた槍の方を見やるとそのやりがどこにもないこ

とに気づきすぐにエリミアの方へ視線を戻す。



賢神の指先(ノウス・フェリクス)

 ふっ、ずいぶん派手な牽制じゃな小僧。

 想像以上じゃな」



シンが目にしたエリミアは20程の銅像の中心で3メートルはある銅像の肩に乗っていた。

なるほどゴリラを召喚するタイプか。



「そっちこそ、ずいぶん派手な騎士たちなんじゃねえの」

「シンあれってまさか」

「まあ召喚系だよな。

 朝陽的にはどう思う?」

「僕も召喚系の類だとは思うよ。

 でもジオがこの戦いでの課題にした魔法、ただの召喚じゃないよね」



あの数を一気に召喚したのか。

見た感じに20体はいる。

魔法発動のがバグってんな最初の俺の剣顔すれすれでも防げてたんじゃないか?

今わかる情報だけで判断するならただの召喚系だ。

歩兵が10体、魔法兵5体、本を持った魔法兵、槍と盾持ちの巨兵、石板を持った兵がいる。



「さて貴様たちはどれほど耐えて折れるのか見せてもらおう。

 行け兵士共」



エリミアの一声で命を宿したかのように一斉にシン達へ向かい出す。



「みんな来るぞ!」

「俺は歩兵をやる。

 朝陽と玲央で奥の槍兵を頼む。」

「俺は何すりゃいいんだ?」

「豊は積極的に魔法兵を潰してくれ。」



大まかな役割の分担を済ませ各々がターゲットに向かっていく。

その様子を高みの見物決め込んでいるエリミアを一瞥しシンは疑問を抱えながら歩兵を迎え撃つ。


一体一体は大して強くはないでもさっきからこいつらに核が見当たらない。

基本術者によって創られたゴーレムや召喚獣は体の一部に核を内包している。

だがこいつらにはその核が見当たらない。



「まあ核潰してねえからそりゃ起き上がるか…」



核を潰すまたは術者の魔力が切れなければ召喚獣は死なない。

このまま核を見つけられなければじり貧でこっちがやられる。


玲央たちの方に目をやればあちらも同じくいくら攻撃を与えても倒れるどころか怯みすらしない槍兵に苦戦を強いられていた。



「玲央一回退こう策がないのに戦り合っても負けるのはこっちだ」



朝陽は一度玲央を槍兵から離し立て直しを図ろうと声をかける。

槍兵は玲央を追わず自身の槍と盾を修復しだす。



「なんか見てて分からないか朝陽?」

「なんとなく感じたことなんだけどアイツ、少しでも武器が傷ついたら修復してるんだよね。」



先ほどから攻撃が楯や槍にはじかれることは多くありそれによる武器の損傷があちらには見られた。

だが、即座に損傷した武器を修復している。



「あの武器に何かあるんじゃないのかな?」

「できればそれは豊にも共有して欲しいな!」



シンが二人に合流し背中合わせで互いの敵を見る。



「豊が魔法兵をやってくれてる分こっちはかなり楽に立ち回れてはいるんだけどな。」



やはり手ごたえを感じない。

玲央たちの相手にしている槍兵とは違いこっちの歩兵にあからさまに何かを示すそぶりは見られない。



「いちいち考えてもめんどくせえな。

 一旦全部吹き飛ばすぞ玲央。」

「それでも立ち上がってきたらますます頭が痛くなるな。」



シンは敵をいなしながらしびれを切らしたのか単純に切れたのか大胆な策を出した。



「バフかけるよ二人とも」



朝陽のバフを受け取ると玲央は『付与(エンチャント)』を使用し空に舞い上がる。

玲央が魔力をため始めたことを察知したのか魔法兵が照準を豊ではなく玲央に変え始めた。



「エリミアが支持していないのにターゲットを変えた?豊、玲央を守れ!」

「よくわからんけど了解!」



基本の召喚魔法なら手をかざすなりなんなりのエリミアの支持ありきで動くはずだろ。

自立して動くのならこいつ等は召喚魔法の域を出ている。



「考えても仕方ねえか。来いよがらくたども打ち上げてやるよ付与 世写の四肢(ウィガール)



