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見た目はこんなでも酒豪なんですからね?

仕事を終えた俺と先輩は会社から電車でしばらく走ったところにある、行きつけの居酒屋に来ていた。ここは俺のアパートからも近い為、夜ご飯を作るのが億劫な時も顔を出している。

いわゆる顔馴染みってやつだ。


「プッハー!!!上手い!!この為に生きてるってかんじですね!!」


一気にジョッキを煽る先輩。

パッと見小学生がお酒を飲んでるようにしか見えないが、これでも二十七歳。法律的には全然セーフなのだ。


「何言ってるんですか……、先輩もお酒飲めるようになったの去年でしょうに。

また飲みすぎて俺に絡まないでくださいよ?」


この香音先輩、一緒に飲むとすっごい絡んでくるという面倒くさいひとなんだけど……、


「そういえば先輩と飲むのって久しぶりな気がしますね……、」

「久しぶりっていうか、サシで飲むのは三年振りくらいじゃないですか?いつもは三吉君と三人で飲むか、誘っても彼女がーって言って来ないじゃないですか。」


そっかー、そうだよな。ちょうど三年くらい前、俺は彼女が出来たんだ。なのに先輩と飲みに行くのはあんまり不義理だと思い、いつも健太を連れてくか断るかのどちらかだった。


「にしても、今日は良かったんですか?飲みに誘っておいて言うことじゃないですけど、彼女さん怒りません?」

「あはは、もう怒る人なんていませんよ……」

「……?」


まじか、先輩は俺が自虐ネタを言ったのにピントきてない顔をしている。

というか首を傾げてる。いくら鈍感な人でも今ので気づかないのはヤバイ。


「振られたってことですよ……、」

「ああ!!直哉君は失恋のショックで元気が無くなったんですね!?」

「……、」

「わわっ!ごめんなさい!!そんなつもりじゃ!!そんなに落ち込まないでください!」


俺が落ち込む振りをするとアワアワする先輩。なにこれちょっと可愛い。


「冗談ですよ……。そんな落ち込んでませんて、慌てすぎですよww」

「もうからかいましたね!?許しませんよ!?今夜はとことん、終電まで付き合って貰いますから覚悟しててください!!」

「それはいいですけど、終電逃して帰れなくなるのは先輩ですからね?ここは俺の地元ですし、飲みすぎないで下さいよ?」


この先輩、飲める分量を考えずに飲むくせがある。最初に注意しとかなくては……。


「いいんです!明日は土曜日なんです!!お休みだからいいじゃないですか!!好きなだけ飲ませてくださいよぉ」

「はいはい、もう好きになさってください」

「今言質とりましたからね?今日は吐くまで飲みますよー?大将!一番強い酒を!!」

「お嬢ちゃん、大丈夫?もう既にベロンベロンだけど?」


大将の言う通り先輩はもうベロンベロンに近い状態だ。ま、いつものことだから気にしないけどね。


「むー!馬鹿にしないでください!私見た目はこんなでも酒豪なんですからね?」

「酒豪は酔っ払いませんよ……。」

「うるさいですよ!ささ、先輩にお酌しなさい!!」


ったく、この先輩は飲むといつもこうだ。

だがここでふと朝から胸の奥にあった鬱な気持ちが無くなっていることに気づく。

それがお酒のせいか、はたまた先輩のおかげか分からないが飲みに誘って来たのも先輩だからどっちにしろ先輩のおかげか……。


「先輩、今日はありがとうございました。」

「ん?何がですか?」

「いや、俺のために、その、飲みに誘って貰って……。」

「……、そんなことですか。いいんですよ!後輩なんだから気にせず私に甘えてくれて。って言っても、いつも後輩に甘えて仕事を頼んでる私が言うことじゃないですね」


そう言ってニコッと笑う。

その顔はびっくりするくらい綺麗で思わず見惚れてしまいそうになる。


「いえ、先輩が俺に仕事を回すのは先輩の引き受けてる仕事が多すぎるからじゃないですか。それなのに他人のことばっかり気を掛けてるからですよ。たまには自分の仕事だけに集中するのも必要だと思いますよ?」


と、先輩はびっくりしたような顔をする。


「どうかしました?俺の顔になんかついてます?」

「い、いや、見ていてくれたんだなーっと……」

「そりゃ嫌でも目に入りますって。しかも先輩が俺に頼む仕事も先輩の仕事の三割も満たないじゃないですか。もっと俺に押し付けてもいいんですよ?」


先輩は顔を真っ赤にする。酔いでも回ってきたのかな?


「直哉君は本当に私を甘やかすのが上手ですね?そんなこと言われたら傷心中なのに付け込まれちゃいますよ?」


酒の影響もあってか言ってることが理解出来ない。ま、俺を頼りにしてる的なことだろうか。


「俺としても先輩のこと信頼してるのでこれからもよろしくお願いしますよ。」

「うぅー、そんなこと言われると余計手を出しずらいじゃないですかぁ。もういいです!大将!もう一杯おかわりで!!」

「ちょ、先輩、ペース考えてくださいよ!?」

「お嬢ちゃん、これくらいにしてた方がいいんじゃ……、」


そう俺と大将に心配されつつも、それを無視し酒をがぶ飲みした先輩は二時間後







「うぉえ─────!!!!!」

「だから言わんこっちゃないですか。」


めちゃくちゃ吐いていた。

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