1-5-1【Smiles in the Garden】
エドワードとベアトリスは静かに立ち尽くし、
そばの小道を急ぎ足で去っていくそばかすの少女の背中を見送っていた。
エドワードは口元にかすかな微笑を浮かべ、沈黙を破った。
「お聞きになりましたか、お嬢様?」
彼は、そばかすの少女が道の先に消えるのを見つめながら言った。
「あの子、スピーチをするって言ってましたよ――新入生代表らしいですね。」
ベアトリスは返事をしなかった。
彼女の表情は先ほどの穏やかさから変わり、
それはまるで静かに忍び寄るパニックのようだった。
彼女はそばかすの少女の後ろ姿をじっと見つめていた。
口を少し開けたまま、驚愕したような目で。
「ベアトリス様?」
エドワードは彼女の反応に気づき、優しい声で呼びかけた。
その反応は、ついさっきまで浮かべていた優雅な笑顔とはかけ離れていた。
「どうして……どうして彼女、逃げていったの?」
彼女はようやく呟いた。声はかすかで、ささやき声ほどだった。
「ただ急いでいただけです、お嬢様。」
エドワードは辛抱強く答え、論理的な説明で彼女を安心させようとした。
「問題が解決したので、もう留まる必要がなかっただけですよ。」
しかしベアトリスの表情には納得がいかない影があった。
彼女の声には静かな悲しみが滲んでいた。
「でも……彼女が自己紹介するのを待ってたのに。せっかく練習したのに……全部無駄だった。」
エドワードは目を瞬きながら、
涙でうっすらと輝き始めた彼女の瞳に驚き、
目の前で彼女のいつもの冷静さが崩れていくのを感じた。
エドワードは優しく彼女をなだめようとした。
「お聞きになっていましたか、お嬢様?彼女は急いでいただけです。」
ベアトリスは彼の袖をぎゅっと掴み、
その瞳には驚きと弱さが混ざり合ったような表情を浮かべた。
「でも、エド……私、同じ年頃の女の子と話したのに、逃げられたのよ!」
彼女の声は次第に小さくなり、
まるで自分でも信じたくないことを言っているかのようだった。
「私……何か恥ずかしいことを言ったのかしら?」
エドワードは彼女の質問に驚き、
どう答えるべきか一瞬迷った。
彼女は顔を上げ、不安でいっぱいの表情を浮かべて続けた。
「それとも……私が変だと思われたの?だってさっきまで花に話しかけてたし……。」
彼女の視線は風に揺れる庭の花々に落ちた。
エドワードは何とか笑いをこらえようと必死になった。
彼はもちろん、ベアトリスがおそらく知らない人と話す練習として、
花に話しかけていたことを知っていた。
彼女は庭の静けさの中で、
バラに向かって穏やかな声で話しかけたり、
自己紹介をしたり、礼をする練習をしたりしていた。
エドワードにとって、それは愛らしくも感動的な光景だった。
だが、彼女の繊細な心を傷つけないために、彼は深呼吸をして気を引き締めた。
「いいえ、お嬢様。」
彼は心からの誠実さを込めて答えた。
「お嬢様は完璧に話していらっしゃいました。彼女が必要としていた道案内を見事に与えられたのです。」
彼は笑いをこらえながら、わずかな楽しさが瞳に宿るのを抑えられなかった。
「エド。」
ベアトリスは彼の表情をじっと見つめ、頬を赤らめながら言った。
「嘘ついてるでしょ。笑ってるじゃない。」
彼女は口を覆い、小さな声で驚きの息を漏らした。
「初めて誰かと話したのに、台無しだわ!」
エドワードはなんとか表情を整えようとしつつも、
彼女の言葉に心が痛んだ。
「お嬢様、誓って申し上げます!本当にお見事でした。」
彼は真剣な声で続けた。
「もし彼女が走り去ったのだとしたら、それはお嬢様の輝く笑顔に緊張したからです。」
彼の言葉にベアトリスの表情は少し和らいだが、
その声に
「それじゃあ……私、笑顔をやめたほうがいいのかしら?」
「それは絶対にダメです!」
エドワードは即座に答えた。
その声には、強い誠実さが満ちていた。
彼は一瞬のうちに彼女の頬を手で包み込み、
優し
その結果、ベアトリスの唇はまるで金魚のよう
「どうか、笑顔を絶対にやめないでください!」
彼はまるで生涯を懸けた誓
ベアトリスは頬を押さえられたまま、困惑したような目で彼を見上げたが、
やがてその表情が和らぎ、小さな、くぐもった笑い声が漏れた。
「わかったわ、エドがそう言うなら。」
彼女は頬が押されているせいで少し歪んだ声で答えた。
エドワードは満足そうに頷き、
彼女の頬から手を離すと、再び威厳を取り戻したように背筋を伸ばした。
だが、その瞳にはまだ悪戯心の輝きが残っていた。
しかし、ベアトリスの笑いが収まると、
彼女の表情は徐々に静かになり、不安げな色が戻ってきた。
「それでも、エド……私はまだ怖いの。」
彼女の声はかすかに震え、
心の中の不安を打ち明けるように続けた。
「友達ができる気がしない……特にアンもエドもいない場所でなんて。」
エドワードはその言葉に静かに耳を傾け、
彼女の気持ちを受け止めるように柔らかな笑みを浮かべた。
「心配しないでください、お嬢様。」
彼は自信に満ちた声で答えた。
「私はいつだってお嬢様のそばにおります。」
その言葉にベアトリスの顔には微かな笑みが戻ったが、
どこか疑うように彼を見つめた。
「でも、エド……教育区域には入れないでしょ。」




