表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嬢様には絶対に言わないで  作者: renten
ACT 1
4/176

1-1-3

アメリアはベアトリスの前で足を止め、

丁寧に一礼した。


「申し訳ありません、お嬢様。

ノーサム家からの依頼で、

集まりの準備を手伝っておりました。」


ベアトリスは身を乗り出し、

瞳を輝かせた。


「もしかして、お菓子の依頼だった?

きっとアメリアの作るお菓子が、

みんなどうしても欲しかったんでしょ!」


アメリアは控えめに微笑んだ。

「そうかもしれませんね、お嬢様。

私の仕事を評価していただけたのでしょう。」


ベアトリスは満足げに頷いた。

「もちろんよ!

でも、もし依頼があるなら、

事前に教えてほしいわ。


アメリアの才能を

簡単にはシェアできないんだから!」


アメリアは小さな笑い声を漏らし、

ポケットから繊細な箱を取り出した。


彼女はそれを開け、

深い琥珀色の輝きを持つブローチを見せた。


その表面にはカエルウィスク家の紋章――

赤い薔薇二つが中央の白い薔薇を囲むように

絡み合っていた。


アメリアはそれをベアトリスに丁寧に手渡した。

「これは制服用のブローチです、お嬢様。

どうか家の象徴としてお付けください。」


ベアトリスはその繊細なデザインに目を奪われ、

静かに頷きながら、

それをドレスに留めた。


その後、二人は自然と会話を交わし始め、

その親密なやり取りが、

ベアトリスの不安を少しずつ和らげていった。


一方で、少し離れた場所、

屋敷の中から一人の人物がその様子を見守っていた。


レースのカーテンがかかる開いた窓越しに、

影のようなシルエットがティーカップを持ち、

その目はかすかな不満の色を帯びていた。


「アメリアめ…」


その人物は、ほとんど独り言のように呟いた。

その声には微かな苦々しさが含まれており、

アメリアが簡単にベアトリスの信頼と愛情を得ていることが、

まるで個人的な侮辱であるかのようだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