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お嬢様には絶対に言わないで  作者: renten
ACT 1
26/176

1-10-3

注: カセイの英語のローマ字は Cathay です。

ブリジットは背もたれに寄りかかり、ウィスキーボトルをだらりと手に持ちながら豪快に笑った。


「信じなくていいわよ、フェリシティ。彼の名前はエドワード。地味な名前よね。見た目通りって感じ?」


その顔には嘲笑の色が濃く浮かんでいた。


エドワードの顎がわずかに震え、彼の不快感が隠しきれないほどに滲み出ていた。

歯をギリギリと鳴らしながら鋭い目でブリジットを睨みつける。黙ったままだが、その目は「覚えていろよ」とでも言わんばかりだ。


「なんだ、期待外れ。」フェリシティは肩を落としながら、手元のスナックに戻った。

「なら、なんで嘘ついたの?」と不満げに呟く。


ブリジットは首を振って笑った。

「ああいう奴よ。」手をひらひらさせる。

「自分の名前を聞かれても教えないんだから。無礼だと思わない?どこの執事がそんな態度取るのかしら?」


エドワードは背筋を伸ばし、誇らしげに胸に手を当てた。

「私の名前は私のものだ。他人に好き勝手使わせるつもりはない。」


その声には誇りが込められていた。


「それは私のご主人様がくださった大切なものだからな。他人に安易に使わせる気はない。」


レンは目を瞬かせ、困惑した顔を浮かべた。

「それって……名前の概念としておかしくないですか?」とためらいがちに口にする。


「変わった考え方だな。」フェリシティも眉をひそめながら、また奇妙なスナックを口に運んだ。


セシリアが眼鏡を指で押し上げながら、鋭い視線でニヤリと笑みを浮かべた。

「それで?」

彼女は意味深に切り出した。

「もともとの名前はなんだったの?」


エドワードが返答する前に、ブリジットの声が会話を遮った。

「それで、お前さんはあのカセイの大使家の執事ってわけか?」


その声は急に大きく、強引に話題を変えるような勢いだった。

笑顔は鋭いが、その瞳には一瞬だけ別の感情が垣間見えた――危険な話題を避けようとしているかのような意図が。


セシリアの知ったような表情は崩れず、目を閉じて少し身を引くだけで、ブリジットの話題転換を受け流した。


レンはさりげなく空気を読んで微笑みを深め、追求する気を引っ込めた。

「ええ、ヘルヴィグさん。その通りです。」


彼は軽く頭を下げると、流れるように答えた。

「私たちの家は皇帝陛下から、この国との貿易使節を任されております。ホウシャの品を運ぶだけでなく、シルクロード全域とカセイの広大な地を代表する使命を担っております。」



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