第6話 真の職業
〇
「あ、あれ?なんで生きてるんだ?確かあのダンジョンでボスに殺されたはずなんだが...」
そう言って、和樹は宿屋で目を覚ました。朝日がすでに窓から差している。どうやらかなり長い間寝ていたようだ。
和樹が起きた宿屋には見覚えがあった。それは昨日彼が泊まった宿屋だった。
何が自分に起こったか分からずにいると、部屋の扉の外から声が聞こえた。この宿主と思われる声だ。
「和樹さん。宿は一泊のはずだけどね?今夜も泊まっていくのかい?なら宿賃を頂くことになるよ!」
と大きな声で叫んでいた。どうやら和樹に言っているらしい。困惑した和樹は宿主に聞き返した。
「すみません!僕がこの宿に来たのっていつでしたっけ?」
と聞いたが
「何を言ってるんだい?昨日の夜来たに決まってるじゃないか!あんた大丈夫か?」
と言われてしまった。どうやら、和樹がダンジョンに行っていない事になっているらしい。
しかし、和樹のステータスを見てみると、通常クエストはすべてクリアの文字が出ている。ということは、間違いなくあのダンジョンに入り、オークキングに殺されたのだ。
そんなことを考えていると、また宿主が声を上げた。
「和樹さん!はやく決めてくれねぇか?こっちも忙しいんだわ。」
「...もう一泊お願いします。後でお金は払いに行きますので!」
と扉をあけながら和樹が言い返すと、はいはい分かったよと言いながら、宿主は階段を下りて行った。
(よくわからないことになったな...だがステータスを見るくらいしかできないな。)
と彼がステータスを見てみると、とんでもないことに気が付いた。
-----------------------------
和樹 Lv:011[職業:ネクロマンサー]
攻撃力:30
体力:43
防御力:60
知力:999
魔力:---
[能力]
会話
念話
鑑定
死後強化
[スキル]
<特殊>
死者再生<II>
<通常>
居合切り<I>
[持ち物]
無し
-----------------------------
(ん!?なんだこれ!?職業が変わってる..ってレベルも大幅に上がってるし...ほんとに何があったんだ...)
和樹はがらっと変わっていたステータスに驚いていた。なぜなら、職業だけでなくそれぞれの力、さらにはスキルまで変わっていたからだ。
しかし和樹は最初は困惑していたものの、徐々に自分に起こったことがなんとなく分かってきた。
というのも和樹は元の世界ではRPGゲームについては大抵は知り尽くしていた。なので、ネクロマンサーという職業がどのようなものなのかというのも大方予想ができたからである。...まだ驚きは隠せていないが。
他にもいろいろなスキルについて推測することにした。
(念話っていうのは文字通り喋らなくても相手と頭の中で会話できるってことだよな、多分。鑑定は物を見るとその情報が詳しく分かる。また、人も対象だ。さっきの宿主が商人だってことも確認できたからな。)
まだまだ彼は推測をやめない。
(死後強化は名前通り死んだら自分が強化されるんだろうな。このスキルのおかげで助かったと思うんだが、よく考えてみるとこいつはチートすぎんじゃねぇか!?)
死後強化は自分が死んだとき、自分自身が大幅に強化される。詳しくはわかっていないが、一回死んだだけで8レベルあがったことを踏まえても、かなりの力だろう。
そしてなによりも、絶対死なない。これが一番和樹を驚かせた。普通なら自分が魔物や人に倒されたとき、リスポーンはしない。そのまま、息絶えて二度とこの世界に現れることはない。これは現実世界と同じだ。
しかし、このスキルがあることで死んだら生き返る。確定なのかはまだ定かではないが、どちらにしろ力は絶大すぎるスキルだ。
(この死者再生っていうのは物を再生させるのかな?人も再生できるのかな?人はまた後で試してみるとして、物にちょっと試してみるか。)
「...再生!!あれ?違うのか?...再生せよ!!...」
と和樹が声を上げながら昨日の夜に食べて捨てたリンゴの芯に触れるが、なにも起こる気配はない。
(なんだろう。やり方がわからない。原因は魔力がないからかな?ってか魔力ってどうやったら手に入れるんだろう?)
(そもそも、職業選択の時点で職業は注意深く選んだけど、その中にネクロマンサーなんて職業は無かったんだけどなぁ。)
悩みが尽きることのない和樹だったが、彼なりに前に進んでいこうと決心していた。