剣を一度地面に刺しスフナス戦で見せた付与で四肢を覆う。



「ほう。あの付与、中々に良い使い方をしておるな」



シンは歩兵たちの攻撃を捌きながら足への反撃をし体制を崩していく。


後六体、玲央のチャージももうそろそろ溜まるはずだ。

なら少し強引にでも全員打ち上げるしかないか。

大きく飛び上がり腕の照準を歩兵たちに合わせ狙いを定める。



「捕縛」



瞬間シンの拳骨から再構築によって作り出された縄のような物が射出され歩兵たちに巻き付く



「そおらよっ!」



背負い投げのように大きく振りかぶって捕縛した歩兵たちを叩きつけ、さらに捕縛状態のまま回転をし遠心力を利用し玲央の方に投げ飛ばす。


「お前もとんでけ」



すかさず朝陽一人でさばいている槍兵まで駆け足を崩しアッパーカットで打ち上げる。



「握りつぶせ再構築」



地面から追い打ちのようにシンの魔法がエリミアの兵隊を襲い包み込む。

どれだけあがいてもその拘束からは抜けられない。



「朝陽今だやれ!」

「詠唱完了してるよ!

 凍て刺せヴェルドラード!」



詠唱を完了させた朝陽の魔法がシンの魔法により捕縛されている兵たちを凍て貫いた。



「ベストタイミングだぜシン。

 凍て燃えろ 氷の恒星!」



玲央が炎をまとった流星となりシンと朝陽の作り出した氷星に落ちていく。

凍結された身を瞬時にそれを凌駕する炎が焼き焦がす。



「あいつらに感覚があるとは思えないけど破壊力は十分なはずだ。」



でも槍兵はまだだな。

あれで壊れんなら初手の俺の一撃で傷ついてる。



「シン、落ちてくるよ!」

「おっとあぶな!」



ある程度数は減らせたのか?

