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猫さんの情報収集

 明日香さんからの話をまとめるとこうだ。

 警察に電話しても繋がらず、公的機関を頼ることができない。

 穂香のお父さんは、外で穂香を探し回っているところ。

 明日香さんは何かあった時のため家で待っている。


 こういう時こそ警察に頼りたいものだが、どうやら警察に電話をしている人が多く電話が繋がらないらしい。電話回線が込み合っているのもあるだろうけど、それだけではないようだ。テレビでも警察や消防へ不要不急の電話はしないで下さいとアナウンスされているようだが、朝から今まで何度かけても繋がらないとのこと。

 耳が生えただの尻尾が生えただのと警察に問い合わせたところで解決しないのは、少し考えればわかることだろうというのに、なぜかそれがわからない人が結構いるのだ。普段から『テレビが映らなくなった』とか、『列に並んでいたのに順番を抜かされた』とかそんな事で警察に電話をするような平和ボケた国だし、予想できることだけど時と場合を選んでほしいものだね。


「美夜子ちゃんも大変だと思うけど、もし穂香の情報が入ったら教えてほしいの」


「ん、わかった。私も穂香が心配。探してみる」


 明日香さんに言われずとも穂香を探すのに協力するつもりだったので問題ない。私にとって穂香は大事な幼馴染だ。

 人見知りのきらいがある私が今まで引きこもりにならず生活してこれたのは、間違いなく穂香のおかげだろう。穂香は誰とでもすぐ打ち解けてしまうようなコミュ力おばけで、穂香が話下手な私と周囲の人との橋渡しをしてくれたおかげで何とか日常生活を送ってこれたし、数は少ないながらも友達ができた。


「ありがとう、美夜子ちゃん」


「ううん。一つ明日香さんに聞きたい。いい?」


「ええ、何かしら?」


「明日香さんは、穂香が今どの辺にいる思う?」


「え? 私? そうね~。公園……かしら? 穂香のことだから、今日はきっとシロとたくさん遊んであげようとしてたと思うのよね。シロも穂香に久々に遊んでもらえるとわかったら、いつもよりはしゃいじゃってそうで。……危ないことしてないといいんだけど」


 明日香さんの勘はよく当たる。というか稲森家の女性陣はみんな勘が鋭い。穂香のお姉さんの唯香さん含め嘘は通用しないし、不思議と予想が当たる。テレビの天気予報で晴れと言っていても、穂香が今日雨降りそうだねと言った日は本当に雨が降るのだ。長い付き合いの間でその確からしさは、身をもって知った。

 だから闇雲に探すよりは、明日香さんの直感を信じてその公園を中心に探した方がいいだろう。


「公園って、総合公園?」


 シロの散歩に総合公園に行っていると穂香に聞いた覚えがある。


「そうそう」


「ん、わかった。あとで連絡する」


「ええ、よろしくね。こっちも何かわかったら連絡するわ」


「うん、じゃあまた」


 電話を切る。スマホの通知がたくさん来ていたけどいったん無視して、部屋に置いてあるスタンドミラーの前へと移動する。


「お~~」


 鏡に映った姿を見ると実感が湧いてくるね。猫耳パーカーのフードを脱いでいるというのに、頭には黒い猫耳があったよ。それもリアルな。これってなんてファンタジー?

 鏡に向けてお尻を突き出す。そうするとお尻の上くらいの位置に細長い尻尾が生えてるのが確認できた。

 手で触ってみると手にはリアルな感触、そして尻尾からは何とも言えないぞわぞわとした感覚が伝わってくる。

 うん、これは誰かにいきなり触られたらヤダね。猫の気持ちが少しわかったよ。でもごめんよ猫ちゃん。これを知っても触るのはきっとやめられないんだ。

 しかし、猫耳か~。


「まさか、私に猫になりたい願望が?」


 猫は好きだし、猫を見かければ撫でに行っちゃう。それに部屋の中を見ればわかるように猫耳が付いた時計に猫のぬいぐるみと数々の猫グッズがそろっている。


「……いや、確かに猫は好きだけど」


 猫耳パーカーなんて着てるけどさ、別に本物が欲しかったわけではないよ……may be。

 とりあえずスマホのカメラでパシャリと撮影しておく。うん、悪くないかも。


 あ~、この姿で動画配信したら儲かりそう。でも、話すの面倒だしダメかな? 顔出すの嫌だし。

 穂香と旅行に行く約束しちゃったけどどうしよう。アルバイトで稼ぐ気にはならない。働いたら負けだよ。うん。


 さっき無視したスマホの通知を確認すると両親や友達からメッセージや電話が来ていた。その中に穂香からのメッセージがあった。


『みゃーちゃん大変! 狐耳生えちゃった!』

『どうなってるんだろう? 起きたら連絡してね!』


 自撮りした写真も送られてきている。


「尻尾触りたい……」


 なんてことだ。写真からもわかるモフモフ感!


