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8-2 不穏な静けさ

 アレクたちは、城下町の近くまでたどり着いた。3日ほどの歩いたきりで城下町までたどり着いてしまった。


 それまで、彼らがデベルの刺客と出会うことはなかった。

 そう、誰1人とも出会うことなく、彼らは城下町までたどり着いたのだった。


 出会わなかったのは刺客だけではない。3日を歩いても誰1人として彼らの前に姿を現す人間はいなかった。


「妙にひっそりとしていますよね」


 リリカは不思議そうに言った。


「敵は、城の中にいるのだとしても、国の人間と出会わないのはさすがにおかしいです」

「まあ、人通りの多い道ではないけどな」

「それでも、3日歩いて誰とも出会わないってありますか?」


 リリカの不安はアレクたちも感じ取っていることではあった。


 アレクの山の近くならまだしも、城下町に近づいても誰もいないというのはさすがに不自然だ。商人の1人は出てこなければ商売も成り立たない。


「これは面倒なことが起こっているとみて、間違いないだろうな」


 アレクは姿の見えてきた城下町を指さす。デベルが占拠している城は離れた位置からも存在感を放っていた。


 ――この先に何かある。


 彼らはその何かを解明するために町へと急いだ。

 城下町までついてみても、やはり人の影は見えなかった。ロゼはあまりの静けさにあたりを見渡す。


「見張りまでいなくなっているなんて」


 城の周りを見張る兵たちはもちろん、城下町の人の出入りを確認するための門番すら今の城下町には存在していなかった。

 文字通り、無人な状態がそこには存在していた。


「住民たちはみんな逃げてしまったのかな」


 シモンは落ち着いて言った。このくらいのことは予想済みだったらしい。


「まあ、デベルが圧政を敷いていたというし、逃げ出すのもしょうがないだろう」

「……」

「アレク様?」


 黙り込んだアレクの顔をリリカが覗き込んだ。彼の表情は険しくなっている。


「……逃げられていたらいいけどな」

「え?」


 アレクはそのまま町の中へと歩き出す。リリカたちもその後へと続いていった。


 町の中は、やはり道を行くものは誰もいなかった。道の間には砂ぼこりが寂しく舞いながら、無人の道の間を吹き抜けていく。


 普段は商店が立ち並ぶような市場も、どの店も開いておらず、かつての活気はどこかへと飛び去ってしまっていた。

 シモンが屋台の様子を確認してみる。居るわけはないが、屋台の中に隠れている商人というのもいないようだ。


「やっぱり町の中もすたれてしまっているか」

「商人たちも、圧政が敷かれているような場所では商売なんてしたくないからな」


 町の中の様子を見ても、アレクの表情は険しいままである。その目は町の様子に驚いているという様子ではなかった。

 それよりも、どこかにいる敵を警戒しているような、そんな目だった。


「アレク様、何を警戒してるんですか?」

「しっ!」


 リリカに対して、アレクは素早く指を立てて静かにさせた。リリカは目を丸くするが、やがてその意味に気づくことになる。

 町の中で何やら声が聞こえてきた。ただならぬ様子だ。


「やめてください!」

「いったいいつになったら、いうことを聞くんだ!」

「城にはいかないと言っているではないですか!」

「抵抗したって無駄だぞ。デベル様の許可は得ているんだ。お前ひとりの力で、俺に刃向かえると思うなよ」


 声の方にアレクたちが駈け寄ってみると、少女が男に連れ去られそうになっていた。周りには人はいない。


 あたりは民家のようであるが、誰もいないのか、それとも助けに出てくることができないのか。

 どちらにせよ、少女の抵抗がほとんど無意味に等しいことは変わりなかった。


「なあ、あの男」

「ああ、」


 シモンが男を指さす。男に対して、アレクたちが面識があったわけではないが、男が身に着けているものは、彼らにとっては見慣れたものであった。


 男は王国の紋章を身に着けている。青と赤で染められ、中心い金色の鷲が描かれている。

 この国の騎士になる者にのみ付けることが許される紋章だった。


「デベルの護衛隊ということだな」


 アレクたちの目の前では、王国の騎士の姿をした者が、町の民をさらおうとしていた。

 城下町の民は逃げてしまったか、刺客たち(おそらく転生者)の好みに合った者は城にさらわれてしまったのだろう。


 デベルの暴れっぷりが良くうかがえた。


「これ以上抵抗すると、こうだぞ」


 紋章をつけた男は、地面に向かって手を差し出した。と同時に、地面に大きな穴が開く。どうやら魔法をぶちかましたようだ。


 少女の横で開けられら深い穴に、少女は顔をゆがませる。

 男は、その表情を見て喜びに満たされていた。


「さあ、こうなりたくなければおとなしくするんだ」

「ひっ、ひっ」


 少女はもう恐怖でまともにしゃべることができない。


「くず野郎……」


 アレクが男のもとに駈け寄ろうとしたとき、ロゼが手で静止した。

 ロゼはアレクの方を振り向いていった。


「悪いが、ここは私に行かせてくれないか?」


 そう言うと、ロゼはアレクの返事も聞かないまま、男たちのもとへと進みだした。


お読みくださりありがとうございます!


きな臭い雰囲気が漂ってまいりました……!


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