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アメリアはベアトリスの前で足を止め、
丁寧に一礼した。
「申し訳ありません、お嬢様。
ノーサム家からの依頼で、
集まりの準備を手伝っておりました。」
ベアトリスは身を乗り出し、
瞳を輝かせた。
「もしかして、お菓子の依頼だった?
きっとアメリアの作るお菓子が、
みんなどうしても欲しかったんでしょ!」
アメリアは控えめに微笑んだ。
「そうかもしれませんね、お嬢様。
私の仕事を評価していただけたのでしょう。」
ベアトリスは満足げに頷いた。
「もちろんよ!
でも、もし依頼があるなら、
事前に教えてほしいわ。
アメリアの才能を
簡単にはシェアできないんだから!」
アメリアは小さな笑い声を漏らし、
ポケットから繊細な箱を取り出した。
彼女はそれを開け、
深い琥珀色の輝きを持つブローチを見せた。
その表面にはカエルウィスク家の紋章――
赤い薔薇二つが中央の白い薔薇を囲むように
絡み合っていた。
アメリアはそれをベアトリスに丁寧に手渡した。
「これは制服用のブローチです、お嬢様。
どうか家の象徴としてお付けください。」
ベアトリスはその繊細なデザインに目を奪われ、
静かに頷きながら、
それをドレスに留めた。
その後、二人は自然と会話を交わし始め、
その親密なやり取りが、
ベアトリスの不安を少しずつ和らげていった。
一方で、少し離れた場所、
屋敷の中から一人の人物がその様子を見守っていた。
レースのカーテンがかかる開いた窓越しに、
影のようなシルエットがティーカップを持ち、
その目はかすかな不満の色を帯びていた。
「アメリアめ…」
その人物は、ほとんど独り言のように呟いた。
その声には微かな苦々しさが含まれており、
アメリアが簡単にベアトリスの信頼と愛情を得ていることが、
まるで個人的な侮辱であるかのようだった。