1-27-1【Between Doubt and Destiny】
教室はさらに静まり返り、空気はほんのりと温まっていた。しかし、ベルはまだ硬直したままの姿勢で腰掛け、その膝上に置かれた手はスカートの端をわずかにいじっている。ベアトリスはしばらく彼女を見つめ、柔らかな表情を浮かべてから口を開いた。
「ベル、あなたはいつかセレナストラ――セインツ・スカラーたちが多く集う場所に行くと思う?」ベアトリスは優しく問いかける。「大半のセインツ・スカラーはあそこへ行って、聖人たちのもとで働くのでしょう? もしかすると…ポンティフェクス・ルミナ様のもとへも?」
ベルの指先が動きを止める。スカートの生地が指先に軽く皺を作った。視線を伏せ、しばらくの沈黙の後、控えめな声で答える。「…わからないの。彼らは次に何があるかなんて教えてくれなかった。手紙にも、どこへ行くとか、何をするのか、一切書いてなかった。ただ『選ばれた』ってだけ。」
メイは小首をかしげ、その黒い瞳に好奇心を浮かべる。「ほう、それだけなのかえ? 式典もなしとは妙な話じゃな。あれほど格調高い称号なら、もっと派手な祝いがあってもよさそうなものを……結局、手紙一通で済んだというわけなのじゃな?」
ベルは首を振り、再び指先をもぞもぞと動かす。「そう、ただの手紙。それを孤児院で渡されただけなの。」そして、声をさらに落とす。「他のみんなは、この称号の意味を私よりも分かっている気がする…。」
ベアトリスは考えるように首をかしげる。「ただの手紙、ね。もしかしたら、それこそが狙いなのかも。手紙は称号を祝福するためじゃなくて、『さあ、あなたの番です』って言うための始まりなのよ。セインツ・スカラーたちは、受け取った後に初めて喜ぶの。手紙自体はあくまできっかけで、それを活かすのは本人次第。」
ベアトリスはベルに優しい笑みを向ける。「だから簡素なのよ。与えられるものが全てじゃない。大切なのは、そこからあなたが何をするか、なの。」
メイはしばし沈黙し、扇子を唇に軽く当てたまま考え込む。そして、いつもの鋭さを和らげた声で尋ねた。「わらわも聖人たちについては聞いたことがある。彼らは各国を渡り歩き、信仰を広め、時に国同士の仲裁をする者たちなのじゃろう? では、セインツ・スカラーは具体的に何をする存在なのじゃ?」
ベアトリスはメイに向き直り、少し目を輝かせる。「そう、イリ・クイ・ルーセント――いわゆる十二聖人たちは、知恵や希望、慈悲などの徳を象徴し、各国間の問題を調停したり、飢饉や戦乱に苦しむ地に救いの手を差し伸べたりする存在なの。彼らは信仰が生きている証みたいなものね。そしてセインツ・スカラーは…必ずしも教会に属するわけじゃない。むしろ世間へと飛び込み、聖人の理想を社会に体現する役目を担うの。」
メイは目を細める。「つまり、ベルは教会に縛られるわけではないのじゃな? では具体的に何をするのじゃ?」




