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ヴァイオレット・ステージ  作者: 秋葉缶
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記憶喪失

「サファイアちゃん…いつの間にか傷が塞がってる」


いまだ起きぬサファイアの体のあちこちを触るひまり。

スノウによって開けられた胸の穴が完全に塞がっているようだった。


「お待たせしました!怪我人は?」


スノウが去った後に通報したアイドル協会の救護班が駆けつけた。


アイドル協会とはアイドルのイベント、管理や成績の査定、救護などアイドルに関する事全般を取り仕切る団体である。

アイドル育成学校の生徒は協会に就職することを目指すものも少なくない。


実はアイドルを警察が取り締まることはない。警察の拳銃では返り討ちに遭う可能性が高いからだ。

協会は暴走したアイドルの取り締まりも行なっていた。


「私とこの子です!」


「腕を出して」


「は、はい!」


すると救護班のメンバーの1人が、手のひらから緑の液体を生み出してひまりの腕に塗った。


「うはっ!」


「慌てないで。私のスキルです。酷い怪我ですが1日も経てば全快すると思います」


「凄い…」


「それで、問題の行動を起こしていたアイドルは何処へ?」


和服風の扇状的な服を着た長身の美女が凛々しい声でひまりに問いかけた。

和服の下半身の部分が動きやすいようにするためかスカートのようになっており白い太ももが眩しく映る。

シャンプーのCMに出れるんじゃ無いかと思うほど綺麗な黒髪を束ね、かんざしを挿していた。


腰には日本刀と脇差を差しており明らかに他の救護班のメンバーと格の違いを感じさせた。


「え〜と。それが…」


ひまりは海からスノウが出てきた事、その後サファイアが現れ二人が戦闘をした事。

自分が戦闘に割り込んだことなどを辿々しく語った。


「なるほど、分かりました。貴方はよく無事でしたね」


和服の女がひまりの腕をチラッと見ながら労った。


「えへへ…運が良かっただけですよ」


「うぅ…」


ひまりが話し終えた直後、サファイアが頭を抑えながら起き上がってきた。


「サファイアちゃん、大丈夫!?」


「う…あなたは?」


「いや、ひまりだよ!さっき貴方をヒーローみたいに命懸けで守った!」


「ぐっ…!」


「サファイアちゃん?」


サファイアが突然頭を抱える。


「そうだ…私はあなたに助けられた。それは覚えている」


「そうそう!」


「けど何故戦っていた?戦っていた理由が思い出せない。ここにいる理由も…記憶に蓋がされているみたいです」


「ふぁっ!?」


「これは…」


興味深げに指を顎にかけて見守る和服の女。


「記憶喪失だぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


ひまりの絶叫が千本浜に響き渡る。


「そういえば…!」


「心当たりがあるんですか?」


「はい。スノウちゃんが消滅する前にサファイアちゃんに向かって何かの能力をかけたんです。なんとかスリープとかいう能力を」


「記憶を阻害する能力かもしれませんね。一旦サファイアさんは協会で身体検査をした方がいいでしょう」


救護班がひまりに提案する。


「ウチのサファイアをお願いします…!」


「ウチのって…」


和服の女が冷静にツッコミを入れた。続けて彼女はひまりに提案する。


「一応あなたも検査しておきますか?」


「いや、私は平気です!早く帰らないと寮の人に怒られるので」


「分かりました。その制服は駿河学園のものですね。後日改めて事情を聞くことになるかもしれないのでそのつもりで」


「分かりました!」


救護班と和服の女に挨拶してその場を後にするひまり。



沼津駅のコンビニで沼津名物「ぬまっちゃ」というお茶を購入し、静岡駅行きの列車の中で一口飲むと窓の外を眺める。


「なんか…すごい体験だったな」


先ほどの戦いを思い出す。

雲の上の存在だと思っていたエリノアよりも圧倒的に格上であろうスノウ。

それに近い次元のサファイア。


「S級って見た事ないけどあんなレベルなのかな…あ、ノインきてる」


ひまりはスマホを取り出して友人からのメッセージに目を通す。


『今日タコパしよう!来れる?』


「ぷっ。澪ちゃんからだ、今日の事言ったらどんな顔するかな〜」


「安心したら眠たくなってきた…ちょっと寝よう」


しかしひまりが起きたのは静岡駅を遥かに通り越し浜松駅に着いた頃だった。


「やっちまった!!!」


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