いや歩兵以外が生き残っている。

なるほどな防御面で歩兵に並ぶか劣る本持と石板持ちの兵が倒せてないのは槍兵が守ったのか。


落ちてきた兵は歩兵、魔法兵が消滅していたが他三体は生き残っていた。

槍兵の胴体には少しの傷と焦げ跡が残るものの本持と石板持ちの兵には損傷は見られなかった。



「いつまで傍観してるんだエリミア。

 あんたも戦えるんだろなんで戦おうとしない」

「まだ我と直接やるにまでお主らは力を示せておらん。

 まずは我の兵を倒してみてからじゃな」



答えを知っていたシンははいはいと聞き流し槍兵へ目をやる。


こいつらに感じる違和感がまた増えた。

さっきまで何度倒しても再生をし続けた歩兵たちがあの一撃では再生しなくなった。

この原因としては倒し方の違いだな一気に倒すことが条件だったんだろ。

次だ、今見ていて気付いたが槍兵の損傷がおかしい。

奴らは武器も体と同様銅で創造されているはず、ならなぜあの攻撃を受けて体は傷ついてあいつらの武器は何一つ傷がない。



「なんか引っかかるんだよな」

「ねえシンさっき言えてなかったんだけどさ、僕と玲央が槍兵と戦ってるとき魔法で援護してたんだけどさ。

楯で防がれるって寄りは魔法を弾いてるように見えたんだよね」

「そうだな。それは俺も感じたよ楯に特殊な魔法式でも決まれてるんじゃないのか」



魔法無効の魔法式かかなり厄介だな。

でも確かめたいのはそれじゃない。

世写の四肢で出せる最高火力で試す。



「豊、玲央、次は俺がやる、

 槍兵以外の二体を抑えておいてくれ」

「合点!」

「一人で大丈夫か?」

「問題ないそれにこれに関しては多分一人でやった方が成功率高いしな。

 朝陽は本持のやつに魔法を使わせないようにしてくれ」

「りょーかい任された」



豊と玲央に槍兵以外の妨害を任せ、朝陽には魔法による魔法の妨害を指示した。

作戦を伝えている内にも槍兵の傷が修復されて行っていた。


焦げ跡が消えていっている。

破壊されいていなくても自動的に修復は行われていくのか。



「行くぞ!」



シン合図で各々が走り出す。

槍兵は楯を構え、本持ち兵は魔法を唱えだす。

石板落ちの兵は手を地面に置き周囲の地形を変形させ始めた。


さて槍兵、お前が一番試しやすいって理由で選んだけど完全な隙を作るにはどうするべきか。

構えはしっかりとしていて腰も入っている…切り崩していくか。


シンは相手に隙が見当たらないことを察し切り崩そうと距離を詰め始める。

槍を投げを刺せないように魔法を使いながら近づいていくが、朝陽の予想の通りすべて楯によって弾かれた。



「やっぱ魔法弾けるのかあれ。

 槍の方にも何かしら魔法式が刻まれてるのか?」



槍への警戒心を少し高めながら互いの間合いまで接近すると大ぶりの槍の薙ぎ払いが飛んできた。

うまく体をのけぞらせ槍兵の攻撃を避けたのちその体制のまま身をひねり槍兵の顔面にけりを入れる。


あぶねえ普通に殺す気なの試験としておかしいだろ。

それに攻撃を入れた感じかなりの防御力を持ってるなアイツ蹴り入れたときの感触が歩兵とはけた違いだった。

まともにやりあって勝つのは時間がかかりそうだな。

でも一撃のための隙を作るのには問題ない。


シンはすかさず槍兵との距離を潰し体制を立て直す前に猛攻撃でダメージを与える。

槍兵の武器の持ち手を掴み地面から伸ばした再構築の縄で縛りあげる。



「まずは体」



シンの一撃が槍兵の鳩尾を捕らえ見事に打ち抜く。

槍兵の体は腹部に穴があき体を保てなくなったことで崩れ落ちた。

だが少しすると槍兵の体は再び作られ何事もなかったかのように立ち上がった。


やっぱな、今の攻撃は楯で防げば自分の身は守れたはずだなのにアイツは体で受けた。

武器の破壊を拒絶しているとしか見れない・

この結果はわかっていた。

単なる破壊が倒すための条件ならば俺があいつらの武器に感じた違和感は意味を失ってしまう。

奴らの損傷の修復が武器に対してだけ異様に早いことが関係があるのなら次に狙うべきは楯と槍の同時破壊だ。


再生しきった槍兵にすかさず攻撃を打ち込むが楯に防がれた。


歩兵より再生速度が速い…そこは個体差があるのかまあいい。問題は武器二つをどうやって同時破壊するかだ。

武器の破壊がこいつらを倒す条件って仮定があってるとしてもまだエリミアの魔法の本質の理解には少しも届いていない。


玲央と豊、朝陽たちも破壊はできているが消滅させられてはいない。

シンも槍兵の攻撃を受けながら積極的に武器の破壊を狙うも一歩届かず体に誘導される。



「そろそろ十分か」



シンが槍兵へ手を向けると槍兵の体の中からあふれ出した粒子が地面に突き刺さり槍兵を固定する。

槍兵は粒子の槍がありとあらゆる関節部から生え身動きが取れなくなる。



「やっと好き放題できるようになったな」



いつ拘束をやぶるか破るかわからないしとりあえず武器の破壊しとくか。

色々見たいんだけどな。

まあそこはまた見せてもらうか。


ガタガタともがきながら拘束を解こうとする槍兵にさらに拘束を強めながら武器を腕ごと切り落として奪い拳を振り落とし破壊する。

槍と盾を破壊された槍兵は動きが徐々に弱弱しくなり完全に動かなくなった後砕けて消えた。



「やっぱり武器が本体かよ。

 お前ら武器だ!

 武器の破壊でこいつらは倒せる」

「なるほど道理で一生再生するわけだ」



倒し方がわかれば槍兵よりはるかに弱い残り二体はもすぐに倒された。

兵がすべて倒されたエリミアはいつ間にか始めていたティータイムを止めこちらに近づいてくる。



「よくぞ倒した小僧たちよ思ったより早かったの!

 それで我の魔法はわかったか?」

「なんであんたがそれしってるんだ?

