表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/79

26.私は父親として失格だった

 王都へ続く街道の途中で、大きな川を渡る。以前は国境だった川の向こう側が、シモーニ公爵領だった。かつて小国として独立した土地は、豊かな実りと温厚な人々によって築かれた平和が馴染んでいる。


 この小国は直系王族が絶えたことで、我が国に併合されることになった。戦いを望まない国民の気質が、隣国の庇護下に入ることを受け入れたのだ。調印式で我が国の領地となった小国は、当時王弟であった父上が拝領した。それ以降、小国であった頃と変わらぬ文化を保ち、静かで平和な日々を繰り返している。


 母上がこの小国の公爵令嬢だった。直系ではなくとも王族の血を受け継ぐシモーニ家は、領民にとって国王と変わらぬ存在として愛されている。それが伝わるから、両親はもちろん、私達もこの領地や領民を大切に愛し守るのだ。


「もうすぐですわね」


 父が生きていたら、孫ルーナの王都行きを断固として拒んだだろう。橋を越える馬車の窓から見える景色に、頬を緩める愛娘の横顔。己の罪が胸に突き刺さる。私も妻も、選択を間違えた。


 この子の未来を思って手を離したが、本当にルーナの将来を考えるなら親の庇護下で過ごさせるべきだった。今になれば分かる。王都に出向いた時、遠慮がちに微笑む彼女の姿ばかり見ていた。距離があるようで寂しく、だがどう伝えればいいか迷った。


 王宮の夜会で顔を合わせれば、王族の姫君さながらに振る舞うルーナは遠くて。挨拶をした後の言葉は上滑りした。まるで気持ちの通わない外交のように。あれは私達の罪だ。窓の外の故郷に目を輝かせる今の姿が、本来の娘なのだとしたら? 私は彼女から、本当の笑顔すら奪ったのか。


「ああ。()()()()()()()()帰ってきたな」


 被害者は娘だ。なのに、私が泣きたくなるなど……。振り返ったルーナの明るい表情に釣られ、沈んだ気持ちが浮上する。柔らかい笑みを返せただろうか。


「お父様、よろしければ膝枕をしますわ」


 夜通し走る馬車の旅は辛かろう。そう考えて眠る娘に膝を貸したが、まさか逆に気遣われてしまうとは。情けないと思うより、喜びが先に立った。


 まだやり直せるのか? お前が私達を拒まないなら、溢れんばかりの愛情を注ごう。過去に注げなかった分の愛や慈しみを、ルーナに示したかった。今度こそ、間違えたりしない。たとえ、シモーニ公爵家が王家に睨まれるとしても、私はお前の望みを叶えたいのだ。


 言葉に甘えて横になる。窮屈な馬車の中で、柔らかな娘に触れてその温もりに目を閉じた。まだ取り戻せるものはある。がたんと大きく揺れた馬車に、優しい手が頭を支えた。触れるやや冷たい指先は、私を許すように頬を撫でる。


 この子は優しいから、私達を責めたりしない。その気持ちに甘えないよう、ルーナを包み込んで愛そう。彼女自身の意思で選んだ人に渡すまで……いっそのことそんな日が来なければいいと願うのは、父親として失格なのだろうね。口元が歪んで、胸が苦しかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >いっそのことそんな日が来なければいいと願うのは、父親として失格なのだろうね。 男親なら~誰でも思う~♪。(某演歌風に)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