実際の所ざまあはかなりの諸刃の剣だと思う
さて、ざまあは”もう遅い”系作品の粗製乱造もあって、今では以前に比べればその勢いはだいぶ失われたものの、なんだかんだでまだまだ人気は根強いとは思います。
ただ、ざまあはかなりの諸刃の剣だと、私は思うんですよね。
なんでかというと、最初に読者を引き込むために、主人公をどん底に突き落としてから、力に目覚めたり、時間が止まってるような世界修行したりで、その能力を天井まで上げてしまうので、その後が全然つまらなくなってしまうからなのですが。
最初に主人公が最強な力を手に入れてしまうと、結局その後も全部力押しのごり押しでお話がすすんでしまい、本来は障害として立ちはだかるもののはずが、全く障害として役に立たなくなってしまうので、そこに爽快感を感じにくくなり、それが続くと全く爽快感を感じなくくなって、むしろだるさしか感じないようになるため、全く話が盛り上がらなくなってしまうように、私は感じます。
で、それを避けるために、主人公以外が苦戦している敵を主人公があっさり倒すというワンパンマンみたいなパターンや、部下に戦わせてやっぱり無双するという展開になるんですが、そういうのってよほどうまくやらないと、全く面白くなくなってしまうんですよね。
あと、主人公がもう成功してるのに、以前に主人公を貶めた人間が、唐突にざまあされても、正直爽快感ってあんまり感じなかったりします。
おそらく書いている作者も、そういうパターンに入ってしまうと、読者が離れて行っているのはわかる気がするんですが、一度ある程度のポイントを手に入れた作品だから、ある程度書くとなかなか終わらせるということもできないのでしょう。
そういう精神的なサンクコストというのはバカにできないのもわかるんですけどね。
そういう点で異世界恋愛は、隣国や辺境へ追放されてから、溺愛してくれる公爵や辺境伯や隣国の王子などに出会って幸せになれれば、そこで終わりという着地点があるのでいいのですが、ハイファンタジーだとそもそも主人公は何を目指し、どういった着地点を迎えさせたいのか、ということ自体が読者には全然分からないというのが辛いように思えます。
まあそもそもその話がどういう世界なんだかわからないという場合も多い気がしますが。
銀河英雄伝説でもラインハルトには無能なくせに居丈高な門閥貴族がいて、それを一方的に打ち破っていくのは爽快ではありましたから、ざまあ自体は導入にうまく使えば悪くはないのでしょうけど、ラインハルトにはまずはゴールデンバウム王朝の打倒、そして銀河の政治的統一という明確な目的があり、それに沿って話が進んでいたので、安心して読めていたと思います。
ざまあは、導入に使えば有効なギミックではあるのですが、あくまでもそれだけであって、主人公にどういう結末を迎えさせたいのか、それは文字数でどのくらい必要なのか、とかをちゃんと考えてものがたりをつくりあげるようにしないといけないように、なってきている気がします。
とはいえ、まず冒頭の時点で読まれないとどうしようもないというのも現実なのですが。




