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ヴァイオレット・ステージ  作者: 秋葉缶
19/27

旅行へ行こう!!

「う〜ん…この小さな体のどこにあんな力が…」


授業終了後suruga⭐︎oneのメンバー全員で帰宅していた。

ひまりはサファイアを抱っこしながらしみじみと呟く。


「ひ、ひまりさん…」


サファイアはなされるがままだ。


「止めんかひまり。サファイアちゃん今日はありがとうね、またやろうよ」


「望むところです。正直澪さんであればすぐにA級に上がれると思いますよ」


「あはは、ありがとう」


「(そ、それは私が大したことないということでしょうか…)」


サファイアの言葉を深読みするエリノアは少し落ち込んでいた。



「んー?」


「どうされました舞子さん?」


エリノアが何やら思案している舞子に問いかけた。


「なんか違和感が……」



舞子がポツリと呟くと上空からピンク色の粒状のエネルギー波が降ってきた。



「うわっ!!何々!?」


「皆さん伏せて!!」


驚くひまり達に向かってサファイアが叫ぶ。

サファイアは上空に手のひらを向けて白い炎を噴射し、謎の攻撃を一蹴した。


「攻撃されてるんですの!?」


「あっ!向こうに逃げていく人がいるよ!」


舞子が指を刺してこちらを攻撃したであろう人物を示した。


「追いかけるよ!!」


澪の声で皆逃げた人物を追いかける。

まわりは歩行者も歩いており何事かとこちらを見ていた。


逃げた人物は駅内を通り、静岡駅北口から近くにあった公園にまで走って逃げていった。


「待たんかいーーーー!!!!」


ひまりがまたエセ関西弁を使いながら全力で追いかける。

その人物は公園の真ん中で立ち止まりこちらを振り返った。



「久しぶりですね。クソガキども」



「あ、あなたは……!」


エリノアが驚く。

いや、サファイア以外は驚きの表情を浮かべていた。


「「前の体育教師の人!!!」」


皆の声が重なる。

ひまり達を襲った人物は停職処分をくらっているはずの教師であった。


「前のですって……?舐めてんじゃねぇぞお前ら!お前らが上にチクったせいで停学+減給なんだよ!推しにスパチャ投げられねぇだろうが!!」


もはや教師としての面影はなく、目の前にいるのはただの素行の悪いオタク女だった。


「う〜ん私はスパチャまでするほど好きな配信者いないから気持ちがわかんないや」


「ひまりさん…問題はそこではないですわ」


「で、前の先生が何の用さ。こんなことしたらクビ確定だよ?」


澪が至極真っ当な疑問を投げかける。

すると前の先生はニヤッとした表情を浮かべ要求した。


「お前らが上に私の停職を取り消すように訴えろ。私も一緒に糞のエリノアを探しに行っていたとな」


「誰が糞ですか!」


クソ呼ばわりされたエリノアはプンプン怒っていた。

だがそんな要求到底受け入れる事ができない。


「誰もそんな要求飲みませんわ!糞はあなたですわよ!」


「ま、そういうと思った。て事でお前らはここで死んでもらう」


「はぁぁぁぁぁ!!?」


理解のできない展開にひまりが叫び始める。


「私のスキル【ラブバリア】は防音だけじゃない。中に入れたものを絶対に外に出さない。

お前らは死ぬまで粒弾を浴びせられ続ける……」


「や、やばいよ、あの先生頭逝っちゃってるよ」


目がガン決まりの元教師に恐怖を隠せないひまり。

すると予想していなかった人物が一歩前に出た。


「私が先生を倒すよ」


「舞子ちゃん!?」


今まで人前に出ることの少なかった近江舞子が目の前の教師を倒すと宣言したのだ。


「はぁ〜?お前みたいな隠キャ田舎滋賀県民が元B級の私に勝てると思ってんのか?舐めんなよガリ勉がァァァァァ!!!!!!」


