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お嬢様には絶対に言わないで  作者: renten
ACT 1
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1-24-1【Intersecting Shadows】

エドワードは教室の窓から草地へと軽やかに降り立った。姿勢を正し、素早く周囲を確認する。その動きには一切の無駄がなく、脱出が誰にも気づかれていないことを確認すると、彼の鋭い視線は少し先にある一本の大木に向けられた。


太くたくましい枝を広げたその木は、絶好の隠れ場所となり得る。エドワードは迷うことなく木陰に滑り込むと、熟練の動作で登り始めた。わずか数秒で、葉に覆われた上部へと到達する。そこからは、教室棟へと続く小道を見渡せる位置を確保した。地上にいる生徒たちには、もちろんその姿は見えない。


太い枝に腰を下ろし、木の幹にもたれるようにしてエドワードは足を組んだ。ここが立ち入り禁止区域であることなど、彼の落ち着き払った態度からは微塵も感じ取れない。鋭い視線が庭をさまよい、やがて馴染み深い姿に止まった。


ベアトリスだ。


日光が彼女の柔らかな顔立ちを照らし、まるで神々しい後光を纏ったかのようだった。エドワードの口元がわずかに緩む。その表情は一瞬だけ穏やかなものに変わったが、すぐにいつものいたずらっぽい笑みに戻る。彼は彼女のささいな表情の変化さえ見逃さない――ほんの一瞬の微笑み、眉間の小さな皺、そして最後には決意に満ちたその顔つき。


まるで彼女に語りかけるかのように、彼はそっと呟いた。「安心してくれ、お嬢様。花と話したり、一人で会話の練習をする日々は今日で終わる。」


その瞳には、長年の付き合いで培われた親しみと、彼女をよく知る者に特有の確信が輝いていた。


ベアトリスが歩みを進めると、彼の視線はその背後に移る。小さなグループが小道で足を止め、彼女の存在に視線を奪われていた。少女たちはひそひそと囁き合い、その目には明らかな憧れの色があった。一人の少年は無言で立ち尽くし、その視線は敬意と静かな驚きで満たされている。


「なんて優雅なんだろう……」少女の一人が、わずかに耳に届く程度の声で呟いた。


「僕たちのことなんて目にも入らないのかな?」少年が恐る恐る尋ねた。その声には、尊敬と控えめな好奇心が入り混じっている。


エドワードの笑みが深まり、その瞳には誇らしげな輝きが宿った。彼は軽く頷き、静かに、しかし確固たる自信を持って呟いた。「そうだ――俺のお嬢様だ。」


枝にもたれながら腕を組む彼の姿は、まるで葉の間から微風に溶け込んでいるかのようだった。彼の視線は再びベアトリスに戻り、次に起こる出来事を思案するかのように鋭さを増していた。


ベアトリスの姿が視界から消えると、エドワードはまた別の人物を探し始める。その名はベル――彼女の姿を捉えるまでの静寂は、風に揺れる葉音だけが支配していた。


ついに、その時が来た。


ベルが現れる。一人きりで、教室棟へと続く石畳の小道を歩いていた。彼女の足取りはしっかりしているものの、どこか重たげで、目には見えない何かを背負っているようだった。エドワードは体を僅かに前に乗り出し、目を細めて彼女を観察する。


ベルの前方には、アーチ状の入口付近でたむろする少女たちのグループがいた。彼女たちの笑い声は高く無邪気なものだったが、ベルが近づくと、その視線は彼女に向けられ、表情が変わった。最初の軽い興味から、次第に冷ややかな好奇心と軽蔑の入り混じったものへと変化していく。


リーダー格の少女は、複雑に編み込まれた暗い髪を揺らしながら、ベルの進路を塞ぐように一歩前へ出た。その口元には冷笑が浮かび、その声は侮蔑に満ちていた。


「まあ、まあ。誰かと思えば。」


ベルは視線を前に固定したまま、歩みを止めない。相手を無視することで応じていた。


「挨拶くらいしてくれないの?」編み込み髪の少女が挑発的に続ける。さらに歩を進め、ベルの行く手を完全に塞いだ。他の少女たちは緩やかに円を描きながらベルを囲み、その存在感が圧力となって彼女を追い詰めた。「私たち貴族を説教しようとした、あの大胆な聖徒奨学生(セイント・スカラー)さんはどこ行ったの?」


木の上でそれを見守るエドワードの表情は、一見落ち着いているようだった。脚を組み、幹にもたれるようにしてリラックスしているように見える。しかし、その瞳には鋭い光が宿り、下で起こるすべての出来事を細部まで逃さずに観察していた。


ベルは何も答えない。その沈黙は長く続き、少女たちの苛立ちを煽るだけだった。


「どうしたの?言葉を失っちゃった?」別の少女が嘲るように言った。太陽の光を浴びた赤みがかった巻き毛が輝き、首を傾けたその仕草には皮肉たっぷりの好奇心が漂っていた。


編み込み髪の少女の視線がベルの胸元に止まり、そこに付けられたブローチへと向かった。その笑みがさらに歪み、残酷さを増す。


「それ、まだつける資格があるとでも思ってるの?」彼女は冷たく言い放った。「学院を恥さらしにした癖に。」


ベルのスカートを握る手がわずかに震えた。しかし、彼女は口を閉ざしたままで頭を下げ続けた。


「いいわ、手を貸してあげる。」少女はそう言うと、素早くベルの制服からブローチを引きちぎった。布が裂ける音が辺りに響く。磨かれた石は光を反射し、少女の手の中で冷たく輝いた。


「セインツ・スカラー?冗談じゃないわ。」 彼女は吐き捨てるように言い、そのブローチを手のひらから放り投げた。


カラン――。ブローチは石畳にぶつかり、音を立てながら転がり、やがて土の上で静止した。


ベルの視線が一瞬その方向に向く。その表情は読み取れない。彼女は動くことなく、腕をだらりと下げたまま立ち尽くしていた。地面に転がるブローチの微かな輝きが、この瞬間の重さを象徴するかのようだった。しかし、ベルはそれを拾おうとする素振りさえ見せなかった。


エドワードは、ベルの歩みが再開されるのを無言で見つめた。その足取りには抵抗の意志は見えない。ただの屈服だ、と彼は感じた。


少女たちは笑い声を響かせながら散っていった。エドワードは木にもたれたまま、転がったままのブローチに視線を向けた。その指が幹を軽く叩く音が響き、彼の表情は次第に鋭さを増していく。


「さて、どうするかな……。」彼は静かに呟いた。

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