『こっちは猫耳だ!』


 対抗してこっちも写真を送っておく。画面をじっと見つめても既読は付かない。

 一応電話もしてみたがやはり繋がらない。


「やっぱダメか」


 少し心配だけど、穂香ならきっと大丈夫。穂香は昔から、ここぞというときに行動できる人間だ。私が前に他校の男子生徒に絡まれた時も助けに駆け付けてくれた。まぁ、既に私がボコボコにしていたのだけどね。穂香が私を制止する形になったから、結果助かったのは男子生徒の方だったね。


 しかし、黒い猫耳と尻尾が生えているなんて現実感ないな。これはもしかして……


「ステータス、ステータスオープン、メニュー、メニューオープン……」


 ダメか、何も起こらない。あと他に何かあったかな? ん~、ネットで調べてみよう。


「っとその前に」


 スマートフォンに来ていた他の通知を確認していく。

 両親や数少ない友達に返信しないとね。両親からは結構な数メッセージが送られてきている。心配させてしまったようだ。

 両親は確か今はドイツだったはず。仕事とはいえ各地を転々とする生活は大変そうだ。『日本』『ドイツ』『時差』で検索っと……7時間か~。で、向こうは現在朝の3時。電話しても起きてないだろう。


『私は大丈夫。心配しないで』というメッセージと黒猫がOKというフリップを持ってるスタンプを送っておく。ついでにさっき撮影した自撮り写真を送っておけば、まぁいいでしょ。

 それと数少ない友達から来ているメッセージにも返事を返しておく。ついでにやってるソシャゲのログインも済ましておく。大事大事。


 さて、それでは情報収集を始めようではないか。

 SNSで『ケモミミ』を検索検索っと。


 うわっ、めっちゃ引きあたるね。結構な人が同じ状況になってるのか。いくつもの自撮り写真がアップされている。だけどめぼしい情報はないね。


 パソコンでネットニュースを流し聞きしながら、SNSで情報を集めていく。

 人が消えた。神隠し。


 『今俺東京駅いるんだけどさ〜。こんなとこに出口あったっけ?

 さっきスーツケース持ったおじさんが入って行っちゃったんだけど……

 呼び止めようとしたらおじさん消えた。どうなってるの?』


 なんかそれっぽい目撃証言がいくつか見つかる。


『みなとみらいに行く人は気を付けて! 

 変なゲートが設置されてる場所がいくつか設置されてるらしい!』


 みなとみらい? 結構近いな。みなとみらいで検索してみよう。


『みなとみらいダンジョン入ってきたぞ!』


 おお? ダンジョン? これまたファンタジーっぽいわくわくワードが出てきたね。


『ダンジョンの中に入ったらステータスが見れた! すげー! ファンタジーだ!』


 これは!?


 内容を確認すると、ダンジョンに入るとチュートリアルのようなものが始まり、そこで自分のステータスも見ることができたとのこと。ただ、出口がすぐ近くにあったので、一回出てもう一度入ろうとしたらしいが入れなくなってしまったらしい。


 ダンジョンについて現在出回っている情報はあるがどれも不確かなものだ。ステータスが見れるようになる。スキルが使えるようになる。ダンジョン内にはモンスターが出現する。ダンジョンを出るには広間に設置された水晶を触り、『退出する』を選択すると出られる。

 そして、ダンジョン内ではスマホが使えない。なるほど、まだ情報が少なくて確証はないけれど穂香がダンジョンに入ってしまった可能性がありそうだ。


 それにしてもダンジョンにステータスと来ましたか……

 きた! きたきたきたきたきた!


「私の時代が来た!」


 ゲーミングチェアにドカッと座る。


「ふぅ、冗談はさておき……」


 穂香がダンジョンに入ってしまった可能性があるということは、それなりに危険性が高そうだ。シロが付いているとは言え、そんな状況ではどうにもならないだろう。落ち着いていられる状況ではなさそうだ。


 急いで身支度を整え、カバンの中に催涙スプレーと護身用の警棒を入れる。一人暮らしということも色々と揃えている。それに昔から体が小さかったこともあり、舐められまいと空手をやっていた。

 とはいえ、体格差というのは簡単に覆すことができないこともよく知っている。


「よし」


 準備を万端に整えた私は家の扉を開け放った。


 ぐぅ


 お腹がなった。そういえば起きてから何も食べていない。

 ん、出かけるのは軽くご飯食べてからにしよう。ついでに荷物に食べ物と飲み物入れておこう。

 きっと穂香もお腹すかしてるに違いない。

読んでいただきありがとうございました。


間が開いてすみません。

一回書き終わったあとに、操作ミスで消してしまって気力失ってました。

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