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デュ・アル  作者: あめ
始まりは希望と絶望から。
6/6

求め合う者達。






 「...あ!これはきっと神龍様の導きね!高く売りつけて豪華な幸せを掴みなさいって事に違いないわ!」






少女はその卵が売れると思い、一応持ち歩く事にした。


「アタシ...ウラレル...ヤカレテ...タベラレル...」


卵は生まれもしないまま喋る。


「...いかにもイアが悪い人みたいなふうに喋るのね、卵さん。

イアはこんな熱い砂漠の中で拾ってあげた恩人よ。

あなたには貸しがあるのだから売られる事で返してくれるととても嬉しいわ」


歩きながら卵と話す。

自分でもこの不思議だと思う出来事に対し、周りに人がいなくてよかったと内心思ったのだった。


「アナタ...トテモ...ココロナイ...セイブツ...」


卵のくせに意外とおしゃべりだ。


「...分かったから少し黙っていなさい。今は暑くて、早くこの場所を抜け出したいの。

二日間この砂漠を彷徨ってるのに水さえなくて、

良心の塊であるイア・ネイラーデに生まれもしない卵と話す時間なんてないわ」


そう言うと大きめのリュックに卵をいれる。

この少女の名はイア・ネイラーデということが分かった。




 それから歩き続けること七時間、少しずつだが周りに木が増えてきた。


「木があるってことはこの近くに生きれる環境があるはず...せめて民家でもあればお邪魔させてもらうんだけど...」


イアも疲れている。

赤髪もパサついて、額には常時汗を浮かべて歩いてきたのだからそれも仕方ないことだろう。


「...ッチ」


疲れのせいか、後ろのほうから何か聞こえる。


「卵置いてあるくらいじゃ、もうイアはビビったりしないわ。今度は一体何なの?」


そう言い、後ろを振り向くが何もない。


「...アッチ」


リュックだ。


長時間歩いていたせいで卵をリュックに入れておいた事を忘れていた。

その時間、大人しく何も発しないのだから尚更だ。


「どうしましたか、卵さん。お腹が突っかかって卵から出られないのでしょうか?」


リュックから卵を取り出し、そう話しかけた。


「モリ...アッチ...ミズ...アッチ...。イッパイ...イノチノ...

コドウ...カンジル...」


卵はイアの求めていたものを探し当てた。

これには彼女も驚きを隠せなかった。


「どうやって...。近くにあるのね...教えてくれて助かるわ。でもね...手もないのにあっちって言われただけじゃ、どこか分からないのよ?可愛らしい卵さん」


と小馬鹿に言い放つと次の瞬間、頭の中に何らかの映像が流れてきた。

今自分たちのいる場所から小さな光が真っすぐ突き進むと森の入り口が見え、そのまま中に入ると湖があった。そこで脳裏の映像はプツンと途切れて何も見えなくなる。イアは卵を見つめ、


「あなたが今イアに見せてくれたの?」


そう問うと卵がブルっと震え、それを見た彼女は卵が可愛らしく思えて鼻で笑った。


「そういう時は怒ったりしないから話してもいいのよ、どちらかといえば大切な話なんだから」


優しく卵に教えると


「アタシ...イイコ...アナタ...ヒドイヒト」


...


「よし、先を急ぐわ。イアは何も聞いてない!」


彼女は眉間にしわを寄せながら卵をリュックに戻し、

早々に森への道を急いだ。


「第六感でも覚醒したのね...だから見えたんだわ!」


そう自分に言い聞かせた直後、


「アナタ...アタシウル...ワルイヒト...」


ポツリとそう聞こえた気がした。

この後、イアは卵相手に三十分間お説教をする大人げない行動にでたのであった。

そしてイアの年齢はおそらくアルディアがつい最近成人し二十歳となったのであれば、十八歳ぐらいだと思われる。




 それからひたすら歩き続け、森の入り口までやってきた。


「もう少し進めば湖があったはず、そこの近くで今日は一夜過ごすことにするわ」


独り言のように言いつつも、その視線はリュックに向いていた。


真上の綺麗な月が森を照らす。

湖の音は暑かった砂漠とは違い、心も体も癒してくれる。深く心地よい睡眠へと導かれそう...


だったはずが急に森の空気がガラッと変わる。


「草木の茂みから何かに見られてる...」


気付いた瞬間、折れた太い木のくぼみで丸くなって寝ていたイアの目前に「奴ら」はいた。


「何者!?」


女が小刀で襲ってくる。


「よこせ」


ただその一言だけだった。

何の事か考えてるうちに数時間前に頭の中に沸いたイメージが脳裏をよぎった。

その「力」は何ともいえない、不思議なもの。

狙われてるのは間違いなくあの卵だとそう確信した。

それなら話が納得いってしまい、何となく渡したら何か悪いことに使われてしまう気がするも木々が邪魔でこの場所に慣れていない彼女にはとても戦いづらい。

鎖鎌使いのイアには狭い場所は不利である。

ふとリュックの場所を確認しようと襲ってきた女から目を背けた直後、後方から二つの小刀がイアの袖を貫き木に勢いよく突き刺さる。敵は一人じゃなかった。

彼女が隙を見せるのを待っていた者がいたのだ。


「...くっ!抜けない...」


袖が刺さっていて、腕が拘束された状態だ。

イアの様子を見てから二人と後方の三人ぐらいの人影は卵の入ったリュックを持ち去っていく。


「どうしてイアが持っていると...。

なんでリュックに入っていると...分かったのかしら...

誰にも言っていないのに...」





「でもイアには何の関係もない...あの卵は...いや渡してはいけないわ。

高値で売る!...とりあえず...抜けない...!!!」






 謎が謎を呼ぶ。

卵を持ち去っていった連中は何者なのか...?

イアはどうなる...?

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