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お嬢様には絶対に言わないで  作者: renten
ACT 1
52/176

1-18-2

ベアトリスは建物の中心にある壮大な階段をゆっくりと上がっていった。

磨き上げられた石に響く彼女の足音は柔らかく、その一歩一歩が学院の荘厳さを際立たせていた。

その広々とした階段は、精密かつ丁寧に彫られ、学院の威厳を象徴するかのようだった。

周囲では生徒たちが絶え間なく行き交い、その足音と会話が溶け合い、大きな川のようなうねりとなって空間を満たしていた。

まるでその流れが、誰もを目的地へと押し流しているかのようだった。


踊り場にたどり着くと、ベアトリスは一瞬足を止めて周囲の光景を見渡した。

左手には一年生の廊下が広がり、生徒たちが小さなグループを作り、笑い声やお喋りが溢れ出していた。

それはまるで制御不能なメロディーのように空間を満たし、若々しい活気を感じさせていた。


一方、右手の二年生の廊下は妙に静まり返っていた。

今日の活動は一年生のみで、上級生の不在がその廊下を空っぽでどこか忘れ去られた場所のようにしていた。

さらに下階の三年生の教室も同様に静寂に包まれ、その広々とした空間がかえって静けさを強調していた。

この対照的な状況は、学院の壮大な建物を一層広大でどこか孤独に感じさせた。


ベアトリスは視線をもう一度生徒たちに向けた。

彼らはこの世界を自然に渡り歩いているように見えた。

まるで昔から慣れ親しんでいたかのように、会話やグループに溶け込んでいくその様子を見ていると、彼女の胸に軽い緊張が走った。

しかしその表情には一切それが現れず、平静を保っていた。


深く息を吸い込み、スカートの端を軽く整えた彼女は左手の一年生の廊下に足を踏み入れた。

磨き上げられた床と高い窓が活気溢れるその空間を額縁のように囲んでいる。

笑い声や生き生きとした会話が飛び交い、空気はまるで活気に満ちた旋律のようだった。

彼女の手は自然と体の横に添えられ、背筋は伸びていた。

それは考えずとも身についた動作であり、彼女が育まれた環境そのものだった。


開け放たれた教室のドアの前を通り過ぎたとき、ベアトリスの目は反射的に中へ向けられた。

すでに席についている生徒たちの姿があり、彼らの会話が廊下の賑やかさに溶け込んでいた。

入り口付近では貴族の生徒たちが話し込んでおり、光を受けて輝くブローチがそれぞれの家紋を示していた。

その中の一人の少女が彼女に気づき、控えめながらも礼儀正しい微笑を浮かべた。

それは同じ貴族同士の間で交わされる無言の挨拶だった。

ベアトリスもまた、自然にそれに応えた。

その動きは滑らかで、慣れたもので、言葉は必要なかった。


廊下を進むと、壁に寄りかかるようにして立つ生徒たちのグループが目に入った。

彼らの制服は、それぞれさりげなく手が加えられ、富と個性を主張していた。

一人の少年はネクタイをシルクのスカーフに置き換え、その鮮やかな色合いがブレザーの落ち着いたトーンと対照的に目立っていた。

また、別の少女はカフスに繊細な刺繍を施し、その美しい模様が彼女の洗練を物語っていた。

彼らは自由に笑い合い、冗談や話を交わしていた。

ベアトリスが通り過ぎると、彼らの視線が一瞬彼女に向けられ、一人の少年が歪んだ笑みを浮かべた。

彼女はそれに穏やかに微笑を返したが、歩調は崩さなかった。


彼らは本当に違うわね。

彼女の目はそのグループに一瞬留まった。

彼らの動きには自信が満ち、伝統に縛られる貴族のようではなかったが、礼儀の境界線を越えることもなかった。

富裕層の彼らは、中級貴族に匹敵する地位を持ちながら、その自由な雰囲気が独特の手の届かない存在感を与えていた。


ベアトリスの足は廊下を進み続け、通り過ぎるたびに廊下の旋律は変化していくように感じられた。

貴族の生徒たちは教室の近くに集まりがちで、彼らの声は控えめで洗練されており、その動作は計算された優雅さに満ちていた。

一方で、裕福な平民たちは廊下の開けたスペースを占め、より自由な声が空気を満たしていた。

そして、廊下の隅や壁沿いには、質素な服装と控えめな存在感を持つ生徒たちが静かに佇んでいた。

その姿は、特権階級の溶け合うようなこの空間の中でも、どこか外れた存在として浮いていた。


ベアトリスは、目には見えない階層を感じ取っていた。

それは単にブローチや制服のアレンジだけではなく、人々が自分の立ち位置をどのように確保し、どのような言葉を交わすのかによって形作られていた。

貴族たちは控えめな笑みでベアトリスに挨拶を返すものの、それ以上の距離を縮めることはなかった。

一方、平民たちは彼女を好奇心と敬意の入り混じった目で見つめるが、彼女がどこに属しているのかを測りかねているようだった。


彼女自身もまた、自分の居場所がわからなかった。

交わす笑みの一つひとつが反射的な動きに過ぎず、それは誘いではなく礼儀としての行為だった。

貴族の世界では、それぞれの場所が明確に定義されていたが、この学院では境界線は微妙で柔軟だったが、依然として存在していた。

その微妙さが、彼女の長年の訓練をもってしても完全に理解できない世界に彼女を迷わせていた。


廊下を進む彼女に向けられる笑みや視線があったが、それらは一瞬で通り過ぎ、彼女もまたそれに応じるように歩みを止めることなく礼儀正しく返していた。

だが、それはどこか演技めいたものであり、どのように終わらせればいいのか、彼女自身もわかっていなかった。


やがて、彼女は廊下の最奥にたどり着いた。

そこには1-A教室の木製のドアが静かに佇んでいた。

彼女は足を止め、スカートの端に触れて軽く整えた。

そのドアの向こうには、彼女にとって初めての教室が待っていた。

この学院での初日というだけでなく、人生で初めて、同じ年齢の人々と机を並べる時間がそこに待っている。

これまでの彼女の世界は、家庭教師と静寂な個人授業の中に限られていた。


深呼吸を一つして、彼女はドアを押した。

その動きは、彼女がこれまで準備してきたすべてを思い起こさせるような静かで優雅なものだった。

そして、未知の世界への一歩を踏み出した。

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