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3-6 女騎士は変態だって相場が決まってるんだよ

台詞を1段ずつ感覚を開けてみました。

まとまっている場合よりも読みやすくなったでしょうか?


ご意見いただけると幸いです!

 ワイバーンに乗った女騎士は月光に照らされながら、その姿を現した。

 黒髪のおかっぱに、黒と白で構成された鎧。戦いのために無駄なものを取り払った身のこなしだ。

 彼女は笑みを浮かべながら、山でおびえるドラゴンのことをしっかりと目でとらえていた。


「あ、あいつが?」


「ロゼ。王様直属の部隊に属する騎士だよ」


「騎士というよりかは、あなたにとっては死神かもですね」


 リリカは不憫そうにドラゴンに目をやる。


「やばいじゃないかよ!」


 ドラゴンはあわてて、めいっぱいの力でブレスを吐いた。

 炎はまっすぐロゼたちを狙って放たれる。

 空からハンターたちの悲鳴が聞こえてくる。


鉄骨の楯(ギガント・シールド)


 ロゼは楯を構えて炎に備える。

 楯からは巨大なシールドが展開され、ロゼだけでなく後ろのハンターたちにも炎が及ぶことはなかった。

 ブレスは、ドラゴンの体力が切れているからか、長くは続かなかった。それでも、ロゼのシールドはだいぶ消耗したようだ。


 炎を防ぎ切ったロゼはドラゴンをグッとにらみつける。

 その視線に気づいたドラゴンが縮み上がる。


「やばいなありゃ」


「やばいですね」


「ああ、完全にモード入ってる」


「モードってなに?!」


 急に達観し出す2人にさすがにドラゴンもツッコむ。


「戦闘モードだよ」


「彼女、最初は攻撃受けて敵の力を見定めちゃう癖があるんですよ」


「なにそれ!」


 リリカは天空にいるロゼを指さす。

 ロゼはドラゴンの炎を食らっても苦しい表情一つ浮かべていなかった。


「彼女は己より強いものと戦うことだけを求めている戦闘狂です」


「なにそれ?! なにその命がけの性癖。変態すぎるでしょ」


「女騎士は変態だって相場が決まってるんだよ」


「なんの相場?!」


 アレクはポンとドラゴンの体をたたく。

 同情からか、そのうろこをさすってまであげている。


「まあ、そんなわけで、君は合格したってこと。おめでとう。存分に戦ってくれよ」


「やめてくれええ!」


 ドラゴンはごちゃ混ぜになった感情で乱れ切ってしまっていた。

 そうこうしている間に、ロゼがワイバーンと共に急降下を始めた。他のハンターたちも一緒に下りてくる。

 ロゼはただ一直線にドラゴンめがけて迫りくる。


「くるなああ!」


 ドラゴンは野太く、情けない声をあげながら、アレクのもとに隠れようとする。

 しかし、その体はアレクなんかでは隠すことなどできない。


「おい、勝手に人を楯にするんじゃねえよ」


「君最強の勇者なんだろ、それだったら攻撃食らっても平気でしょ」


「ふざけるな!」


 ドラゴンに近づくロゼ。

 彼女はアレクが楯になっているのを確認すると、ワイバーンを飛び降りて身をひるがえした。

 ワイバーンはそのまま器用に宙を舞いアレクとの衝突を避ける。

 一方のロゼは華麗に宙を舞いながら、ドラゴンの真上に位置取った。


麻痺の突槍(パラライズ・ランス)


 ロゼは新しい槍を生み出す。彼女の攻撃はMPから槍や楯を状況に合わせて生み出すものだった。


 ロゼの攻撃がドラゴンに突き刺さる。

 衝撃はうろこによって緩和されるが、それでもドラゴンの体に相当なダメ―ジを与えた。

 低いうめき声が聞こえる。その体は短く痙攣している。


「動こうとしても無駄だぞ。その麻痺はしばらく取れることはない」


 ロゼは地上に降り立つと、冷淡にドラゴンに歩み寄る。

 そして、ついにアレクと目が合った。


「久しぶりだな、アレク。こんな風に再開するとは思わなかったぞ」


「相変わらずの強さだな」


「まあな」


 ロゼは涼しい笑みを浮かべる。

 散々動いた後だというのに、彼女の顔には疲れは全く現れていない。

 ロゼは一緒にいるリリカも見つけた。


「おや、リリカ。こんなところにいたのか。城中でお前がいなくなったと言って心配していたぞ」


「いろいろあってね」


「まあお前のことだからどうせ死んでいないのだろうとは思っていた」


 2人は小さく笑い合う。

 単なる友達というよりかは、戦友としての確かめ合いといった方が正しいだろう。


「まさかお前まで顔を出すとは思わなかったよ」


 アレクが口をはさむ。


「ドラゴンが突然現れたと聞いてな。駆けつけてみたのだが、まさかお前の結界の中だったとはな。私も騎士として駆けつけなければならなくて、大変だよ」


「……本音は?」


「すっごく気持ちいい」


 ロゼは迷いなく答えた。

 涼しげを保っていた表情が一気に砕ける。その声色も一段高まった。


「やっぱりな」


「当たり前だろ! こんな巨大なドラゴン、絶対に強いに決まっているではないか。ああ、さっきの炎もっと浴びせてくれないかな。こやつの炎と、わたしの最強の楯、いったいどちらが強いのだろう」


 ロゼの妄想は止まる様子はない。

 彼女は猛者との戦いの妄想に取りつかれた変態だ。


「それでアレク、どうしてこのドラゴンと一緒に居るんだ」


 ロゼはふと正気に戻って訊ねる。痛い質問だ。


「まさかかばってるんじゃないよな?」


「そんなの俺が聞きてえよ。」



「ロゼ様。さっさとこのドラゴン殺しちゃいましょうよ」


 ドラゴンの死体が待ちきれないハンターたちがヤジを飛ばす。

 ハンターたちは珍しそうに山の中を物色し始めていた。


「ここ勇者の結界の中らしいぜ」


「マジ? そんな珍しいところに入れるとかドラゴン様様だな」


「どうせなら何か持って帰ろうぜ。『勇者の○○』で売ったら高く売れるぞ」


 ハンターたち、というよりほとんど不良のような輩が、アレクの山を踏み荒らす。

 これにはアレクも気を良くしなかった。


「おいお前ら。ここは俺の土地だ。悪いがさっさと出て行ってくれないか」


「あ?」


 ハンターたちが不機嫌な顔を浮かべる。


「こんな財宝を目の前にしちゃ、勇者のいうことでも聞けねえな」


「そもそも、もう勇者でもないだろ」


「そうだな。ただの引きこもりだもんな」


「もう体にぶって、俺らの方が強いんじゃねえのか?」


「戦ってみる? 勝ったら俺、リリカ様貰ってもいいかな?」


 ハンターたちは野蛮な笑みを浮かべている。

 リリカの体が震える。その目には怒りがこみ上げる。

 その刹那、ハンターたちの間に槍が勢いよく横切った。

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