1 戦いの後に
アレクたちの活躍によって、国には再び平和が訪れた。
デベルが召喚した異世界の人間たちは、死亡、もしくはシモンのゾンビとなるという形で解決された。
魔法陣もリリカが消し去ったことによって完全に消滅した。もうこの世界に異世界から何者かを呼び出すことができる手段はなくなった。
ひとまず事件は一件落着ということになる。
このデベルによる一連の事件は、のちに「傲慢子豚の反逆事件」として後世の人々に語り継がれることになる。
デベルとアルベルトは、王たちが城に戻るまでの間、ずっとゾンビとして城の中をさまようことになっていた。その間、彼らは思考することもできず、ただ何かを求めてさまよい続けていた。
彼らは一応は首の皮をつなぎとめることができた。
王に反逆した罰として処刑をした方がいいという意見が多数派だったのだが、それでは王の後継者がいなくなってしまうという問題があった。
そのことに加えて、王が「1からデベルを鍛えなおす」という発言をしたため、彼らの処刑は見送られることになった。
その代わりの処遇として、彼らには教育が施されることになった。
教師はシモン。その内容は、彼らの根性を鍛えなおせるものだったらなんでもよいということになった。
いわゆる「教育」の内容は、シモン以外、誰も知る者がいない。
しかし……
「さあ、これから楽しいお勉強の時間ですよ」
「で、デベル様……」
「アルベルト君、何をしているんだ早く僕ちんを守るのだ……」
「「うぎゃあああああ!」」
今も城のどこかではアルベルトとデベルの悲鳴が聞こえてくるらしい。それと一緒にシモンの笑い声も。
噂によれば城の中では絶えず、何かしら鼻につく匂いが気になるようになったということである。
デベルが王になるその時まで、教育は終わることはない。
のちにシモンが真の「死神」として一部の人達から別の意味で信仰されるようになるわけだが、それはまた別の話である。
ロゼは、もう1度国の騎士団へ入ることになった。
今回は騎士団長としてではなく、騎士団の教官としてだ。
「お前たちが王を守る立派な騎士となるためには、今以上の力が必要だ。少なくとも私と打ちあえるだけの実力を持つことができるように、今から叩きなおしてやる」
ロゼは張り切って騎士たちと向き合っている。胸には騎士団としての紋章がいつも輝いている。
彼女が攻撃を放つたびに城の城壁は半壊し、騎士たちの鎧は砕け散った。
どれだけ新調してもすぐに鎧が砕け散る状況から、騎士たちはついに生身でロゼと渡り合う境地に立たされることになる。
このことが後に、この国の騎士団を「鋼の騎士団」と呼ばしめることになる。
ロゼの頬には、いまだ一線の傷痕が残されており、その頬に傷をつけたとグラムは騎士団の中でも伝説の存在として扱われるようになった。
ちなみにそのグラムも今ではすっかり生身の騎士団長となっている。
リリカはアリアンテの師匠として極大魔法を伝授している。
アリアンテはリリカの弟子というだけあり、技の飲み込みも早く、魔力量も増加しようとしていた。
デベルが使用していた魔法陣がリリカが作成したものであるということは、のちに国の中でも明らかになった。
リリカ自身が報告したことであった。
「すべては私のおごりです」
王の前でリリカはそう言い切った。
彼女の処罰をどうするかについては、いまだ国の中でも審議中のことである。
リリカはただ、今できることとしてアリアンテの魔法の完成に力を注いでいた。
国の復興は少しずつ、着実に進んでいた。城下町にも人が戻りだし、新たな国としてのスタートが開かれることになる。
デベルの銅像が粉々にされて復興の資金とされている。
新たな制度、新たな暮らし、勇者の仲間たちによる新たな使命。
1度不自然に回転していた歯車が、1つずつ元に戻っていくのを皆が感じていた。
そうした中でアレクは1人、山の中で惰眠をむさぼっているのであった。
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