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狐さん、スキルを習得する

 サポートボードは、<ステータス>や<スキル>など7項目が表示されたメニュー画面に戻った。


「どうしよう……」


 ダンジョンから直ぐには出られないと判断した穂香は、しゃがみ込んで落ち込む。そんな穂香のもとに、シロが近寄ってきて元気を出してっと励ますように彼女の頬っぺたを舐めてくる。


「慰めてくれるのシロ? ありがとう~」


 穂香はすり寄ってきたシロを撫でながら心を落ち着かせ、思考を巡らせる。


「リタイアは……できないよね」


 肉体のロストというのが死ぬことと同義だとしたら、選択肢としては最低だ。確かめる術もないし、リタイア画面を開いてうっかりリタイアを選択してしまいそうで、穂香はリタイア画面を開くことすらしたくなかった。


「とりあえずこのダンジョン? から出ることを目標に行動しよう」


 サポートボードに示されたダンジョンという言葉を思い出す。穂香のダンジョンという言葉のイメージは迷宮というものだった。それなら、きっとどこかに出口があるはずと自分に言い聞かせる。そして、出口へと向かうために必要なことを考える。


「そのためには、このサポートボードを有効活用しないといけないわけだけど、……う~ん、何から始めようかな?」


ダンジョンを歩き回ることを考えると、またあの大きな蟻と出くわす可能性が真っ先に浮かんだ。そして、その対策が必要だと穂香は考えた。


「となると……まず必要になるのは、攻撃手段だよね」


穂香は両手でシロの頬を掴んで、軽く引っ張る。柔らかく伸びて心地よい。シロもこうされるのが好きなのか大人しくされるがままになっている。


(そういえば、シロはこの口でさっきの蟻を噛んでいたんだよね……)


 シロの頬から手を離した。それにしても、この愛らしい口のどこにあんな力があるんだろうかと考える。思い当たるのは一つだ。


「スキルかな……」


「ワン!」


シロは穂香の疑問に答えるように吠えた。


(武器になりそうなものは持っていないから、スキルに頼るしかない!)


 穂香は「よしっ」と覚悟を決め、サポートボードに向き直る。


「スキル」


 そう言うとボードに表示されている画面がスキル画面に変わった。


(私が持っているスキルポイントは1ポイントだけ。そして、1ポイントで取得できる攻撃っぽいスキルはこの二つだね)


 狐火:1ポイント

 強撃:1ポイント


(強撃はなんとなくイメージできるけど狐火ってなんだろう? 火が出せるようになるのかな? 妖怪みたいなイメージしかわかないや)


「スキルの詳細とかって見れないのかな~?」


 そういって、指でサポートボードに記されている“狐火”を触れるようにする。すると別の画面が出てきた。


『狐火を取得しますか?』


「う~ん、だめか~」


 どうやらスキルの詳細は見れないようだ。


(となると今ある情報だけで、どっちのスキルを取るか決めないといけないのか~。もし、強撃を取得したら……)


 穂香は、さっき見た大きな蟻を強撃を使って倒すイメージを浮かべる。武器は持っていないので、素手で大きな蟻の顎下からアッパーを入れる、すると蟻の頭がスポーンっと上に飛んでいくシーンが脳裏に描かれた。


「いや、無理無理無理!」


 穂香はぶるるっと首を振った。大きな蟻に近づくのも怖いというのに、素手で殴るなんて絶対に嫌だと即座に強撃を取得するという選択肢を捨てた。


「よし、狐火を習得しよう」


 取得するスキルを決めた穂香は、サポートボードに向かってい言う。


「狐火習得します!」


 すると、画面が切り替わった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<スキル>

 サポートボード、調理、聴覚強化、脚力強化、狐火

<所持スキルポイント> 0

<習得可能スキル>

 嗅覚強化:1ポイント

 瞑想:1ポイント

 幻術:2ポイント

 強撃:1ポイント

 獣化:3ポイント

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「うん、スキルに狐火が追加されてるね」


 穂香は画面をステータス画面に切り替えて、自分のMPを確認する。


 MP:90/100


 MPの数値はさっきまでと同じだった。スキルを試してみようと、試すのにちょうどいい場所へ移動し、壁に向きあった。シロは大人しく、穂香の様子を近くで伺っている。


「そういえば、スキルってどうやってどうやって発動するんだろう? あ、でもこのボードもスキルなんだっけ?」


穂香は<スキル>にサポートボードがあることを思い出した。


(つまり、あとはイメージ次第ってことだね)


 穂香は手を前に突き出し、火を出すイメージをしてスキル名を唱えた。


「狐火!」


 しかし、手の前には火の気はまるでない。

 穂香はがっくりと肩を落とした。


「そんな簡単に上手くいかないか~」


 と言ってため息を吐いた。すると顔の付近にチロチロと火が出てきた。


「うわっ!?」


 穂香が驚くと、その火は直ぐに消えてしまった。


「……もしかして今の火って、口から出てた?」


 ステータス画面を確認するとMPは90から80に減っていた。


「やっぱり、スキルは発動してたんだ」


 思いついた疑念を晴らすため、再び「狐火!」と唱えたあと息を吸い、口をすぼめて息をふ~! っと吹いてみた。そうすると穂香の口から『ぼぼぼぼ』と勢いよく火が出て、壁に当たった。


「思ってたのと違う……」


 穂香はもっとかっこいいイメージをしていた。しかし、実際に発動したスキルは自分がまるで大道芸人になったかのように感じさせ、スキルが発動した興奮より少し残念な気持ちが勝ってしまうのだった。

読んでいただきありがとうございました。

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