 ジオが俺たちに私か課題だろそれ」

「お主たちより前に挑んだ小娘たちも同じ課題じゃったからな。

 まあ、あ奴らはあてられなかったが」



エリミアの魔法がなんなのか、銅像の召喚。

それだけではありえない点が多いのでそれはなし。

なーんか引っかかるんだよな魔法を弾く楯、高度な魔術書、自立する銅像…は多分石板持ちの兵の能力だろう。



「…エリミアこの国には独自の神がいたよな」

「そうじゃな大国ならば独自に進行する神がおるものじゃ」

「じゃあ次の質問だ。

 この国の神に槍と盾を使う知恵の神はいるか?」

「ああおるな」

「名前は?」

「ミネルヴァじゃ」



やっぱりな以前ファナドスについての歴史を調べているときやけに神に関する解説が多いと思った。

知ったところでだしあまり詳しく読んでなかったが、覚えておこうと思ったところはあった。

たしか、



「上位貴族は神の現身、あのお方たちのお力さえあれば我らの勝利は遠くない。

 だったか?この国の上位貴族は神と何か関係あるんしゃないか?」

「つまりはどうゆうこと?」

「エリミアさんの魔法はこの国の神関係するものってことだよ豊」

「してシンよ貴様はどのような魔法だと考える」



神に関連する魔法、あの召喚魔法のどこが神に関連するかって言ったらやっぱりあの武器だろうな。

そう考えたら。



「神の権能を持つ兵の召喚、とか?」



わけのわからん心を読んでくる力も権能ことなら得心が行く。

なにより俺はあの鎧兵たちの特徴に少し心当たりがある。



「中々いい推測じゃな。

 じゃが80点じゃ」

「えーめちゃくちゃ筋通ってたしあたりだろ!」

「落ち着こう豊僕から見てもあの兵には歪なところが多かったし兵は関係なしに神の権能を使えるものなんじゃないかな」

「ほう槍の小僧なかなかに良いと頭じゃなそれが正解じゃ」



なるほどな銅像の兵が権能を使えてたのは魔法の転用だったのか…腑に落ちた。

それにしても俺が図書館で本を調べてなかったら無理だったんじゃないか?

いやそこまで読んでのこの条件か。



「では正解した褒美にさらに上の魔法を見せてやろう。

 定員は一人じゃ。

「魔法の上の世界」

「見たいなら行って来いよシン」

「いいのか?」

「俺は多分わかんないしな」

「僕も基礎の使い方からうまくなりたいから今見るとね」



シンの高揚を察したのか三人はエリミアの魔法を見る権利をどうぞどうぞとシンに譲る。

三人の気持ちをくみシンはエリミアに歩み寄る



「それじゃあ頼む」

「よかろう」



エリミアは杖で地面を小突く。

すると杖の先から透明な球体が広がり俺とエリミアを包み込んだ。


「なんだこれもしかして結界か?」

「その通りよく勉強しておるな。

 そもそも結界とは生跡魔法を刻んだ己の世界をこちらの世界に連れてくることじゃ。

 それにより魔法の精度、そして威力が上昇する」



本職この学園の理事長なだけある。

わかりやすい説明で結界の原理を開設しながらエリミアはさらに結界を発動させていく。



「そして面白いことにこの結界は重複させることができる。

 結界一枚で魔法の威力はおよそ一割増幅する。

 ならこの結界を十枚重ねればどうなるか」

「この世界とは別の、発動者の魔法の世界が顕現し外部からの侵入は不可能になる」

「正解じゃ。

 外から見ればただの白い球体。

 しかいその中には発動者の世界が広がる」



一通りの説明とともに結界をすべて張り終えたエリミアは結果の壁を杖で小突いた。

叩かれた結界の壁はひびが広がり白い破片を散らしながら決壊する。

結界が壊れ元の演習場が広がるはずだった景色には別にの景色が広がっていた。



「これが結界魔法の果て…」



神殿のような建物に無限にあるのではないかとまで思わせる甲冑をつけた像、そしてその奥にそびえたつ楯と槍を持った女性の像。

圧倒的な景色に気圧されたシンはまさに開いた口がふさがらなくなっていた。

未だ異世界には慣れていないがそれを軽く凌駕するほどの空間。

たしかにあり得ない空間ではないがこの世界には不思議と不完全という感覚がする。

興奮を抑えきれずにシンはエリミアにあれもこれも聞こうとしたが彼女の眼差しを見ると口を閉じた。



「どうしたんだエリミア」

「ここならだれにも聞かれないと思ってな。

 シン、お前に頼みたいことがある」



いつの間にか貴様からお前呼びになっていることが気にしつつ雰囲気の変わったエリミアにこちらも気を正される。



「頼み?」

「ああ貴様が指名手配で追われていることは知っている」

「⁉」

「身構えるな指名手配犯になったから貴様を知り貴様をここに呼んだのだ。

 気づいているのだろうこの国に」

「…」

「だからこそ実力を見てそして頼みたかったのだ。

 シン、頼むこの国の王を…

 ファグナを止めてくれ。」

生跡魔法

・賢神の指先 ファナドスに存在する独自の神の権能を自身に降ろす

‣読心の権能 他者の心の声が聞こえる

‣賢冠の権能 頭の上にオリーブの冠が表れる

       魔力探知が常時発動になる

‣鋭槍の権能 特殊な槍を創り出す

       槍は手放しても瞬時に戻ってくる

       魔力防御を少し貫通

‣反魔の権能 魔法を無効化する楯を創り出す

       魔法の対象が空間などの場合は効果なし



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