1-7-1【No Place for the Butler】
アカデミーの大講堂の入口は、まるで朝日に輝く豪華な舞台のようだった。
外観は精緻な彫刻と磨かれた石で飾られ、伝統と現代性が見事に融合していた。
おそらく新築か、最近改装されたばかりなのだろう。
アカデミーの名声を体現するような堂々とした佇まいだった。
高いガラスの扉越しに、豪華なロビーの様子がちらりと見える。
リッチなカーペットが敷かれた床、大きなシャンデリア、
そして光を反射する磨き上げられた真鍮の装飾品が目を引いた。
生徒たちは一人また一人と中へ入っていき、
彼らの足音が広い二重扉を通り抜けるたびにかすかに響いた。
多くは目的を持って動き、早めに席を確保しようとしていたが、
外で名残惜しそうに、あるいは気が散っているように留まっている者もいた。
付き添いの従者たちは、生徒を見送りつつ、
自分たちが待機するための指定された場所へ向かっていった。
校内には従者専用の待機所がいくつもあり、
日陰のあるガゼボや庭のベンチ、
さらにはカフェテリアの建物までもが利用できるようになっていた。
一方で、大講堂の外に残っていた生徒の中には、
メインの流れから少し離れて立つベアトリスとエドワードの姿があった。
彼らは控えめに話しながら、どこか陰謀めいた空気を漂わせていた。
しかし、その対照的な振る舞いが、まるで演劇の一場面のような滑稽さを感じさせた。
「さあ、お嬢様、これが計画です。」
エドワードは自信満々の低い声で話しながら、少しベアトリスに身を寄せた。
彼女は首を傾げ、緑の瞳を輝かせながら少し面白そうに微笑んだ。
「その『計画』って具体的に何かしら?」
彼女は囁くように返事をしたが、その声にはユーモアが漂っていた。
「お嬢様が先に中に入るんです。」
エドワードは大袈裟なジェスチャーで入口を指差した。
「そして、私はお嬢様の肩の後ろに隠れます。」
ベアトリスは瞬きをし、抑えきれない笑いを堪えるように唇を震わせた。
「でも、私の方があなたより小さいのよ。」
「承知の上です。」
エドワードは厳粛に頷き、怯む様子も見せなかった。
「入口で見張りの職員に近づいたら、私が素早く彼らを殴って気絶させます。誰にも気づかれません。」
ベアトリスの目が驚きで見開かれ、
声が少し上ずりながら、恐怖と困惑の入り混じった声を上げた。
「そんなこと、絶対にダメよ!」
彼女は両手を振り、そのアイデアそのものを消し去るような仕草をした。
「ごもっともです、お嬢様。」
エドワードは顎に手を当てて考えるような仕草を見せ、
相変わらず真剣な口調で答えた。
「目撃者が多すぎますね。それでは後々面倒になります。」
「そういう意味じゃないわ!」
ベアトリスは頬をふくらませ、彼を睨みつけながら言い返した。
「そんなに簡単に人を殴っちゃダメだって言ってるの!」
彼女の声はほとんど叱るような口調に変わったが、
その言葉には真の威厳が欠けていた。
エドワードは一瞬考えた後、深く頷いた。
「お嬢様の言う通りです。
もっと適切な方法を考えましょう。」
「『適切な方法』なんてどうでもいいの!」
ベアトリスは肩を軽く押しながら不満げに叫んだ。
「ただ、どこかで待ってなさい。
今日は開会式と紹介だけなんだから、そんなに時間はかからないわ。」
彼女の声には少し安心感を持たせるような柔らかさが加わり、
「私、一人でも大丈夫よ。」と付け加えた。
彼の返事を待つことなく、ベアトリスは一歩後退し、
軽やかで急ぎ足のような歩みで大講堂の入口へ向かった。
エドワードは姿が扉の向こうに消えるまで彼女を見送り、
その表情には微妙な感情が宿っていた。