全滋賀県民に喧嘩を売る言葉を吐きながら上空から粒弾の雨を降らせる教師。

舞子は手のひらから緑色の触手を出して全てを弾いた。


「なにっ!?」


驚く元教師。

しかし舞子の攻撃は続く。


「吸え【クロユリ】」


いつもの穏やかな様子とは一変し、舞子は冷たい声でスキル名を紡ぐ。


数十メートルも伸びる触手を無数に操り、教師の攻撃を弾く傍ら数本を地面に潜らせていた。


「この隠キャがぁぁぁぁぁぁ!!!!」


教師にあるまじき醜い叫びの直後、彼女の周りの地面からボゴォ!と触手が現れた。


「なっ!?」


触手は教師に絡みついてそのエネルギーを吸い取りはじめた。


「お、お、お、…やめろぉ……!!」


暴れる教師だが触手の力は凄まじく、振り払うことができない。


「あわわ…」


凄惨な攻撃にひまりは情けなく悲鳴をあげる。

よく見ると澪やエリノアも若干引いていた。


「が…あ……」


教師は顔から生気が無くなり、自分の脚で立つこともできなくなったのか舞子が触手を解いた後地面に倒れた。


「ぜぇ…ぜぇ…」


倒れ、満身創痍の教師にゆっくり近づいていく舞子。

教師の目の前で膝をついて宣告した。



「滋賀を馬鹿にしたら許しませんよ」



「あ…ひぃっ……」



教師は白目を剥いて気絶してしまった。

後から4人が駆けつけてくる。


ひまりが舞子のフォローに入った。


「し、滋賀県は琵琶湖とかあって私は好きだよ舞子ちゃん」


「琵琶湖以外は?ひまりちゃん」


冷酷な目で問い詰める舞子。


「ひょえ!?あ…あ…宇治抹茶とか…?」


「馬鹿!それは京都でしょう!!」


澪に諭され焦り始めるひまり。


「そ、そうでした!」


あわてるひまりにくすりと笑う舞子。


「ふふ、冗談だよ。皆は怪我はない?」


ほっ、と安堵の息を吐くひまり。

サファイアが舞子を賞賛した。


「舞子さんの戦闘は初めて見ましたが強いですね。相手もなかなかのものだったのに一瞬でケリをつけてしまった」


「ありがとう。私のスキルは【クロユリ】。緑の触手を出して相手のエネルギーを吸い取ることができるんだ。

今回はすぐ終わっちゃったから見せなかったけど、本当のスキルはここからなんだ」


「おお!まだ上があるんですね。是非見てみたいものです」


「そのうちね」


サファイアと舞子は仲良く話しているが、その横で澪、エリノア、ひまりは口を揃えて言った。


舞子さん(ちゃん)は怒らせないようにしよう」


それからエリノアが協会に通報してすぐに職員が数名、教師を逮捕しにきた。


その中には鬼無の姿も含まれていた。


エリノアは鬼無を見て顔を引き攣らせていたが、サファイアとひまりは彼女に駆け寄った。


「鬼無さーん!」


「えっ…君たちだったんだ。よく災難に巻き込まれるね。怪我は無い?」


「ありがとうございます!舞子ちゃんが瞬殺してくれたんで大丈夫でしたよ」


「へぇ、この教師は結構やり手らしいんだけどね。ひまりさんのグループは強い子多いんだ」


「あ、あの2人とも鬼無さんと随分仲良くなったんですのね」


おずおずとエリノアが声をかけてきた。


「あぁ君はあの時の」


「そうなんだ。あれから鬼無さんが私たちにご飯奢ってくれたんだよ」


「ご飯?何でですの?」


「それはね、実は…」


ひまりがご飯を奢った理由すら忘れて、ゲームの事を話し始めようとした。


その瞬間鬼無がひまりの顔を自分の胸の中にかなりの力で埋めた。


「むぐぐぐぐぐ!!!!」


「な、何してるんですの!?」


「ひまりさんが急に可愛く見えて抱きついてしまった」


「むむむむむむ!!!!(苦しいよ〜)」


「可愛い、可愛い」


「(やっぱやべぇですわこの女…)」


ドン引きのエリノアの隣でサファイアは苦笑いしていた。




結局教師は逮捕され協会支部に連行されたようだ。

