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8-7 城の中でも大暴走なのです!

「敵襲だ!」

「急いで捕まえろ!」

「ころせーー!」


 アレクたちの戦闘はさっそく始まっていた。

 城の中に入るや否や、すぐさま、騎士の服装をした者たちが、アレクたちのもとへ駆け寄ろうとしていた。


「なんか、思ったより早く来ましたね」

「そりゃあ、あれだけ派手に門壊したらこうなるだろう」


 ぞろぞろと集まって来る騎士たち。彼ら全員がアレクを知っている様子はない。

 みな、デベルの召喚のもとに集まった異世界の人間たちだった。


 集まって来る敵たちを、ロゼは眼を輝かせながら見ている。


「すごいぞ、アレク! 強そうな敵があっちにも、こっちにもたくさんいるぞ! これ全部倒していい奴なんだよな!」

「ああ、好きにしていいぞ」

「みんなが騎士の紋章をつけているのが残念だが、私が本物なのだということを思い知らせてやる!」


 ロゼはそのまま敵の中に突っ込んでいった。


雷の槍(ライトニング・ランス)


 敵の中に風穴があく。

 悲鳴とロゼの笑い声がまじりあうカオスな現場が生まれていた。


「あーあ、行っちゃった」

「まあ、ロゼはいいよ。ああいうやつだから、何とかやるだろう」

「それで、アレク。作戦は?」


 シモンはアレクに訊ねる。

 アレクは特に迷うこともなくふっと笑った。


「効率よくやる。それだけだ」

「アレクらしいや」

「さっさとデベルのところまでたどり着いて帰ろうぜ、こんなところ」

「了解、それじゃあ戦闘開始ってことで」


 それだけ言うとシモンもゾンビを呼び出した。

 攻めてくる敵に対してゾンビたちがい勢い良く突っ込んでいく。


「な、なんだ。ゾンビがきたぞ!」

「ぐああああぁぁ、噛まれた」

「おい、気をつけろ! こいつに噛まれるとやばい!」


 敵の一群はゾンビによって早くもパンデミックが起こり始める。

 攻撃しても簡単に死ぬことはないゾンビたち。その醜さと慣れない死臭が彼らを混乱に陥れる。


「よかったね~みんな。仲間が増えたよ」


 シモンは新しくゾンビになった者を優しくなでてやる。その表情は慈愛に満ち溢れていた。

 固まっていた敵の軍団が、ゾンビを避けるようにバラバラに散り始める。


「うまくやってくれていますね。シモンは」

「あれで僧侶だっていうんだから、意味が分かんないよな」


 リリカとアレクはのんびりとシモンやロゼの様子を眺める。

 2人の不意打ちによって、敵がすぐにアレクたちのもとへやって来ることはなくなった。


 しかし、それでも敵の攻撃は飛んでくる。


大爆発(エクスプロージョン)!」


 アレクとリリカを囲むように魔法陣が浮かび上がる。

 魔法系の能力者も追いついてきたようだ。


「大結界」


 アレクはすぐさま結界を張って攻撃を防ぐ。それと同時に結界の外ではいくつもの爆発が起こり、アレクたちを襲おうとしている。

 爆発が終わってみた時には、壁が砕け、アレクの結界もほとんど壊れてしまっていた。


「やっぱり結界だけで防ごうっていうのは無理か」

「まあ、アレク様の結界を壊して来た能力を持つ人たちですからね」

「……となると、攻撃は打ち返すしかないと」


 アレクはため息をつく。

 彼の中には危機感ではなく、ただただ、面倒くささが占めていた。


「業火球!」


 敵の第2陣が飛んできた。

 巨大な火の球がアレクたちのもとへ飛んでくる。


「来ますよ!」


「業火球」


 アレクも同じ魔法で向かい撃つ。

 巨大な火の球が城の中で衝突する。

 両者そのまま消えてしまう。という訳ではなく、ぶつかり合った火の玉の中から、アレクの球だけが敵の魔法を飲み込んだまま敵のもとまで飛んでいく。


「うわあああ!」


 アレクの魔法が敵に命中する。

 敵からはある程度悲鳴があがったものの、しばらくしたら、その姿はまるでなくなってしまっていた。


 アレクとリリカはそのままのんびりと城の中を歩き進める。

 ロゼは剣士を薙ぎ払い、アレクが魔術師を焼き払う。逃げ去ろうとする者はシモンがゾンビにする。


 そして、リリカは壊れていく城を必死に修復し続けていた。


「なんか、私だけ役割違くないですか!」

「仕方ないだろ。攻撃要因は事足りているし。それにお前は結界を消し去りに来たのが、もとの役目だろ?」

「まあ、それはそうなんですけど」


 アレクは城の中を見つめる。敵の数もだいぶ減って来た。

 いくら能力のある者たちといっても、魔王を倒したことのあるアレクたちとは、やはり動きが違った。

 デベルの部屋までもあともう少しでたどり着けそうだった。


「なあ、リリカ」

「はい」

「魔王と戦った時のこと、覚えているか?」

「魔王城のことですか? 覚えていますよ」

「あの時みたいにさ、城燃やしちゃおうぜ」


「……は?」


 リリカの思考がストップする。


「いや、いやいやいやいやいやいや」

「なんだよ」

「いやいやいやいやいや、それはないですってアレク様」

「ダメか? 城が燃えちゃえばデベル達も勝手に出てくるし、いい案だと思うんだけどなあ」

「ダメですよ! ちょっとの間でも。城が焼け落ちたら国が滅びたとでも思われちゃうでしょうが! 王様が戻る城ですし、そのままにしますよ」

「ちぇー、めんどくさ」


 アレクはあくびをしながら、魔法を打ち続ける。

 散々攻め立てていた敵は、もう向かってこようとはしていない。アレクの魔法を受けて体ごとなくなった者たちを見て、異世界の人間たちにも恐怖が芽生えていた。

 逃げ腰の者を倒すことは難しいことではない。


「悪いけど、恨むならデベルでも恨んでいてくれ」


 やがて、城の中にいた人間はいなくなってしまった。

 戦いを終えたロゼたちは、イキのいい顔をしながらアレクのもとに集まって来る。


「久しぶりにいい戦いができて、私は満足だぞ!」

「見てよアレク。さっきからゾンビたちが喜んでいるんだよ」

「お前ら、なんか楽しそうだな」

「みんな、暴れすぎですよ」


 輝いているロゼたちとは対照的に、リリカは疲れていた。

 リリカの影の超がんばりで、城は戦いが起こったとは思えないほど傷がついていなかった。


「なに疲れているんだよ」

「戦いの疲労じゃない何かがありますよ……」

「疲れている暇なんてないぞ。最後の大仕事だ」


 そう言って、アレクは前を見つめる。

 その視線の先には、デベルの部屋が待ち構えているのだった。

お読みくださりありがとうございます!


ドンドン進んでいきます!

もうデベルは目の前なのです!


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