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教室の扉が軋みながら開き、一人の少女が中に入ってきた。その小柄な体とためらいがちな動きは、瞬く間に注目を集めた。制服は整っていたが、裾近くにはかすかな皺があり、ブレザーのほつれた部分をぎゅっと握りしめて隠していた。それは、ブローチが引きちぎられた後に残された傷跡だった。
「セインツ・スカラーではありませんか」
微かな囁き声が教室内に漂った。
ベルの赤く縁取られた目は教室中を不安げにさまよい、視線を一人ひとりの顔に移した後、ゆっくりと床に落ちた。好奇心や無関心の視線が、鋭い刃のように彼女を押しつぶしていく。
ささやき声はすぐに広がり始めた。小さくとも鋭く、静かな水面に波紋を描くように広がっていく。
「あの子、どうしたんだ?なんだか……ボロボロだな。」
「信じられないわ。本気であのスピーチをしたのかしら。」
その声の出どころははっきりせず、貴族だろうと平民だろうと関係なく、教室全体に冷たい判断が漂っていた。
ベルは唇の内側を噛みながら、何とか足を一歩踏み出した。そして、もう一歩。動きは遅く、どこかぎこちない。下の列に目を向け、自分の名前を探し始めた。
最上段から、ベアトリスは少し身を乗り出し、眉をひそめた。彼女はすぐにその少女を認識した――ベル。セインツ・スカラー。今朝会ったばかりの少女だ。
ベアトリスの胸が締め付けられるようだった。教師棟へ案内したときの、あの好奇心旺盛で意志の強そうなベルの面影はどこにもなかった。肩をすぼめ、目の輝きを失い、ためらいがちな足取りで進む彼女の姿を見るのは痛々しかった。
ベアトリスは口を開きかけたが、何を言えばいいのかわからず、声を飲み込んだ。
隣では、扇子を持つ少女が首を少し傾け、鋭い目でベルの動きを追った。扇子が静かに開かれた。彼女の表情は相変わらず冷静で、何を考えているのか読み取ることはできなかった。
ベルは前列の机の間を歩き、自分の名前を探していった。通り過ぎるとき、裕福な平民の少女が椅子に深くもたれながら低い笑い声を漏らした。手を額に当てて首をゆっくりと振り、その笑みをさらに深めた。その表情には、面白がるような憐れみが混ざっていた。
「やっぱりな。」少女は小さな声でつぶやいた。その声には、どこか諦めたような確信がにじんでいた。「思った通りだ。」
ベルの顔が熱くなったが、彼女は一歩ずつ前に進み、ついに二列目にたどり着いた。
三列目に差し掛かると、ベルは震える手でスカートの生地を掴み、視線を上げた。そこには、まるで磨き上げられた彫像のように貴族たちが並んで座っており、そのブローチが天井の光を反射して微かに輝いていた。
ベルの胃がぎゅっと縮み上がる。自分の席があそこにあるはずがない。
鼓動が早くなるのを感じながら、彼女は三列目の階段を一歩ずつ登り始めた。奇跡を祈るように目を机に走らせ、自分の名前を必死に探した。
机に手が届くかというところで、鋭い声が静寂を切り裂いた。
「迷子になったのかしら?」
茶髪の少女が椅子にゆったりと寄りかかりながら言った。ブローチが光を受けて輝く中、彼女は口元に薄い笑みを浮かべた。
「最初の二列に名前がないなら、ここはあなたのいる場所ではありませんわね」
彼女の言葉に、近くに座る貴族の一人が手袋の中に笑いを隠しながらクスリと笑った。その音を皮切りに、小さな笑い声がいくつも続き、どれも控えめながら刺々しい。
これがあなたの席です、ベル――と言いたい声が突然響いた。
「ベル!」
その声は澄んで力強く響き渡り、ざわめきを一瞬で鎮めた。
教室全体が静まり返り、すべての視線がベアトリスに向けられた。彼女は背筋をまっすぐ伸ばし、落ち着いた立ち姿を見せていた。その表情は毅然としていながらも温かく、隣の空席を指し示す手に迷いはなかった。
「ここがあなたの席です。」
ベアトリスの声は安定していて、まるでこの瞬間が特別なものではないかのように自然だった。
ベルの大きな瞳がベアトリスを捉え、呼吸が詰まるのを感じた。彼女はしばらくその場で動けなかった。驚きと信じられない気持ちが交錯し、まるで体が縛り付けられたかのようだった。今朝出会ったあの少女――優しく、励ましの言葉をくれた彼女が、再び自分を呼びかけてくれるなんて。その声は彼女の笑顔と同じくらい温かく、招くような響きがあった。
ベルの視線はベアトリスの隣の机に落ちた。そこには、折り畳まれた紙に彼女の名前がはっきりと記されていた。脈が早く打ち始める。そうだ、自分の席はここにあるに決まっている――そう頭ではわかっていた。それでも、胸の中に疑念が湧き上がる。どうして自分が、こんな場所に、貴族たちと同じ列に、そしてベアトリスの隣に座る資格があるだろうか?
だが、ベアトリスの優しく揺るがない表情が、ベルに一歩を踏み出す勇気を与えた。ベルはゆっくりと前に進み、最後の数段を登りきってその席に腰を下ろした。
「ありがとうございます……」
ベルは小さな声で囁いた。その声には安堵の重みがこもっていた。
ベアトリスは柔らかな笑みを浮かべながら答えた。
「気にしないでください」
隣では、扇子を手にした少女が静かな音を立てて扇子を閉じた。その表情は変わらず冷静なままだった。彼女は二人を一瞥し、再び視線を教室全体に戻した。その落ち着きは、まったく乱れていなかった。
ベルは手を膝の上でしっかりと組み、うつむいたまま座っていた。教室内の会話のざわめきが徐々に戻り始める中、ベルの心臓はまだ速く脈打っていた。それでも、胸の奥にかすかな暖かさが広がるのを感じた。
ベアトリスの笑顔――今朝彼女が見せてくれたのと同じ、優しく安心させてくれる笑顔が、ベルの不安の棘を少しずつ和らげていく。それは、ベルがこの扉をくぐってから初めて、ようやく息ができた瞬間だった。




