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お嬢様には絶対に言わないで  作者: renten
ACT 1
11/176

1-4-2

彼女の目的は明確だった。

教師棟を見つけて、スピーチのための確認を済ませることだった。


しかし、未知の道を進むうちに、ベルは自信を失い始めた。

アカデミーの敷地は広大で、手入れの行き届いた庭園や、そびえ立つ建物、そして見知らぬ名前が刻まれた威厳ある像が並んでいた。


小道は優雅な曲線を描き、広々とした中庭や噴水へと続いていた。

しかし、数分も歩くと、彼女は完全に迷子になってしまったことに気づいた。


ベルは唇を噛み、引き返すことで何とか知っている場所に戻れるかもしれないと考えた。


そんな中、彼女は賑やかなメインの小道から少し外れた、静かな庭を見つけた。


その隠れた場所には、先ほど見かけた貴族の少女がいた。

彼女は花壇の傍らにしゃがみ込み、そっと触れるように花を眺めていた。


その視線は優しい好奇心に満ちており、周囲の喧騒とはまるで別世界のようだった。


そばには、彼女と一緒に馬車から降りた若い男性が立っており、腕を組みながらベルに一瞬目を向けた。


ベルは自分がその静かな瞬間に入り込んでしまったことに気づき、頬を赤らめた。


どうしていいか分からず、彼女は立ち尽くしていた。

そんな彼女に、若い男性が静かに声をかけた。


「迷子か?」


その声は直接的でありながら、どこか優しさを含んでいた。


ベルは口を開き、答えようとした瞬間、少女が顔を上げた。

彼女の緑の瞳は好奇心で輝き、柔らかな笑みがその顔に浮かんだ。


「こんにちは。」


少女は静かにそう挨拶し、ベルの表情をじっと見つめた。


その視線は暖かく、どこか友好的だった。


「何かを探しているように見えるわ。」


ベルは、思わず心を許してしまいそうになるほど、その瞳に引き込まれた。


そして正直に答えた。


「ええ…あの、少し道に迷ってしまって。教師棟を探してたんです。スピーチのためにチェックインしなくちゃいけなくて…」


ベルの言葉を聞いた少女の瞳が、理解の色を浮かべて優しく輝いた。


「教師棟ね。それなら、確かに初めてだと少し見つけにくいわ。」


少女は少し微笑みながら、続けて説明を始めた。


「教師棟はね、ちょっと特別な建物なのよ。大きな柱と高い屋根が特徴で、どこか裁判所みたいな雰囲気があるの。初めてだと見過ごしちゃうかもしれないわね。」


自信に満ちた声で彼女が建物の特徴を説明すると、ベルの緊張した表情が徐々に和らいでいった。


「ありがとうございます。」ベルは安堵したように微笑みながらお礼を言った。


彼女は感謝の気持ちを込めて言った。


その声は小さくても、本当に心からのものだった。


ベルは最後にもう一度少女を見つめた。


その笑顔は庭全体を明るく照らすようで、どこか魔法のような暖かさを帯びていた。


彼女が振り返って去っていくときも、その温かい雰囲気はベルの心に残り続けた。


ベルは軽く頭を下げ、少女に礼を言いながら道を戻り始めた。


ふと振り返ると、彼女の目に二人の姿が映った。


貴族の少女は立ち上がったまま、柔らかく励ますような笑みを浮かべてベルを見送っていた。


そばにいる若い男性の視線もベルに注がれており、どこか警戒しながらも礼儀正しく、彼女が正しい道を進むのを確認しているようだった。


ベルの胸は不思議と軽くなっていた。


曲がり角を抜けたときも、まだ彼らの視線を感じていた。


その無言の支えが、彼女がようやく方向を掴むまで、心に寄り添っていた。

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