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ヴァイオレット・ステージ  作者: 秋葉缶
26/27

殴り込み

20〇〇年 7月15日


東條学園は八王子市の山奥に存在する。

東京ドーム10個以上の広さがあり、生徒たちは悪事に身を委ねるためのスキルを日々磨く。


近隣住民からは腫れ物扱いされているため滅多なことがない限り誰も立ち寄ろうとしない。過去に爆竹を学園内に投げた不良5名が次の日には全員水死体となってから誰も手を出そうとしなくなったのだ。


学園の内部だが意外にも一般的な普通の校舎が建っていた。


A棟2階の廊下をスタスタと歩く少女、雷果がいた。

目的地は2年A組の教室。


ガラッと勢いよくドアを開き、クラスを一瞥する。

ほとんどの生徒が机に突っ伏して寝てるか、本を読んでるかだったが後ろの席にある少女を起点としたグループが出来上がっていた。


雷果はそのグループに全く臆する事なく向かっていく。


「雷果ちゃん。どないしたん?」


グループの中心にいる少女は前回フィーリアを回収した墨染巴だった。

雷果はその問いに答える事はなく墨染の胸ぐらを掴んだ。


教室がざわつき周りにいた女達は2人から距離を取る。


「ご挨拶やなぁ。1年のくせによく2年の教室に来て…」


「うるさい。なぜフィーリアを使ったの?御し切れるはずないのに。挙句に果てには瀕死状態で戻ってくるなんて思いもしなかった」


「雷果ちゃん落ち着こう?2人で話せるとこ行こか」


雷果の気迫などどこ吹く風といった表情で墨染は提案した。

雷果は気に入らなそうだったが渋々従うことにした。





墨染はオカルト部なるものを作っておりそこの部長をしていた。

そのため会話の続きは部室でする事となった。


雷果が黒いソファに腰をかける。

墨染がペットボトルのお茶を2人分コップに注ぎ対面に座った。


「この緑茶は協会でしか売ってないレアモノや。味わってな」


「……原産地が静岡県なんだから他の静岡産の緑茶と味は変わらないでしょ」


「そんな事はないと思うけど…つれへんなぁ…」


ズズズとお茶を飲みながら雷果の尋問が始まった。


「まず…なんでフィーリアが勝手に行動しているの?前回の富士で暴れた件だけならただの『ネメシス』の行動で済んだけど今回は市長暗殺未遂でウチの学校名まで出している。協会と戦争でも起こすつもり?」


「アキバで9thアイドルと小競りあった雷果ちゃんがそれ言うんか。そうやなぁ…理由は2つ。

1つは『ティアマト』の手の内を明かさずに東條学園の戦力を思い知らせた事。もう一つはスノウを誘き出す事」


「スノウを……」


「スノウとフィーリアは旧知の間柄みたいやし…けど、まぁスノウは今自分で自由に動けないっていうのがウチの見解や。今回のフィーリアを使った目論見は一つ目だけ達成てとこか」


「はぁ?じゃあ理由の二つ目破綻しているでしょ」


「怒らんといてよ。二つ目はウチじゃなくて理事長の考えなんやから」


「……そう。で、フィーリアは今どんな感じなの?」


「とりあえずこれ以上傷が悪化しない様に結界の中に閉じ込めてるけど暫くは動かせんやろな。あの子スキル耐性強すぎて回復スキルが効かんのよ。戦力ダウンが痛すぎるで」


「フィーリアをあそこまで追い詰められるアイドルに心当たりがない……。誰がやったの」


「サファイアちゃん」


「いや、誰?」


「雷果ちゃんがアキバで見たドレス着て短剣持ったツインの子や」


「ーーー!!」


雷果は思い出していた。

澪と遊んでいる間に割り込もうとしてきた謎の少女の事を。


「なるほどね」


「雷果ちゃんも笑うんやな。戦ってみたくなった?」


「その子の前に倒すべきアイドルがいる。それが終わってからね」



ドォォォォォン!!!!



