表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/50

8-4 門の前では張り切ることが肝心です

 町の中を抜けたアレクたちは城へと向かった。相変わらず町の中を歩いている人はいない。


「そしたら、あの娘は無事だったのだな?」

「ああ、今はもう町の外に出させたよ」

「そうか。それならよかった」


 少女は、どうやら逃げ遅れてしまった町民の1人だったらしい。


 少女が話すことには、デベルが突然支配をする様になってからというもの、見たこともない騎士団が町を占拠し始めたようだ。

 町の中を勝手に暴れまわり、気に入らないものはどんどん捉えられてしまった。

 城下町を拠点としていた商人はすぐさま退散。住民もほとんど夜逃げ同然で街から出て行った。


 しかし、そんな中でも逃げ遅れてしまった者たちもいたようだ。今回捕まっていた少女もその1人だった。

 彼女らは、騎士団に目をつけられたばかりに、城の中で好きにされようとしていた。


 騎士団は全てデベル王子の命が出ているということで、自らの主張を押し通していた。


「改めて聞いてもくそな話だ」

「デベルは王になったら絶対に暴君になると思ってましたが、まさかこんな早くにその才能を開花させてしまうとは思わなかったですよ」

「あの豚野郎には人間の心なんてないのさ」


 誰もいない町を越えていくと、城までたどり着いた。


 普段なら門番が街を見下ろしながら守っている城門も、今ではしんとしている。

 その代わりに、城の門は固く閉ざされ誰も侵入者を入れないという確固たる意志を見せていた。

 門には魔法陣が張られている。


「結界が張られてますね」


 リリカが魔法陣を見ながら言った。


「認められた者しか出入りできないようにされています」

「そんな魔法あるのかよ」

「まあ、そんなの張れるのは、私ぐらいだと思うのですが、おそらくデベルの手の者の仕業でしょう」


 私だけ、という部分だけリリカはやたら強調しているようだった。


「ゾンビをしたから通して、中から開けるみたいなことはできないのかな?」


 シモンリリカに訊ねた。

 冗談半分、できることなら試してみたいという好奇心の色がうかがえた。


「おそらく無理でしょうね。対象は人間だけじゃなく適用されているらしいので。ゾンビなんて、絶対入れたがらないでしょうし」

「ゾンビなのに?」

「ゾンビだからですよ!」

「なんと。これはデベルを許すわけにはいかない」

「……」


 リリカはシモンに対してそれ以上突っ込まなかった。彼のいうことにまともに付き合っては変な世界に連れていかれてしまう。彼女の長年の経験から判断していた。


「それで、これは解除できるのか?」

「難しそうですね。制限付きな結界は対象が限定的になる分、複雑な魔法陣になるので解除が難しいんです。やるとすれば……」


 リリカが門の方を見つめる。

 アレクたちの視線はリリカの方に集まる。


 やがてリリカは楽しそうな眼をしながら振り返る。


「門ごとぶっ壊してしまうかですね」

「おお! そんな簡単なことでいいのか!」


 ロゼが嬉しそうに叫んだ。


「ええ、ただ、ちょっと強い攻撃を与えた程度じゃ壊れないとは思います。アレク様の結界くらいの強度はあると思いますので」

「じゃあ、俺が壊せばいいんだな」

「まあ、そうですね」


 アレクは魔法を打つために門の前に立つ。城を守る門は固く閉ざされながら、アレクたちの存在を拒否しようとしていた。


「なんか、懐かしいですね。この感じ」


 リリカが言った。


「なにが?」

「魔王城に行ったときも、同じように正面からぶちかまして行ったじゃないですか」

「……あの時は、リリカがヘマしたから正面突破することになったんだけどな」

「え?」


 そういえば、とロゼも笑う。


「あの時、リリカの魔法が力み過ぎたんだったな」

「結果、門番にばれて奇襲作戦は失敗。結局正面突破でどうとでもなかったからよかったけどね」


 不意に始まる思い出話。

 リリカが話を振ったはずなのに、流れはリリカの予期せぬ方向へと流れてしまっていた。

 彼女の顔が紅潮する。


「そ、そんなこともありましたっけ~」

「あの時は、リリカが本当にこの国の大魔導士なのか疑ったな」


 どんどん赤くなっていくリリカ。頬だけでなく、耳まで真っ赤になってしまっていた。

 その顔をアレクが覗き込む。


「どうする? リリカが魔法打ち込むか? ここなら力込めても大丈夫ですよ、大魔導士様?」

「ムムム……」


 アレクのしたり顔がリリカの視界いっぱいに入って来る。

 その顔を見て彼女の恥ずかしさは頂点に達した。恥ずかしさを取っ払わうようにリリカは叫んだ。


「あーー、やってやりますよ! 大魔導士様の魔力を見せてやりましょうじゃないですか!」


 勢いに任せて魔法陣を展開し始める。

 その様子をアレクたちはほほえましそうに眺めていた。


「地獄の業火 最大魔力!」


 ほほえましい雰囲気とは反対に城の高さをも超える炎が門を取り囲んだ。静かな城下町全体に響くであろう爆発音が襲った。

 その音は、炎の音だけではなく、焼き払われる門、砕かれる魔法陣もろとも飲み込んでいる。

 まさに地獄の騒音だった。


「おりゃああああああぁぁ!」


 やけくそで魔法を出し切ったリリカ。

 その魔法陣のあとには、かつて門だったものは跡形もなく消え去っていた。なくなる火柱と共に、門だったものは灰となって風と共に飛んでいく。


「ハア、ハア、ハア……」


 最大火力を出し切ったリリカは、やり切った表情でアレクたちの方へ向きなおした。


「ど、どうですか……これが大魔導士様の実力です」

「おう、お疲れ様。それじゃあ、中に入ろうか」

「はあ?!」


 リリカの肩をそっとたたきながら、先に門の中に入っていくアレクたち。


「いい一撃だったぞ」

「早くしないと気づかれちゃうよ」


 ロゼや、シモンも淡々とした様子でリリカに一言添えて、中に入る。


「扱い雑すぎませんかーーーー!」


 リリカは残った体力で叫びながら、アレクたちを追いかけるのであった。


お読みくださりありがとうございます!


ep1で書いていたリリカの過去がここで使えました!

デベルの居場所までもう少しです!


感想・評価・レビューなどいただけますと、励みになります。

応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼こちらの作品も一緒によろしくお願いします▼

気軽に読める、モンスターの「合体の館」での不思議な日常の話
「合体やしきの不可思議な日常」

雑多な短編集(不定期更新)
「おさむ文庫の気まぐれ短編集」
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