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ヴァイオレット・ステージ  作者: 秋葉缶
2/27

等級

1年A組。窓際の後ろの席で、先ほど戦闘していた草薙ひまり(くさなぎひまり)、松浦澪(まつうらみお)、それに最近仲良くなった近江舞子(おうみまいこ)が談笑していた。

舞子は薄緑の髪を片方だけ三つ編みで束ねたおっとりとした少女だ。


「ひまりちゃん、大丈夫?」


心配そうに舞子がひまりの心配をする。


「なんかまだ体が痺れてる気がする…腕も痛い」


ひまりは【ヴァイオレット•ブラスト】を放った影響で両腕が腫れ、包帯を巻いていた。

そんな彼女に腕を後ろに組みながら澪がフォローを入れる。


「ひまりは頑丈だから大丈夫だよ」


「澪ちゃんほどじゃないけどね〜」


「災難だったね。学年どころか校内一位二位を争う実力のエリノアと対戦させられるなんてさ」


「本当だよ!何かの陰謀としか思えないよ…」


澪がひまりを労う。エリノアはその実力から入学当初から噂になっており、ひまりと模擬戦を行うには実力差があるとされていたが、思った以上にひまりは善戦できた。


「そういえば私が保健室に行く前、体育の先生が『津島家』とか言ってたけど…」


ひまりが疑問を抱いた。

周りからは洋風の名前で「エリノア」としか呼ばれていないから何処にでもいそうな「津島」という名字に違和感を感じたのだ。

その疑問に舞子が答えた。


「何か駿河の偉いとこのお嬢さんらしいよ。お家騒動で色々大変みたいだけど…」


「はぁ〜…。庶民の我々にはよくわかりませんな」


ひまりは一般家庭で育ったため、上流階級の苦悩は想像もできないのか、机に突っ伏しながらぼやいた。


「おっと先生来たよ」


澪が担任が来たことを察知し、談笑していた生徒達が席に着いていく。


「はい、では前期の筆記試験、実技試験を元に皆さんに対する【等級】が協会によって決定されました。等級書を一人ずつ渡すので呼ばれたら来るように」


「等級ってなんだっけ?」


周りに聞こえないように小さな声で隣の席の澪に尋ねるひまり。


「一番下のEから最高級のSランクまでで決められてる等級の事!私でも知ってんのに…」


「えへへ…」


愛想笑いで誤魔化そうとするひまり。


「ま、S級なんて神みたいな存在で全国に10人ぐらいしかいないらしいよ」


「へぇ〜私はどうだと思う?」


「E」


「ひどいよ!」


「嘘。Eかどうかは分からないけど実技だけならBかAは狙えるんじゃないかな。あのエリノアがAって噂だし」


「おぉー!」


「ではまず赤坂!」


「はい!」


教師が生徒の名前を呼び始める。

等級書を見た生徒の悲哀の声や歓喜の声があちこちで広がっている。


そしてひまりの番が来た。


「草薙!」


「はいぃぃぃぃ!!!」


「うるさっ」


澪が苦言を申すが全く聞こえていないようだ。

ロボットのように体をカチコチに強張らせながら教壇に向かう。


「精進するように」


「へ…?」


ぺらりと等級書を開けるひまり。

そこに載っていた文字は…。


「し…Cだと…!?バカな…!」


大仰に驚くひまり。

その理由を目の前の教師に問いただそうとする。


「先生!どうして私がこんなに低いんですか!?」


「う…絶対来ると思ったわ。私ももうちょい上かと思ったんだけどね」


「ならなんで!?」


「協議会曰く実戦ではB級。けど筆記がEとの評価が出たわ」


「E…だと…」


「最後に放った、ヴァイ…なんとかは正直A級の破壊力と評価されてたわね」


「【ヴァイオレット•ブラスト!!】舞子ちゃんと一緒につけた大事な名前ですよ!」


「はいはい。てなわけで気を落とさずに頑張りなさい。実戦がBの評価なんて一年生なら破格の評価よ。ほれ、行った行った」


しっしと手を振りひまりを席に促す教師。

がっくしと項垂れながら席に戻るひまり。


「どんまいー」


「せめてBが良かった」


ポツリと呟くひまり。

澪がひまりの肩をポンポンと叩き、慰める。

学校が終わるまでひまりは落ち込んだままだった。


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