第5話 オークキング
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和樹はダンジョンの奥深くまで進んでいた。ダンジョンの見た目は、小さな洞窟のような薄暗い空間である。
彼はすでに通常クエストをすべてクリアしていた。というのも、ここへ来るにたく間に大量のスライムを狩ってきたからである。
スライムは通常、D級魔物であり、この世界において最弱の魔物とされているが、そのとてつもない繁殖力から、初心者冒険者たちの絶好の餌食となっている。
また、スライムを倒すと少量ではあるがコルをドロップするので、コル稼ぎにおいてもなくてはならない存在なのだ。
和樹はその小さな木の棒で少なくとも20体以上スライムを倒した。ほかにもゴブリンやコウモリ型の魔物なども出現したが、特に問題なく倒していった。スライム一体で大体5~6コル程ほどドロップするので100コル稼ぐのは簡単だった。
通常クエストを達成したとき、和樹の目の前にクエスト達成の文字が現れた。詳しく見てみると、
”クエスト完了。(D級魔物を狩れ) 合計50コル,100EXPを報酬として獲得しました。”
”クエスト完了。(100コル集めろ) 合計150EXPを報酬として獲得しました。"
「よし!通常クエストは終わったぞ。コルも美味しいけどこのEXPってなんだろう?」
と和樹が言っていると、また彼の目の前に文字が現れた。
”レベルが上がりました! (Lv.1->Lv.3) 詳しく表示しますか?”
「おぉ!EXPはレベルを上がるのに必要なのか!じゃあ、”はい”と。」
和樹が”はい”の文字を押すと、大きなウィンドが表示される。
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和樹 Lv:03[職業:勇者]
攻撃力:23 (33) -> 26 (38)
体力:18 -> 23
防御力:08 -> 12
知力:12 -> 14
魔力:---
[能力]
会話
[スキル]
<特殊>
---
<通常>
居合切り<I>
[持ち物]
・木の棒
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「おぉ、かなりステータスが上がっているぞ!この調子でどんどんレベル上げするか!まあ、スキルとかは変わってないけど。」
そうしている間に、和樹は巨大な扉がある場所に着いた。どうやらボスの部屋らしい。
C級ダンジョンなので、和樹が恐れるような魔物は出ないと知っているが、何かあったらと彼は気を引き締めて扉を開けた。
和樹が扉を開けた瞬間、轟音が響いた。どうやらこのダンジョンのボスが現れたようだ。和樹は反射的に木の棒を構える。
「ボスが現れたようだな...ってあれ?こんな話聞いてないぞ?なんでC級ダンジョンにオークキングがいるんだ?」
オークキングとは本来B級の魔物であり、D級とC級の魔物しか現れないこのダンジョンにいるのはおかしい。しかも、聞くところによるとB級の魔物はC級の魔物とは桁が違うくらい強いらしい。
D級の魔物しか倒したことがない和樹にとって、この敵は倒すのはかなり厳しいだろう。かといって、逃げようとしてもここはダンジョンの最深部である。いまさらこの敵から逃げられるはずもない。
「とりあえず、戦うしか道はないようだな。どちらにせよ、...って、うっ!!」
和樹が戦おうと覚悟した瞬間より早くオークキングが棒を和樹に叩き込んだ。和樹は痛みとともに思いっきり後ろに吹き飛び、入ってきた扉に激突した。
「なっ...これほどまで早いのか...となるとかなりマズいな...とりあえず、立たなければやられてしまうが...」
だが、オークキングはさらに加速し、今にも和樹にもう一撃を喰らわせようとしている。和樹も立ち上がろうと必死だが、先ほどの吹っ飛ばされた衝撃でなかなか立ち上がることができない。
すると彼は、大声で叫んだ。
「くそっ...やってみるか...”居合切り”っ!!!!」
すると、オークキングが和樹に向かって降りかざした棒を和樹の木の棒が間一髪のところで受け流した。
オークキングは一瞬ひるんだものの、また同じようにその巨大な棒を持ちながら和樹に近づいてくる。
和樹はスキルが使えたことに歓喜するも束の間、オークキングは声をあげながらもう一撃を和樹に向けて放とうとしていた。和樹がさっきのスキルでかなり体力的に疲弊している。もう一回スキルを使う体力はもう、残されていない。
「ウォォォオオォォ!!!」
オークキングが渾身の一撃を倒れこんでいる和樹に向けて叫びながら放つ。
(俺はここで死んでしまうのか...もう少し勇者らしいところ見せたかったな...)
と和樹は覚悟した瞬間、助けが来るはずもなく、オークキングの一撃が直撃し、和樹はだんだん意識がなくなり、暗闇に包まれていった。
(あぁ...意識がなくなって.......っ...)
彼は異世界生活二日目にして、死んでしまったのであった。
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