2人が話していると校舎の方から轟音が鳴り響いた。

何かが吹っ飛んで校舎を直撃したのかグラグラと建物が揺れる。


「うわ!何事!?」


墨染が水晶を取り出して何か呪文を唱え出す。

襲撃者を割り出そうとしたのだろう。水晶には2人の少女の顔が浮かび上がった。


1人は青髪のポニーテール、もう1人は金髪ロングヘアの少女。


「ははっ」


水晶に映った顔を見て、拳を血管が浮き出るほど握りしめ雷果が思わず笑う。


「知り合いなん?」


「倒すべきアイドル」




時間は遡る。


澪、エリノア、舞子の3人ががひまりの病室に駆けつけた時、鬼無が昏睡状態のひまりに体をかぶせて寝ていた。


目元には涙を流した跡があった。


ネモが少し離れた場所に座っており3人に手招きする。


「ひまりは生きてるんですか?」


開口一番澪はネモに尋ねた。


「あぁ、生きている。一度は生物学的には死んだとしか思えない反応があったのだが…」


「死んだって…」


エリノアが口に手を押さえながら悲鳴のように声を上げた。


「ひまり君が倒れていた付近にサファイアの私物が数点見つかった。そしてサファイアの腕輪が今ひまり君に付けられている…。状況的に見てサファイアが何かしらの能力を使ってひまり君を助けたと見るべきだろう」


「サファイアちゃんはどこ行ったんですか?」


心配そうに舞子が尋ねた。

ネモは言いにくそうに顔を背ける。


「死んだ人間を甦らせるスキルは今のところ発見されていない。しかしサファイアは我々の理の外にいるアイドルだ。……いや、本当にアイドルという括りにいるのかも分からない。

そんな人物なら瀕死状態のひまり君を生きかえらすこともできたのかもしれない。

けど、死者を生き返らせるのは相当の代償がいるだろう…自分の命と引き換えに、とか」


「誰がっ!!!!」


澪は思わず感情が爆発しそうになるが寝ているひまりを見て必死の思いで押さえつける。


「誰がこんなことをやったんですか…!」


「…フィーリア」


「フィーリア…って…富士川海岸に現れた…」


舞子が数週間前に担任が言っていた事を思い出す。協会職員が10名中5名が殉職した事件だ。


「アイツか……」


澪が拳を血が出そうなほど握りしめる。


「フィーリアはサファイアにほぼ瀕死の状態まで追いこまれた。しかし東條学園のS級アイドル墨染巴がフィーリアを回収した」


「な、なんで東條学園の名前が今出るんですの」


「どうやら東條学園はなんらかの手段でフィーリアを従えているようだ。これは直接戦闘した鬼無からの報告だから間違い無いだろう」


「東條学園……」


ボソッと澪が呟く。

しかしその言葉には恐ろしいほどの怒りが込められていた。



澪はひまりに家の近くの寮に住んでいた。

部屋の中は漫画や筋トレ用品で溢れていた。

制服からジャージに着替えて最低限の荷物だけを持ち部屋を出る。

もう覚悟は決まったような顔だ。


寮を出て静岡駅に向かう澪。

殺気立った彼女の後ろから声をかける人物がいた。


「どこに行くんですの」


「エリノア…何の用?」


「カチコミですか?東條学園に」


「まさか止めるつもり?」


「いいえ、私も1人で攻め入るつもりでしたから」


エリノアが止めに来ると思っていた澪は驚いた顔をする。


「初めてできた友人を失ったんですのよ?せめて何があったかを直接本人に聞かないと気が治りませんわ」


「そっか。けど命懸けになるよ」


「今更ですわ」


2人は東京行きの新幹線に乗り込んだ。



そして現在に至る。



『襲撃者です。ガーディアン所属のアイドル以外は訓練通り避難してください…繰り返します』



「正面突破とは恐れ入りますわ……」


「私たちは何も悪いことしてないからね」


「(今入り口の門を殴り飛ばしましたわよ……)」


ブォォォォン!!!!と奇妙な音が鳴りだだっ広い校舎全てを透明のシールドで包み込んだ。

エリノアが【プラズマ・ボール】で破壊を試みるがびくともしなかった。


「なるほど、生徒に避難を促しながら私たちを外に出す気はないみたいですわね」


「上等じゃん」

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