第9話 B級ダンジョンと赤鎧の男【2】
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その赤鎧の男は、B級ダンジョン近くの酒場にいた。酒場は多くの冒険者で賑わっており、絶えることのない話声が至る所から聞こえてくる。
―――すると、誰かが全体に向かって大声で叫ぶ。
「おい!!みんな聞いてくれ!!今日このダンがA級ダンジョンクリアしたんだよ!祝ってやってくれ!」
ダンと呼ばれた男は頬を赤らめていたが、その瞬間大きな歓声に包まれた。酒場が熱気に飲まれてゆく。
これは、酒場の伝統行事のようなものだ。B級ダンジョンを狩場としている冒険者がよく利用するこの酒場は、彼らにとって第二の家と言っても過言ではない。なので、こうやって良い知らせがあると皆で喜ぶのがここの慣習だった。
「よくやったな!!」
「これでお前もA級冒険者じゃねぇか!!すげぇよ!」
至る所からダンを労う言葉が飛び交うが、赤鎧の男は喜ばない。喜べるはずがなかった。
なぜなら、男の友人がA級ダンジョンに行ったきり帰ってこなかったからだ。
A級ダンジョンは難易度が高い。なので、クリアすると英雄視される反面、そこで帰らぬ者になってしまうことも少なくない。男の友人もその一人だろう。
友人の死と、酒場の歓声の憎さに男は酒を飲む。
(酒場の奴らはいつもこうだ。生き残った者に対しては騒ぎ立てるくせに死んだ奴らには目も向けねぇんだ...)
そう思いながら男は寂しそうに窓の外を見る。友人と二人でB級ダンジョンに行った日々を思い返す。
彼がA級ダンジョンに行くと男に告げたあの日。
男は止めたが、彼は「大丈夫」とだけ言って男の前から立ち去った。それが彼との最後の会話になるとも知らずに。
すると、彼が見ていた窓の外、ダンジョンの前に、彼の見慣れた顔の男が現れた。
男は瞬時に酒場の外に出る。酒場の外は少し風が吹いており、男はそれを心地よく感じた。彼はその友人と思わしき人に駆け寄る。
(生きてたのか!?って違うな。見間違いだ。彼が生きてるはずがねぇ。)
そう。彼は死んだのだ。そういってまた酒場に戻ろうとした。だが、男はあることに気が付いた。
(ん?彼の装備...ほとんど丸腰だったな。武器も木の棒のようなものだったし...ひょっとしてこいつ初心者じゃねぇのか?見たところ学校には通ってなさそうだが...止めないと...っ)
男はその初心者と思わしき青年に話しかける。もうこれ以上誰かが死ぬところを見たくなかった。その友人に似ているから尚更だ。
「おい!!そこのお前、待て!!」
と男は叫ぶ。対して彼はめんどくさそうな顔で男を眺めている。
(強く言い過ぎたか...)
と男は思ったが、結局会話の末、結局彼は走って行ってしまった。
(彼では絶対に勝てないだろう。仕方ない。ついていくしかないか...)
とあと少しで閉じてしまう扉を間一髪で駆け抜け、彼の後を追いかけていくのであった。
◆
すると、やはり彼の予感は的中していた。
彼は道中の魔物にやられ息絶えるところだった。どうやら、あの魔物はゴブリンキングらしい。しかも6体の群れになっている
男は回復薬を手に取り即座に彼のそばに行くが、既に彼の意識はなかった。
(やはり...。遅かったか...。畜生...っ)
男は泣きながら、B級ダンジョンを進んでいくのであった。
時間がなかったため、サブストーリ的なものですが、ご了承ください。
また、手直し等も短時間で済ませたのでつまらない話になっていますが明日からまた続けていきますので、これからもお願いします。
soramame