表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者様は異世界転生が許せない! ~異世界侵略者を最強勇者が迎え撃つ!~  作者: おさむ文庫
ep4 スライムは食べたらおいしいのでしょうか?
22/50

4‐3 スライムは王都でも大人気だったようです

「アレク様、あれ」


 アレクの取り巻きの少女が俺のことに気づいた。もじゃもじゃ頭のちっこい少女だ。

 ……この勇者ロリコンなのか?


「スライムか」


 アレクも僕のことに気づく。スウェット姿でだらしない髪の勇者。

 何だそのニートみたいな恰好は。やけに俺に似ているじゃないか。親近感わかせようとして来るのやめて。

 アレクはあくびをしながら僕のことを見つめている。


「こいつが侵入者なのか?」


 いきなり言い当てられて僕はびくっとしてしまう。

 ただ、この世界のスライムが人間の言葉をわかるのか微妙だ。下手に反応するわけにもいかない。

 とにかく臆病な演技を続けるしかない。

 僕はいま、迷い込んだ山の中で人間に出くわしてしまったスライムなんだ。

 

「スライムですよ?」

「でも、この間はドラゴンが攻めてきたじゃないか。デベルのことだし、今度はスライムで、なんて言いだしそうじゃないか」

 

 ちょっと待てなんでそんなに鋭いんだよ、この勇者。

 ていうかドラゴンって何? あのデブ俺以外に誰か呼んでいたの? 

「初めての奇襲だから大丈夫」って言ってたじゃん。嘘?

 

 アレクはじっと俺のことを見つめる。その視線が痛い。確実に僕のことを疑っている。

 どこからかわからないが冷や汗がにじみ出す。人間だとおでこあたりのはずだが、スライムのどこに流れているのだろう。


 万事休すか……

 

「まあまあ、アレクよく見てみろって」


 そう言う女の声と共に僕は抱き上げられる。

 アレクと一緒に居たもう1人の女だ。おかっぱ頭でスポーティという感じだ。腕もがっしりしている。

 何というかもじゃもじゃの少女とはまたタイプが違う。


 この悪党、相当遊んでやがるな。うらやまけしからん。

 

「このスライム相当怯えているじゃないか。それにこんなに傷だらけだし、きっと迷い込んできたのだろう」

「そいつはロゼの大好きな強敵かもしれないぜ」

「まさか、スライムが最強なわけがないだろうが」

 

 ロゼと呼ばれている女は笑ってアレクをあしらってくれた。

 ナイス!ナイスだぞ! 

 僕が期待していた台詞を全部言ってくれた。あとはそのままアレクのもとに近づいてくれたら完璧だ。

 ロゼと呼ばれている女は僕を抱きしめたまま優しくなでてくれる。


 見た感じ凛としていて美人だ。

 こんな美人さんがアレクなんかの悪党と一緒に居るのは解せないが、こんなに抱きしめてくれるなら、僕はスライムでもいい気がしてきた。

 

「やけに優しく抱きしめるのですね。ロゼは強敵以外には興味ないのかと思ってました」

「人のことを変な人みたいに言って。私はスライムも好きだぞ」

「いやいや変態戦闘狂じゃないですか」

 

 いろいろと物騒なことを言うな。

 さすが、アレクと一緒に居る女たち、一癖はあるという訳か。


 しかし、もじゃもじゃの言う通り、そろそろ僕のことを降ろしてくれてもいい頃だ。

 アレクの警戒も解けただろうし、そろそろ一撃お見舞いしてやりたい。

 

「いや、最近王都では”スライム鍋”なるものが流行っているんだ」

「なんだそれ、気持ちわりい」

「そう思うだろ? しかし、これが意外と珍味でうまいのだよ。私も一度だけ食べたことあるのだが、その味が忘れられなくてな……!」

「はあ、そんなところだろうと思いましたよ」

 

 ちょっと待て。なんかやばい展開になってないか?

 スライム鍋?

 スライムって……僕?!


 完全な手のひら返しじゃないか。

 なにがスライムは好きだよ。それ食材として好きなだけじゃないかよ。

 

「スライム鍋か。最近キノコしか食ってなかったし、たまにはそういう珍味を味わうのもありだよな」

 

 アレクのさっきまでの嫌な目つきが一瞬にして輝きだした。

 この悪党!人のことを珍味扱いするんじゃねえよ!


 やばい、これはアレクをだまし討ちとか言っている場合じゃない。

 一刻も早く逃げないと食い物にされてしまう。せっかくの異世界のチャンスを誰かに食べられるだけで終わってたまるか。

 僕は何とかロゼの腕の中から逃げようとする。しかしこの女、なかなかに強い。

 

「おいおい、どうしたスライム。急に暴れようとするなよ」


 ロゼは笑っている。その表情とは反対に腕の力は全然弱くならない。


「私たちの雰囲気に気づいて慌てだしたんじゃないですか? 私がスライムでも逃げたくなりますもん」


 その通り! 

 嫌だよ、食べられてたまるか。

 ていうか、僕の気持ちに気づいたんなら助けてくれよ。もじゃもじゃとか言って悪かったから。


「まったくイキのいいスライムだな。これはきっとうまい鍋ができるぞ」


 ロゼは笑って言う。ダメだこりゃ、完全に僕のことを食材としてみてやがる。でかい魚を釣り上げた漁師とかこんな感じなのかな。

 僕はとりわけ、釣り竿にかかってしまった鯛というところか。


「ごめんな、少しだけびりっとするぞ」


 ロゼは暴れている僕にそう囁いた。


麻痺の小槍(パラライズ・ニード)


 何かがチクリと僕の体を刺す。それと同時に体全体に電撃が走る。麻痺がどうとか言っていたな。やばい、体が動かない。完全に捕まってしまった。

 

「さあ、さっそく戻ろうか。今日はごちそうだ」


 ロゼは意気揚々とアレクたちに告げる。


「ちょ、侵入者はいいんですか?」

「来たらまた追い払えばいいだろう。そんなことより俺は早くこの珍味を食べたい」


 僕はロゼに抱きしめられたままアレクたちに本拠地に向かうことになってしまった。

 作戦失敗だ。

お読みくださりありがとうございます!


ナメクジは塩をかけたら死ぬって言うじゃないですか。

じゃあ、スライムは塩かけたらそうなるのでしょう?


ドラクエに出てくるバブルスライムは実は、元のスライムに塩をかけてしまった姿だった……なんてことはないですよね(笑)


感想・評価・レビューなどいただけますと、励みになります。

応援よろしくお願いします!



【他にも以下のような作品を連載しております】


・【1日数分で読める】モンスター合体の館でに見聞録

「合体やしきの不可思議な日常」


・個人的な短編集(不定期更新)

「おさむ文庫の気まぐれ短編集」


あとがき下からのリンクから飛んでいただけると幸いです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼こちらの作品も一緒によろしくお願いします▼

気軽に読める、モンスターの「合体の館」での不思議な日常の話
「合体やしきの不可思議な日常」

雑多な短編集(不定期更新)
「おさむ文庫の気まぐれ短編集」
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