1-22-1【Behind the Game】
エドワードは影の多い小道を跳ねるように進みながら、早い午後の空気が顔をかすめるのを感じていた。頭上で葉が揺れる微かな音が、彼のブーツが地面を打つ規則的な音と混ざり合う。鋭い視線を背後に向けると、見えるのは静まり返った小道だけだった。
「奴ら、引き返したな。」
静かだがどこか楽しげな声がその場を切り裂いた。
エドワードは瞬時に前を向き直した。勢いをつけたまま足を止めた彼のブーツが小石を擦る音を立てる。体全体が張り詰めたバネのように構えたエドワードの目の前に、レンがまるで空気から現れたかのように姿を現した。斜めに差し込む陽の光が、レンの静かな立ち姿を照らしていた。
「急に現れるな。」エドワードは鋭く言いながら、袖を払う仕草でその緊張を隠そうとした。口元にはわずかに皮肉めいた笑みが浮かぶ。「知り合いにそっくりだな、そういうの。」
レンの表情は変わらないままだったが、その手に握られたウイスキーボトルを少しだけ強く握り締めた。彼の中性的な顔立ちは、斜陽を浴びてどこか非現実的な雰囲気を漂わせていた。
「次は、こんなことに巻き込むのはやめろ。」レンは淡々とした口調で言い、手にしたボトルを軽く持ち上げながらその不満を示した。
エドワードは眉を上げ、皮肉を込めた笑みをさらに深めた。「ずっと見ていたなら、手を貸すくらいしてもよかったんじゃないか?」
レンの冷静な表情がわずかに崩れ、苛立ちが一瞬顔をよぎった。「なんでわざわざ助ける必要がある?」その声には明らかに呆れた響きが含まれていた。「お前が勝手に巻き込んだくせに。」
エドワードは笑みを浮かべたまま、少し真剣な口調で答えた。「今は相棒だろ?」
レンは長いため息をつき、肩の力を抜いた。その態度は、エドワードの言葉に諦めたようにも見えた。「ほら。」そう言いながら、手にしたボトルをエドワードに差し出した。「こんなもの、持っていたくないんだ。」
エドワードは歩きながら軽く手を振り、それを断った。「お前が持っておけ。」
レンは意外そうに目を瞬かせ、すぐに足を早めてエドワードに追いついた。「待て、こんなもの押し付けるな!」彼の声には、心底困ったような調子が混じっていた。
「飲むなり捨てるなり、好きにしろ。」エドワードは冷静に答えながらも、周囲の庭を注意深く見回した。整えられた生け垣や鮮やかな花壇、ところどころに並ぶ大理石の彫像が平穏な雰囲気を醸し出している一方で、二人の間に漂う緊張感とは対照的だった。
レンはエドワードに合わせて足を速めながら言った。「あいつが、俺がこのボトルを持ってた時の顔を見ただろ?今にも殺されそうだったんだぞ。」その声には、どこか本気の恐怖が滲んでいた。




