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ベアトリスが知らぬ間に、別のセクションの学生たちは彼女に注意を向け始めていた。
彼らの視点から、彼女の落ち着いた姿勢と静かな優雅さは神秘的な雰囲気を醸し出していた。
彼らにとって、彼女は触れることのできない存在であり、
その距離感は、内気さではなく高貴さの象徴のように映っていた。
彼らは静かに囁き合い、彼女が何者なのかを推測していた。
その憶測は、ベアトリス自身の抱える自己疑念とはかけ離れたものであった。
ベアトリスの思考は、アナウンサーの声が再びホールに響き渡ると中断された。
その声は、聴衆の焦点をステージへと引き戻した。
「さて、このセグメントの締めくくりとして、今年度の新入生クラスを代表する“セイント・スカラー”をご紹介いたします。」
アナウンサーの言葉が会場を埋め尽くす。
「1-Aクラス代表、ベルさんにご注目ください!」
その名を聞いた瞬間、ベアトリスは背筋を伸ばし、注意を集中させた。
“セイント・スカラー”という称号に耳を傾けながら。
その名誉ある称号は、三年に一度、並外れた才能を持つ学生にのみ授与されるものだった。
それまでは常に貴族家出身の者が受け継いできた。
一瞬、彼女の思考は駆け巡る。
「もしドロテアが今年高校に入学していたなら、
あの場所に立つのはきっと彼女だったはず。」
だが、そのタイミングは一致しなかった。
ベアトリスの興味はますます高まり、
庭で出会ったそばかすの少女がステージに上がるのを目にした。
その短い出会いの記憶が蘇り、ベアトリスの心は少しだけ弾んだ。
「彼女なんだ。」
ベルの姿は、これまでスピーチを行った貴族たちとは大きく対照的だった。
彼女の制服は整っているものの、
他の貴族たちが纏う仕立ての完璧な衣装には遠く及ばなかった。
彼女の髪は、シンプルなシュシュで二つの低いお団子にまとめられ、
若々しく、どこか未完成な印象を与えていた。
彼女が前へ進むその動きにはためらいが感じられ、
視線は観客へと緊張しながらちらついていた。
観客席からは、彼女が少しつまずく音が聞こえた。
壇上のわずかな段差に足を取られ、一瞬バランスを崩したのだ。
ベルの頬には赤みが差し、静かな笑いが部屋に波紋のように広がる。
だが、彼女は自分を立て直し、決意のこもった視線で頭を上げた。
その様子を見て、ベアトリスは胸が締め付けられるような同情を覚えた。
「きっとすごく怖いはず……。」
ベルは両手で演壇をしっかりと握りしめ、その指の関節は白くなっていた。
そして彼女は話し始めた。
その声は最初、揺れ、ホール全体の視線の重圧に押されるようだった。
だが、続けるにつれて、彼女のトーンは次第に落ち着き、安定し始めた。
それは素直で、生々しい真剣さに突き動かされており、
一部の人々を魅了し、また別の人々を不安にさせた。
その言葉は、大胆で、型破りで、妥協を許さず、
言葉にされない緊張感の核心を突いていた。
ベアトリスは少し前かがみになり、そばかすの少女に目を固定した。
その言葉はホールの空気に波紋を広げていく。