5人は鬼無と別れ各々の自宅へ戻った。


ひまりは荷物を置くと、布団を広げてその上にダイブする。


「あ〜疲れた…」


「まさか先生があんな方だとは…びっくりです」


「どうかな、結構前から色々やらかしてたしあんまり驚かないや。それより今日のご飯どうしよっか」


ぐぅ〜、とひまりの腹の虫が鳴る。

時刻は18時を回っており、お腹が空き始める時間だった。


「私は何でもいいです」


「何でもいいが一番困るの!焼き魚とかにしとくか……」


「じゃあまたスーパーに行きましょうか」


「そうだね。帰りに買っておけばよかったよ…」


2人はラフな服に着替えて寮を出る。

スーパーはひまり達の寮から徒歩数分の距離にある。


時間帯だけに店内は夕食を作る主婦で溢れていた。


さっそく生鮮品売り場に直行するひまりとサファイア。


「え、これ凄いね」


ひまりが数ある魚の一匹を指差して驚いていた。


「普通の魚に見えますが…」


「これ実は深海魚なんだよ。普通は沼津の方で売ると思うんだけどこっちでも販売することあるんか…」


「深海魚ってなんですか?」


「海底200m以上深い場所に生息している魚を深海魚って呼んでいるんだ。駿河湾は日本一深い湾って言われていて何と深さが最大2500mもあるんだよ」


「恐ろしい深さですね…」


「そのおかげか世界で唯一シーラカンスっていう超珍しい魚の標本がある水族館もあるんだ」


「へ〜…。結構詳しいですねひまりさん」


「まぁ伊達に静岡に16年も住んで無いよ。けど水族館は行ったことなかったな…」


独り言のように呟くひまり。


「ひまりさん?」


「そうだ!エリノアちゃんの歓迎会として深海水族館に行こう!」


「おぉ!」


「ふふ…ただ行くだけじゃ無いよ。皆の絆が深まるとっておきの方法を思いついたんだ」


「皆の絆が…!?どんな方法なんですか?」


「それは明日までの秘密!楽しみに待っててね」


「気になりますね…」


そんなこんなでスーパーでは色々あり、調理が面倒という理由で帰りに出来合いの唐揚げを買って帰った。



そして次の日



「へぇ〜深海水族館か。いいと思うよ」


昼休み、皆で集まっている時間にひまりは歓迎会の計画を話していた。

澪が賛同し、皆も乗ってくれた。


「流石ですわひまりさん!わたくし、感激です!」


「ふっふっふっ…けど、これだけじゃ無いんだよね〜」


「まだ何かあるの?」


舞子がまたプリンを頬張りながらひまりに尋ねた。

昨日その内容を教えてもらえなかったサファイアは前のめりに話を聞こうとしている。



「皆の絆を深めたいから静岡から沼津港まで船で行きます!!」



「「「おおーー!!」」」


皆の歓声が食堂に響く。

深海水族館は沼津港付近にあるためそこまで船で行こうと言う魂胆だ。


「確かに静岡から沼津港までは大体40キロほど…それまで船で行けたら楽しそう。潮風とか気持ち良さそうだし」


海が好きな澪は頬杖をつきながら船旅を想像する。


「そうですわね!船ならフォーマルな服装の方がいいのでしょうか…」


「大丈夫!普段着で着てもらっていいよ!船旅になるからお菓子とかたくさん持って来てね!」


「楽しみですわ〜」


「にしてもひまりちゃん船とか持ってるの?」


舞子が心配そうに尋ねる。

確かにアイドルとはいえ1女子高生が船を持ってるのはレアケースだろう。


「大丈夫!私のお父さんが沢山ローン組んで中古の船を買ったから!」


「それなら安心ですわね」


「じゃあ今週の土曜日の朝9時に用宗港(もちむねこう)に集合で!」


「「「は〜い!」」」


ひまりの言葉に皆元気よく返事をする。

この船旅が恐ろしい悲劇を起こすことをひまり達はまだ知らなかった。


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