表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/79

55.愚か者の末路は総じて不幸だ

 王都周辺でゴミ掃除に精を出したアロルドが、本家に顔を見せたのは数日後だった。


「伯父様、お仕事お疲れ様でした。午後のお茶の時間はご一緒できるでしょう?」


 昼過ぎに顔を見せたアロルドへ、無邪気に駆け寄るのはジェラルディーナだ。護衛を兼ねて、婚約者のカストもしっかり一礼した。礼儀正しさはもちろん、姫への接し方も問題ない。よい拾い物をしたな。アロルドは満足げに頷いた。


「姫のお誘いとあれば、何を差し置いても応じますとも」


「うふふっ、伯父様はいつもそうね。あ、お父様なら執務室にいらっしゃるわ」


 報告があるのでしょう? 先回りして告げる姫と挨拶の抱擁を交わし、アロルドは本家当主である弟の執務室へ足を向けた。抱擁の際、少し悔しそうな顔をしたカストににやりと笑う意地の悪さは、自分でも直らないので諦めて欲しい。背中に突き刺さる嫉妬の視線が心地よかった。


 姫を手に入れる幸運な男なのだから、この程度は我慢しろ。そう背中で語って、悠々とこの場を後にする。屋敷に入る手前で振り返ると、ジェラルディーナは花を摘んでいるようだった。花鋏を手に、白い花を選ぶ。


 それでいい。ジェラルディーナに汚い世界を見せる必要はない。彼女の手が届く範囲は常に整えられ、目に映る世界は美しく輝いていればいい。薄汚れた手を覆い隠し、たまに近くで触れるだけで満足だった。もちろん、カストが姫に釣り合わぬとあれば遠慮なく拐うが。


 執務室の扉をノックし、応えを待って入室する。ある程度書類処理が一段落したところらしい。机で手紙を書くリベルトが顔を上げた。


「兄上、少し待ってくれるか」


「構わん。それより執務室ではアロルドと呼び捨てろ」


 公私を使い分けろと告げるアロルドに、リベルトは心外だと顔に書いて反論した。


「そう仰るアロルドも、口調が兄が弟を叱るようでしたよ」


「……それは大変失礼いたしました。ご当主様」


 久々に弟にやり込められて、逆に嬉しくなる。以前は手紙を後回しにして俺を優先したが、今は逆だ。そういった些細な変化が、弟に当主の座を押し付けた罪悪感を薄れさせた。やはりリベルトこそが当主に相応しい。


「お待たせしました。二人なので兄上とお呼びします」


 公私を分けたと宣言されれば、アロルドも異論はない。応接用のソファに腰掛け、報告を始めた。


「元王太子ヴァレンテは、二つ向こうの国へ奴隷として売り払った。あの国の奴隷への扱いは牛馬に等しい。あの様子では三ヶ月もたぬだろう」


 リベルトの表情は変わらない。アロルドはさらに続けた。


「元側妃は実家が爵位返上で平民となった。つい先日、隣国へ逃げようとして捕まったばかりだ……国境付近の山賊は女の扱いにさぞ慣れているだろうな」


 父親のわからぬ子を何人か孕むが、産むことはない。彼らにとって必要なのは、欲を満たす女だ。孕んだとしても無理やり流産させるはず。その扱いの酷さは、奴隷に匹敵する。死んだら別の女を攫えばいい。その程度の感覚で扱った。


 言わずとも構わない部分は省いた。もちろん伝わっている。無言で頷くリベルトは、そこで指を組んで背もたれに寄りかかる。


「最後に、男爵令嬢だ。モドローネ男爵家は没落、家屋敷もすべて手放し逃げた。両親はその後、不幸な事故に遭って死亡。娘は身を売ったが……これまた運がないことだな。病を移されたとか」


 世間話のように、彼らの末路を伝える。不幸な事故、山賊、娼館での伝染病……すべてがアロルドの手の上だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